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桜と絵本と豆乳と

花森が言い続けたこと

2016年07月17日 | 読書
 『「暮しの手帖」初代編集長 花森安治』(「暮しの手帖」別冊)


 5月に文庫『花森安治伝』を読んだばかりだが、興味が続いていたので書店で求めた。朝ドラでモデル役が登場したこともある。外見は似ていないが唐沢寿明は適役ではないか。几帳面、頑固、偏屈さをうまく表現できる役者だ。いや、それにしてもこの別冊で取り上げられた本物は迫力がある。本当に興味深い人物だ。


 この本自体も、本当に編集がしゃれている。こうした装丁の雑誌は今は珍しくないが、やはり先駆けは「暮しの手帖」なのだ。戦後の「衣食住」に与えた直接的、間接的影響はかなり大きいと予想される。ファッションを追っているように見えて、実は流行にとらわれない本質を常に考えていることが随所でわかった。



 昨日書いたSEALZsのことと絡ませれば、実に面白い記述があった。花森自身が「民主主義」について、ダイレクトに記している文章が紹介されている。

 民主々義の<民>は 庶民の民だ
 ぼくらの暮しを なによりも第一にする ということだ
 ぼくらの暮しと 企業の利益とが ぶつかったら 企業を倒す ということだ
 ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつかったら 政府を倒す ということだ
 それが ほんとうの <民主々義>だ



 似たような言葉がドラマでも使われていたが、花森の編集者としての原点がそこにある。

 「ぼくらに守るに足る幸せな暮らしがあれば、戦争は二度と起こらないはずだ」

 この言葉をどうとらえるか。
 「守るに足る幸せな暮らし」の響きをどう受け止めるか、である。
 それは小市民的な自己満足の姿を指しているわけではない。

 何か適切な言葉で代替できないかと、改めて読み直してみる。

 「だまされない」

 これが一番ふさわしい気がした。

 衣食住などの身のまわりのことから地域社会、国の政治といった広い範囲にわたる全ての点において、「だまされない」ことが肝心だと、彼は言い続けている。