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一年が速いと感ずるのなら

2017年04月28日 | 読書
 かつて大勢の参加者がいる開会行事で、「一年去って、また一年」と切りだした会長さんがいた。残念ながら笑いは出なかった。おそらくは「一難去ってまた一難」と掛けたと思われるが、気づいたら苦笑というジャンル?の駄洒落だろう。しかしまあ「一年去って」という心持ちは、齢を重ねる度に実感が強くなる。


2017読了43
 『一年は、なぜ年々速くなるのか』(竹内 薫  青春出版社)


 魅力的なテーマである。かつて『ゾウの時間ネズミの時間』というベストセラーの新書を読んだことがある(わっ!検索したら、あの3.11の日にアップしていた)。動物による時間感覚の違い、寿命などについて斬新な見方を示した一冊だった。この新書も、それを踏まえつつ幅広く様々な考え方を提示してくれた。


 五つの仮説が列挙される。「一年の体感時間は年齢に反比例する」という心理学者ダプソンの仮説に始まり、「加齢による効率低下率」「ルーティン仮説」さらに著者の交流や研究から「鈴木光司仮説」「小泉英明仮説」を設定している。いずれをとっても「速い」と感ずる個の時間感覚を変化させるヒントはつかめるはずだ。



 書名となる問いに対応する決定的な答えはないが、著者はこんなふうに結んでいる。

 周囲との比較と自分の内部が原因の二つの時間の経ち方がある。そして、二つとも、あなたの工夫次第で、時間は速くもなり、遅くもなる。



 仕事や家事の時間に追われているなら、自ら管理するという工夫を入れることだ。ルーティンワークにさえ、その余地は必ずある。具体的には、著者の妻が言う「自分が満足できる何か」を徹底に行う手法?が興味深い。他の評価などを気にしなくとも、概ね役立っているはずというアバウトさが自己管理のこつだ。


 それにしても、この新書は面白い知見にあふれている。「ほとんどの生きものは、心臓が二十億回鼓動するとその一生を終える」「ヒトの意識は3秒ごとにリフレッシュされる」「左脳は時計係で右脳は『今』にしか関心がない」…科学頭ではない自分も、こんな刺激を受けると好奇の芽が顔を出し、時間を堪能できそうだ。