すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

どうでもいいことを真剣に書く

2017年04月03日 | 読書
 集中力がない、持続力がない、瞬発力もない、さらにまた協調性もない、当然ながら計画性もない…と他者から指摘されれば、「うっ、うん」と頷かざるを得ない。そう自覚しつつ振り返れば、なんとこのブログももうすぐ丸12年が経過しようしている。「どうでもいいことのさなかに生きる」証しのようにも見える。


2017読了33
 『アップルの人』(宮沢章夫 新潮文庫)


 この本は、10年ほど前のMAC関連の雑誌連載を中心にまとめられている「基本的にはコンピュータとそれを取り巻く文化について書かれたエッセイ集」だ。しかし、中身は著者が何度も書いているように、本当にどうでもいいようなことに溢れている。「ばかばかしい」しかし「文化についての多面的な考察」でもある。


 読み終えてみると、今まで読んだエッセイ集以上に、何か「刹那を生きる」ような感覚を受けてしまう。今、目の前にある対象(具体物や言語やふいに想起した出来事)について、どこまでも本質をえぐろうとするような…。実際にはただ妄想しているだけ、という言い方もできるのだが、そのシュールさが全力だ。



 著者は、今は閉じているようだが当時ブログを続けていた。原稿料にならない日記を何故書くのかと問われ、答えたその喩えに納得した。曰く「素振り」と「公開スパーリング」。力を入れている訳をこう書いている。「一振りに魂を注ぐのがプロの素振りだし、ボクサーの公開スパーリングだって真剣そのものだ


 裏表紙には「超脱力エッセイ」と評されているが、著者は、プロの書き手としてはいつも真剣だと答えているのである。ある章に「尾崎放哉」の自由律の俳句を引用している。形はひどく違うが、もしかしたらかなり近い世界観があるかもしれないと感じた。つまり、「人はどうでもいいことのさなかに生きている