すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

明るいシナリオはト書きが重要

2017年04月25日 | 読書
 ずっと気になっていた新書だった。ずいぶんと話題になってテレビ等でも特集が組まれたりしたので、少し間を置いて読んでみようと決めていた。刊行から4年、認知度はまだまだと思うが、書名かつキーワードである「里山資本主義」の波は確かに起こっているだろう。「六次産業化」や「過疎の強み」とも結びつく。


2017読了42
 『里山資本主義 ~日本経済は「安心の原理」で動く』
 (藻谷浩介・NHK広島取材班  角川ONEテーマ21)



 端的には、エネルギーと食料の「サブシステム」の構築、「金銭換算できない価値」の拡大という2点が中核になると思う。前者には批判・反論もあるが、後者については誰しも考えが及ぶ。著者が描く未来つまり「明るい高齢化社会」の実現をするには、やはりその点を抜きにできない。それは生き方そのものを問う。



 この著では、それほど過激に生活転換を促しているわけではない。しかし、それゆえ消費者として飼いならされてきた現実に気づくことも多い。従って、消費の仕方を変えることこそが、ある意味では大きな力になり得る。例えば若者たちの消費動向として挙げられている「ニューノーマル消費」などは納得できた。


 「自分のための消費」ではなく「つながり消費」へ。新しいものを手に入れる「所有価値」から今あるものを使う「使用価値」へ。こうした変化が顕著になれば「持続可能な社会」へ確実に結びつくだろう。数々の不安要素を転化し明るい未来をつくるシナリオは、セリフでなくト書きが重要になることを自覚したい。