すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

おらおらでひとり読むお

2018年04月11日 | 読書
 不安定な空模様。そんな中でも「強敵」スギ花粉は飛ぶ。
 用事以外は少し外出を控え、読み浸ることに。


2018読了37
 『働く男』(星野源  文春文庫)


 マルチプレーヤーとでも言うのだろうか。それにしてはオーラを感じさせないのはどういう訳だ。気取りが微塵もないからか。それはそれで凄い。
 「俺を支える55の○○」というページでは、大好きだったり、影響を受けたりしたヒト、モノなどを挙げている。自分にも当てはまるのを数えたら8つあった。つまり15%くらいのシンパシー。なかなかいい線だ。

 それにしても10年ほど前、文芸誌に載せたという短編「急須」は上手だったなあ。人を見る目の優しさ、行動の裏に潜む感情の読みとりなど、小説を書き出してまだ間もない頃だったろうし、ちょっと恐れ入る才能だ。


2018読了38
 『たいまつ 遺稿集』(むのたけじ (株)金曜日)


 亡くなった一昨年の前半に書かれた文章である。その年6月に横手で講演することを知り申し込んでいたのだが、結局体調を崩し来県できず、とても残念に思った。
 まさに「生命の灯」を最後まで絶やさず、正義や反戦を訴えている。特に若い世代に対する期待が多いことに、願いの強さを見る。

 面白いエピソードがあった。昔「たいまつ」の出版記念会を、地元横手の「保守の親分」たちが催してくれた。何故?と訊くと「たいまつは、おらだちの敵だ。だからつぶすわけにいかぬ」と誰も同じ言葉を発したのだという。
 「今は昔」の懐の深さに感じ入った。


2018読了39
 『おらおらでひとりいぐも』(若竹千佐子  文藝春秋)


 出だしから、なんというか心をわしづかみされるような感じを受けた。芥川賞作品は敬遠しがちだったが、この書名を見て心動かされ、斎藤美奈子の書評を読み、即注文した。
 岩手出身の2歳年上の女性が書いたこの物語は、斎藤評するところのまさに「玄冬小説」。
 読み手である自分も、いわば「白秋」終盤に差し掛かった年代、しかも同じ東北出身者には、びしびしと響いている文章だった。

 方言を使った語り口ゆえにより強く共感できた、心底をゆさぶるような数々の独白に、引きずり込まれたような読後感を持った。