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そのチームワークでいいのか

2018年04月12日 | 読書
2018読了40
 『個人を幸福にしない日本の組織』(太田肇  新潮新書)


 まえがき冒頭の一文は「日本の強みはチームワークである」。そうだと頷くか、いやと否定するか。アンケートをとったらどう決着するだろう。肯定派が多い気がする。この新書は、書名や第一章「組織はバラバラなくらいがよい」が示すように、ある意味でそのチームワークを否定し、問題点を挙げている書である。


 10年くらい前だったろうか、ずいぶん「チーム」という語が叫ばれた時期があった。医療ドラマあたりが走りではないかという気がする。また日本のチームワークがスポーツの場でもてはやされることは常時ある。例えばリオ五輪の陸上400MR、最近では平昌五輪のアイススケートパシュート競技の活躍もそうだろう。


 しかし、それらはかなり限定された場面ではないか。他の競技スポーツの例は持ち出すまでもない。決められたことに最大限の工夫をし、複数で同様に突き詰めるタイプは得意だが、その範囲に留まる。この国の独自性、強みと認めつつ、もはやそれに固執していては取り残される。限界にきていることは承知済みだ。


 旧態依然としたチームワークを要求する「組織」のが、毎日のように報道されている。本書では役所や大企業の不祥事を、性質により分類する。「粗暴型」「たるみ型」「私益追求型」「未熟型」「組織エゴ型」「ゴマすり型」…今、目立つのは後半2つ、これらはいわば「管理強化」が逆効果を生みやすい型と指摘する。


 組織論理の肥大化や上意下達思考からいかに脱出するか、その秘策が多く語られた一冊だ。「厳選された人材は伸びない」「入試選抜に抽選を取り入れる」「個性あるまちづくりが、住民の個性を奪う」…一見奇抜に見える言辞も、少し考えれば突飛な発想とは思えない。健全な個人主義が組織や社会を支える仕組みが必要だ。