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自己決定権の尊重のために

2020年02月06日 | 読書
 この新書は幸福論の類ではないが、一つ新たな知見を得た。ある研究結果によると、人生の幸福度を決めるのは「自己決定権があるかどうか」であると導かれたというのだ。なるほどと感じる。仕事上はもちろん、それ以上に生き方や暮らしそのものと結びつく。そのために「世界」を知ることの意味がじわりと効く。


 【世界のニュースを日本人は何も知らない】(谷本真由美  ワニブックスPLUS新書)


 日本人の閉鎖性についてはよく話題にされ、大方の人はそれを認めるが、ではそこを打破しようと向き合うかというと、自分も含めてきわめて意識が薄い。これはやはり危機的状況に晒されていない点が大きく影響している。今のように安穏として居られないと、ぼんやり思いつつ「ぬるま湯のゆでガエル」のままだ。


 テレビ、新聞に加えインターネットで何でも情報が入る世の中にあって、著者は、表題が示す事実をこの新書の中で次々に披露する。私達の多くが知らないだろう「世界の『政治』『常識』『社会状況』『最新情報』『教養』『国民性』『重大ニュース』」について最新情報を与え、旧来的なイメージからの脱皮を促している。


 例えば「移民問題」に関して日本国民がピンとこない状況は、誰しも自己分析できる。そして今の社会の動きからみて、将来的に避けきれないこともわかっている。ただ、「避けたい」意識が根にしつこく残っていて、それが、メディアの近視眼的に流す情報だけに満足し、「決定」を誘導させられる原因になっている。


 地方を活性化させるには「ヨソモノ・ワカモノ・バカモノ」という発想がよく語られる。これとオーバーラップしたのは、発達心理学で、「創造的」な人は、「移民・同性愛者等・病弱」のどれかに当てはまる傾向があるという研究だ。そういう「多様性」への接し方について、我々の意識はまだまだついていけない。


 しかし幼い世代に対して責任ある立場として、後押ししたい性質、能力はしっかり意識し、公言していくべきだろう。この著に即していえば「非認知能力(共感力や感性)」や「自分にとって有益な情報を取捨選択できる」がある。それらが、最終的に自己決定権が尊重される社会づくりにつながることを考えさせられた。