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今さら『カルテット』の魅力

2020年02月07日 | 雑記帳
 去年、地域おこし協力隊の若い女性と話した時、「ここへ来て一番驚いたことは?」と尋ねたら「TBSが放送されないこと」という返答。ドラマ好きを自認する者としては大きく頷いた。一週遅れ放送バージョンもあるが曜日によっては全然観られないものがある。名作との評価が高い『カルテット』もそうだった。


 DVDレンタルはふだんしないので再放送でもないかと思っていたら、正月にBSでまとめて放送していた。最初だけ見損ねたがその録画をようやく全編観終わった。評判通りだと思った。さすが坂元裕二脚本。昨年はなかったが、ここ10年ほど1作ペースで放送されるドラマは外れがない。いつも見入ってしまう。


 この『カルテット』も主役四人の個性が見事にはまっていた。改めてWikiで制作の発端を知ってなるほどと思う。プロデュースのきっかけが坂元裕二×松たか子であり、そこからストーリーや他の三名が決まっていったようだ。「目の表情が豊か」という点が配役の決め手だったことも頷ける。四人の対照性が際立つ。


 さらに小技の効く演出。吉岡理帆の悪女のハマり方。主人公の夫役の宮藤官九郎は平坦さで魅せた。父役高橋源一郎、母役坂本美雨などはほんの少しの顔見せだけ。さらに安藤サクラは声だけという贅沢さ。さて、それはともかく一番の魅力は何かと自問する。「弱さ」は描くけれど「醜さ」はない、ということかな。


 この頃の坂元脚本の特徴かもしれない。人間の描き方として、弱さを頻繁に出すし、どうしようもない人物も登場させるが、醜いレベルまでは突き放さない。思い直したり、踏み止まったりする姿が強調されるからだ。このドラマも最後は、ベタだけれど、思いを伝える大切さや信じることの強さで幕が引かれていた。