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桜と絵本と豆乳と

旅人たちの行方は今

2020年02月15日 | 読書
 「過疎」から「へき地」というずいぶん馴染みの深い語が頭に浮かんだ。それは38年間の教職生活で半分以上(数えたら23年間だった)も、「へき地校」に勤務したから当然だ。今は統合も進み、またそれ以上にへき地指定解除も進んだから、校数自体は少ない。しかし昭和50年代には町内の約半分はそうだった。


 当時は県内も数多くへき地校があり、「へき地通信」なる印刷物が毎月か季刊で送られてきていた。若い教員が原稿を書く欄があり、2年目の5年生担任の時にお鉢が回ってきた。その時に「ブラウンさんの旅」と題し教科書に載っていた『三人の旅人たち』という物語文を材料にして雑感を書き散らした記憶があった。

 レファレンス協同データベース

 あらすじは覚えているが、妙に気になりいろいろ検索してみた。今は上記のようなデータベースがあり便利だ。『しずくの首飾り』という本は、地元図書館にはなかったし、岩波少年文庫の体裁も気になり注文してみた。8篇あるが、いわばファンタジー集と言ってよく、「三人の旅人たち」は若干毛色が違うイメージだ。

 【しずくの首飾り】(ジェーン・エイキン作 猪熊洋子訳)

 あっ懐かしいと感じたのは文章だけでなく、挿絵だった。教科書にもそのまま載っていたはずだ。訳者のあとがきに「ヤン・ビアンコフスキーの美しい装飾的な挿絵」とある。このシルエットの印象ははっきり頭の中に残っていた。こんなふうに再会できるとは、改めて「本」の素晴らしさに感謝したい気持ちになる。



 さて、あの時「ブラウンさんの旅」に書きつけたのは、「へき地」に住む子も身近な場所に喜びを見つけるブラウンさんに共感してほしいという願いと、現実的に可能かという若干の疑問だったように思い出す。この構図はなかなか揺らがない。ただ価値観の相違と突き放す時代ではない。旅の行方は未来の姿となる。