すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

ふたつのせかいで生きていく

2020年02月11日 | 読書
 ヨシタケシンスケの新刊が出た。

 B6サイズの小さい版。発刊する「赤ちゃんとママ社」は初めて聞いた。
 この題名だし、いつものように小さい子向けの…と思ったら…

【もしものせかい】(ヨシタケシンスケ  赤ちゃんとママ社)


 この絵本は、私にはヨシタケの総決算的な作品のように思えた。

 妄想を、「もしも」を、ずっと描いてきたわけを、ここで語っているように読んだ。


 もしも
 あれが うまくいってたら

 もしも
 あちらを えらんでいたら

 もしも
 あのひとが そばにいたら

 もしもーー


 と、誰しもが折あるごとに何度となく浮かべる思いから始まる。

 そして、「もしものせかい」へと誘われるわけだが、今までのように具体物がいろいろと変化するパターンではなく、「もしものせかい」と「いつものせかい」の違いが語られ、考え方が示されているようだ。


 どんなものでも どんなことでも
 どんなひとでも どんなきもちも
 きえて なくなったりしない

 いつものせかいから
 もしものせかいに

 あるばしょが、いるばしょが
 かわるだけなんだ




 単なる妄想とは違う、人間観や価値観が表現されている。

 自分の目の前から、具体的なモノが消えてなくなったとしても
 頭の中に浮かべられれば、その存在はずっとあり得るのだ。
 喜びも悲しみも、愛しさも憎しみも含まれるのだろう。
 こんなふうに記される。

 もうひとつのみらいとして
 いつまでも きみといっしょにいる


 「いつものせかい」「もしものせかい」
 二つを抱え、そしてどちらにも抱えられながら、ずっと生きていく。