京都に移り住んでから、日常会話の中で違和感を覚えることの一つに『さん付け』がある。
清水寺を『きよみずさん』、油揚げを『おあげさん』、芋を『おいもさん』のたぐい。
新潟県人の話す言葉は野暮ったくて喧嘩腰のように聞こえることがあるらしい。
それでも、良寛和尚を大抵の新潟県人は親しみを込めて『良寛さん』と言う。
このたびのドライブでは、とりあえず柏崎に向かい、海岸まで行ったなら北上するということにしたので柏崎からは初めての道。
原発を過ぎてから、ときどき素朴な海水浴場らしき砂浜があったけれど、シーズンではないので侘しい景色。
黒子のようなウェットスーツのサーファーが海の中にいたりもしたけれど、唇を紫色にしてでも遊びたいかと身震いする。
サーフィンで思い出すのが、業者仲間の若者にサーフィン好きがいて、静岡まで行き、海で雷に撃たれたこと。
荒れた海は最適な波だったのだろうけれど、海上では人に雷が落ちて死ぬのかと、衝撃の事故だった。
話が横道に逸れたが、海岸沿いの道はすぐに出雲崎に着き、看板に誘導されるまま良寛記念館へと向かう。
雨は上がっていたが陰鬱な空模様は、さすが裏日本という雰囲気で佐渡ヶ島も見えない。
記念館はモダンな平屋で、広間一つだけのさっぱりした空間だった。
書に疎い者にとっては、値打ちも良さも面白さも分からないが、良寛さんの、ほぼ等身大木彫像を観て懐かしさを感じた。
アニメの宮崎駿も影響を受けた人のようで、『風立ちぬ』の作品に良寛さんの書いた【天上大風】が出てくるそうだ。
ポスターには「東京大学の正門前に『天上大風』の碑文があります。これは太平洋戦争時の学徒出陣で亡くなった学生の悲劇を再び起こさず『平和な風を吹かせます』と願い、ご遺族や僚友たちの手で建立されました。ご遺族、僚友たちは『平和の願い』として、良寛が子どもたちの幸せを願って子どもに与えた『天上大風』を選んだのでした。 『天上大風』は宮崎駿監督『風立ちぬ』にも登場します。この映画の主人公は戦闘機ゼロ戦を設計した堀越二郎です。…」とあった。
この記事を②とすべきなのに、後先になった。