和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

それは海に向けて。

2012-10-26 | 短文紹介
兄の家から、
読売の古新聞をもらってくる。
そこに、10月14日の新聞がありました。ありました。
編集委員・尾崎真理子氏による、丸谷才一の評伝が載ってました。
評伝の最後のしめくくりは、

「昨秋の文化勲章受章と同時期に出た小説『持ち重りする薔薇の花』は出足が鈍く、『決して弛緩してないと思うけどね・・・』と弱気を見せた。それでも今年2月初旬、心臓のカテーテル手術後に見舞うと、『君、この学者は有望だよ』と新刊書を薦められた。すっかり身は細っていたが、枕元には本、本、本・・・・。
『表現の自由』『読書の歓び』。そんな言葉を聞く度に、病室の光景を思い出すことになるだろう。」

ちなみに、評伝の最初に今年の8月のことが書かれております。

「・・最後の誕生会は今年8月末、東京都港区のレストランで開かれた。主賓は87歳を迎えた丸谷さんだが『長年、お世話になったから』と、約30人の編集者や新聞記者を招待し、上等なフランス料理と赤ワインを振る舞った。席上、『できるならばあと数年、小説を書き続けたい。それは海に向けて私信入りの瓶を流すように、届く保証のないものですが』。最後まであいさつの名人だった。・・・」

うん。どうやら、これが最後のあいさつだったのでしょうね。
コメント
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