本棚から、向井敏著「本のなかの本」(毎日新聞社・1986年)をとりだす。
本の紹介本なのですが、見開き2頁に一冊の本を紹介して全150冊。
うん。このうち私が読んだのは、10冊もないのじゃないかなあ。
けれども、本の紹介本を読むのは、私の楽しみ。
そうして、その楽しみを満足させてくれる一冊。
え~と。はじまりは星新一著「明治の人物誌」からで
6冊目に、桂米朝著「落語と私」が登場しておりました。
ここには、その「落語と私」をどう取り上げているのか、
はじまりを紹介。
「体裁はジュニア向きでも内容はきわめて高く、
眼の肥えた大人にこそ読んでほしい本がある。
・・茨木のり子『詩とこころを読む』もそうだったが、
今一つ逸することのできないのが上方落語の第一人者、
桂米朝の『落語と私』。中学生向けの啓蒙書として書かれ、
文体はやさしく語り口は具体的、気軽に読めるように工夫されているが、
落語という話芸の本質を的確に把握し鮮明に説いた本は
ざらにあるものではない。・・・
落語にはほんとうの悪人はめったに出てこない。
といって、世人の鑑となるほどの大人物も見当たらない。
みんなそのあたりにいそうな人ばかり。
つまり、落語というのは
『大きなことはのぞまない。泣いたり笑ったりしながら、
一日一日がぶじにすぎて、なんとか子や孫が育って
自分はとしよりになって、やがて死ぬ』
と観念した、ごくふつうの世間を描く芸であることを
桂米朝は強調する。・・・」
はい。これで半分引用してしまいました。
うん。これでいいかと、「本のなかの本」を
本棚にもどします。