Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

健全な自我の拡張

2022年04月07日 06時30分03秒 | Weblog
森鴎外全集10 ─即興詩人 森 鴎外 著
 「我心は景色に撲たれて夢みる如くなりぬ。忽ち海の我前に横はるに逢ひぬ。われは始て海を見つるなり、始て地中海を見つるなり。水は天に連りて一色の琉璃をなせり。島嶼の碁布したるは、空に漂ふ雲に似たり。地平線に近きところに、一條の烟立ちのぼれるは、ヱズヰオの山(モンテ、ヱズヰオ)なるべし。沖の方は平なること鏡の如きに、岸邊には青く透きとほりたる波寄せたり。その岩に觸るゝや、鼓の如き音立てゝぞ碎くる。われは覺えず歩を駐めたり。わが滿身の鮮血は蕩け散りて氣となり、この天この水と同化し去らんと欲す。われは小兒の如く啼きて、涙は兩頬に垂れたり。」(p232)

 生まれて初めて海を見たアントニオの衝撃を描いた名文で、何度読んでも涙が出そうになる。
 私は原文のデンマーク語(但し、鴎外はデンハルトによるドイツ語訳(レクラム文庫)を参照したとされている。)が読めないのだが、もし読めたら「デンマーク語の名言」として「名言シリーズ」(日本語の名言・英語の名言)に載せたいところである。
 アントニオの反応を「自我の拡張」と呼んでよいものか、それとも「対象リビドー」の発現の一つとみてよいのか、専門家ではないので分からない。
 ただ、確かに言えるのは、アントニオの例は、プーチン大統領などにおける「自我の拡張」(小さな大統領たち(2))とはおよそ対極にあるということである。
 こういう健全な自我の拡張(?)は素晴らしいと思うのである。
コメント
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