「50年以上、世界のピアニストを聴き、探し続けてきた。凄い才能だ!とか、怪物だ!とか思ったことは何度もあったけれど、中瀬智哉は全く違っている。
勝沼酒造の勝沼甲州を初めて飲んだ時の感動が蘇る。「ヤバイ!ああ、参りました。」・・・
凄いのは、それがヨーロッパのスタイルの上にあることなのだ。」
「演奏を聴いた瞬間、彼はあなたの「推し」になる!」
武蔵野文化生涯学習事業団文化事業部のチラシは、いつも個性的である(例えば、【炸裂!】武蔵野文化会館のチラシ(フライヤー)が独特すぎる)。
文字がびっしり書き込まれた、一見すると白黒のなんてことはない紙切れだが、言葉の力が凄まじい。
「クラシック界の大谷翔平登場」という一言だけでチケットを買ってしまう人が続出したのだろう、会場はほぼ満席である(上に引用したくだりは、期せずして「勝沼甲州」の宣伝にもなっている。)。
会社でも、「彼は我が社の『大谷翔平』だ」という噂が出ようものなら、全社員が彼を見に行くのではないだろうか?
開演前、近くの席から、
「ちょうど誰にも知られていないころの藤田真央ちゃんがこんな感じだったの」
というマダムの言葉が耳に入って来た。
なるほど、藤田さんもここが実質デビューの場所だったのだろう。
登場した中瀬さんは、大谷翔平というよりは、まるで皇室の方のような「育ちの良さオーラ」を全身から発しており、笑顔を絶やさず、丁寧な言葉遣い&上品な身のこなしの好青年である。
だが、演奏ぶりは力強く、私見では、「日本で一番気持ちよさそうに弾くピアニスト」:川口成彦さんと並ぶ、「気持ちよさそうに弾くピアニスト」のカテゴリーに入りそうである。
さて、このコンサートのチラシは2月ころ作成されたもので、当然、”例の事件”はまだ発覚していない。
”例の事件”の後では、「〇〇界の『大谷翔平』」という売り言葉は少々使いづらいと思うので、次のリサイタルでどのようなキャッチコピーが使われるのか、注目したい。