「一人暮らしの医師と、愛人の子供を身籠った女性バイオリニストの対話と選択。
交響楽団のバイオリニストである30代の女性ドロタと彼女と同じアパートに住む医長の二人。ドロタは重い病を患って入院している夫アンジェイの余命を至急知りたいと医長を訪ねる。ドロタは愛人との間にできた子を妊娠していた......。」
「デカローグ1」と「デカローグ2」との共通の主題は、「神への直接の言及」、モーセの「十戒」で言うところの「神名濫称禁止違反」であるが、要は人間の「死」は何によって支配されているかという問題である。
「1」は、人間の計算では予測し得なかった事故により人の死がもたらされるというものだが、「2」の展開はこれとは正反対である。
「あなたのご主人は亡くなります。私の神に誓って」
という医師の宣告は外れてしまう。
また、「2」は、同時上演の「4」とも共通の主題を有しており、それは、「妻の姦通による夫の子ではない子の出生」、モーセの「十戒」で言うところの「姦淫禁止違反」である。
「2」では、主人公のヴァイオリニストが妊娠した子を堕胎するかどうか悩むシーンが出て来るが、そうすると、映画では、
「母親の体内で動く胎児」
のシーンが登場すると予測する。
「父と幸せに暮らす娘。ある日、娘は父が自分に宛てた手紙を見つける。
快活で魅力的な演劇学校の生徒アンカは、父ミハウと二人暮らし。母はアンカが生まれた時に亡くなった。父娘は友達同士の様に仲睦まじく生活していたが、ある日アンカは「死後開封のこと」と父の筆跡で書かれた封筒を見つける。その中身を見たアンカがとった行動とは.....。」
「法律上の父と生物学的な父」という「2」と「4」の主題はいかにも弁護士好みであるが、共同執筆者のクシシュトフ・ピュシェヴィチは弁護士である。
序盤の「友達同士のように仲睦ましい父と娘」というところで、既に”何か”が匂う。
ミハウとアンカは、普通の父と子というのではなく、恋人同士のような雰囲気を醸し出しているのである。
「死後開封のこと」と父の筆跡で書かれた封筒の中には、娘を出産後5日目に亡くなった母の遺書が入っていた。
その冒頭には、
「ミハウはあなたの・・・」
と書かれていたが、その後が読めなくなってしまう(ネタバレになるので書けないところである)。
芝居でも出て来るが、映画では、
「大きくクローズアップされた(一部しかない)「遺書」」
が出て来るのは間違いないだろう。