指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
エレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子
クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス
エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー
オレスト(バス):ルネ・パーペ
昨年も演奏会形式の「エレクトラ」を、ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団で鑑賞したのだが(ブラヴォーの復活)、今回の公演はそれ以上に印象深い。
もちろん、エレクトラ役のエレーナ・パンクトラヴァは素晴らしいパフォーマンスなのだが、クリソテミス役のアリソン・オークスのパワー(要するに絶叫の持続力)が凄まじく、彼女に持っていかれた感がある。
このオペラは、エンディングでクリソテミスが「オレスト!」と絶叫するのが一つの大きなポイントでもあるので、タイトル・ロール役と並んでクリソテミス役が重要な役割を担っているのである。
ちなみに、東京・春・音楽祭では、2005年にもこの演目を、今は亡き小澤征爾さんの指揮で、しかも演奏会形式ではなく上演している(オペラ公演 R.シュトラウス:歌劇≪エレクトラ≫)。
当時は「東京・春・音楽祭」ではなく、「東京のオペラの森」という名称で、2005年は「R.シュトラウスとその時代」というのがテーマだった。
この音楽祭はもともと小澤征爾氏が主導的な役割を担っていたようで、それがムーティ―氏やヤノフスキ氏に引き継がれたということのようだ。
ところで、R.シュトラウスは、私見では、「心地よいメロディーを好まない、玄人好みの作曲家」で、ヴェルディやプッチーニとは対極にあると思う。
実際、彼のイタリア・オペラ蔑視は大変なものだったらしく、「ばらの騎士」でも、第1幕では、イタリア人オペラ歌手を、明らかに馬鹿にされる役として登場させている。
私が行った日は平日ということもあって、お客さんの入りは芳しくなかったが、これには、R.シュトラウスが「玄人好み」の作曲家であることも影響しているのではないだろうか?
広瀬大介先生の「オペラ対訳×分析ハンドブック リヒャルト・シュトラウス/楽劇 エレクトラ」は、このオペラの決定版といって良い解説書だが、これを見ても、緻密な構成や目まぐるしい変調などはやはり素人にとって難しいと思う。
とはいえ、この日の終幕後の舞台袖での出演者の盛り上がり方は凄く、私が知る限り、2021年の「世界バレエフェスティバル」最終日での出演者たちの大歓声(これが何回も客席に聴こえてきたのである)に近いものがあった。
出演者は実に楽しそうに歌っていて、相当な充実感を感じていたと思うが、これはおそらく指揮者:セバスティアン・ヴァイグレと歌手たちの強固な信頼関係によるものだろう。
なんだか、彼が、これまで以上に神々しく見えてきた。