Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

4月のポトラッチ・カウント(2)

2024年04月29日 06時30分00秒 | Weblog
 「歌舞伎俳優の片岡愛之助が2日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「四月大歌舞伎」(26日・千秋楽)の昼の部「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」に出演した。

 昼の部のラストは、「夏祭浪花鑑」である。
 毎年5月、歌舞伎座では「團菊祭」が開催されるのだが、今年は4月に「愛菊祭」というか、むしろ「ラブリン祭」とも言うべき愛之助の独壇場が出現した。
 それにしても、この演目は人間関係がややこしい。
 私は、職業柄、人物相関図をつくるのが得意なはずなのだが、それでも完成させるのに5分くらいかかってしまった。

 「泉州浜田の家中 玉島兵太夫の忰磯之丞は、堺の遊女琴浦に溺れて放埒を尽くし、勘当される。兵太夫の恩を受けていた堺の魚売団七九郎兵衛は、琴浦と添わせるべく磯之丞の世話をする。  
 磯之丞の恋敵大鳥佐賀右衛門は、琴浦を手に入れようと奸計し、一寸徳兵衛を味方につける。団七と徳兵衛は達引きとなったが、徳兵衛も玉島家の恩顧を受けたものであることが判明し、団七と徳兵衛は義兄弟の契りを結んで、磯之丞を守ることになり、釣船の三婦の許に磯之丞と琴浦を匿う。  
 徳兵衛の女房お辰は、磯之丞を備中玉島へ送り届けるため、自らの額に焼き鏝を当てて、醜婦となる。  
 団七の舅三河屋義平次は琴浦を奪い、大鳥に渡して金にしようとするが、追付いた団七はさまざまな恥辱にたえ、歎願するも聞入れぬので、思わずも舅を殺してしまう。  
 舅殺しが露見した団七は、一旦玉島に逃れるが、自ら名乗って縄目にかかる。大鳥も旧悪が露顕して磯之丞は帰参が叶う。

 もとは浄瑠璃で、全9冊あったそうだが、今日では序幕、二幕と大詰めの3冊のみが上演される。
 それでも十分ややこしいストーリーではあるが、登場人物は「お世話になった人のために恩返しする」という江戸時代(あるいは日本の歴史全体)の行動原理を忠実に守って動くので、これを押さえてしまえば理解は容易である。
 そうした中で、唯一の例外として、団七(愛之助)が「親殺し」という、当時におけるもっとも重い罪を犯すという点が特色となっている。
 団七は、恩義のある磯之丞のために、彼の愛人である傾城琴浦を、舅の義平次から金で買い取ろうとする。
 団七が、
 「わしの顔が立たぬ。頭を下げて頼む。・・・慈悲じゃ情けじゃ・・・
と懇願するので、義平次はいったんこれを請け負う。
 ところが、実は団七は金を持っていないことが判明したため、激怒した義平次は団七を打ち据え、更に挑発を重ねる。
 これに憤慨した団七は、はずみで義平次の肩を斬ると、義平次は、
 「親殺し!
と叫ぶが、団七は逆に覚悟を決めてとどめを刺す。
 ポトラッチと関連するのは、この「親殺し」の場面と、磯之丞を預かりたいというお辰(愛之助)に、三婦が「あんたには色気がある」と言って断るのに対し、お辰が自らの頬に鉄弓を押し当てて火傷を作り、「美貌を損なう」場面の2つである。
 ということで、「夏祭浪花鑑」のポトラッチ・ポイントは、
① 「親」の威光を笠に着て、団七に執拗かつ非情に金を要求し続け、団七の磯之丞に対する”恩返し”を妨害したことの代償として自身の命を失った義平次→ 5.0ポイント
② 自傷行為によって自身の美貌を損なったお辰 → 1.0ポイント
の計6.0ポイントとなる。
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