「令和4年の新受刑者のうち、精神障害(知的障害を含む。)を有すると診断された者は、2,435名(新受刑者総数の約17%)であり、うち、入所回数が2回以上の者は、66.9%に上っており、診断のない者のその割合(54.5%)と比較すると、再入所者の占める割合が高い状況となっています。本人が自身の精神障害や保健医療・福祉サービスを十分に理解していないなどの理由により、自ら各種支援を拒否する場合も少なくありません。」
「日本の刑務所の場合、受刑者となった者は、まず知能指数のテストを受けなくてはならない。法務省発行の「矯正統計年報」によれば、2012年の数字で例示すると、新受刑者総数2万4780人のうち5214人、全体の21%が知能指数69以下の受刑者ということになる。測定不能者も839人おり、これを加えると、実に全体の約4分の1の受刑者が、知的障害者として認定されるレベルの人たちなのだ・・・
ここで誤解のないように記しておくが、知的障害者がその特質として罪を犯しやすいのかというと、決してそうではない。それどころか、ほとんどの知的障害者は、規則や習慣に従順であり、他人との争いごとを好まないのが彼ら彼女らの特徴だ。
ただ、善悪の判断が定かでないため、たまに社会のルールを逸脱するような行動をとってしまうことがある。そして、その自覚がないだけに、検挙されても自分を守る言葉を口述できない。また、反省の意味も、なかなか理解できない。したがって、司法の場での心証は至って悪く、それが情状酌量に対する逆インセンティブになっているのではないか。その結果、何回も何回も服役生活を繰り返す 」
ただ、善悪の判断が定かでないため、たまに社会のルールを逸脱するような行動をとってしまうことがある。そして、その自覚がないだけに、検挙されても自分を守る言葉を口述できない。また、反省の意味も、なかなか理解できない。したがって、司法の場での心証は至って悪く、それが情状酌量に対する逆インセンティブになっているのではないか。その結果、何回も何回も服役生活を繰り返す 」
弁護士の場合、依頼者との契約は委任であり、基本的に対等な関係であることが前提されているし、”辞任の自由”もあるため、カスハラ的状況が生じそうな場合には、辞任によってこれを回避することが出来る。
裏を返すと、カスハラ的状況が生じるのは、”辞任の自由”が利かない場合、典型的には、国選事件や、何らかの事情で辞任出来ない場合である。
ちなみに、「フロント企業の関連会社の事件を、自分の事務所の勤務弁護士ではなく、あえて「ノキ弁」に配点するボス弁がいる」と聞いたことがある。
こうした事件でも、仕事が少ない若手弁護士だと、断れないケースもあるだろう。
私見では、刑事事件でのトラブルの中には、ハラスメントに近い状況が生じている可能性があると思う。
十年以上前、国選弁護を多く手掛ける先輩弁護士から、「地方の某弁護士会では、弁護士急増に教育体制が追い付かず、国選弁護人に選任されたものの依頼者との間でトラブルになって、メンタルを病んで辞めていく新人が続出している」という話を聞いたことがあった。
要するに、依頼者とのコミュニケーションがうまく行かず、トラブルに発展するケースが続出したらしい。
あくまで推測だが、この背景には、国選事件で比較的多くみられる精神障がい(知的障がいを含む)の問題があるのではないかと思う。
そもそも会話が成り立たないような事案は別として、若手弁護士が対応に悩む問題として多いのは、「頻繁な接見要請」、「過大な要求」といったところではないかと思う。
例えば、午前中、結構な時間をかけて接見したのに、昼過ぎに警察から「先生に接見要請が出ています」という電話がかかってくるケースもある。
しかも、これに即日対応せず、翌日以降接見に行くと、「なんですぐ来なかったんだ!」などと非難されることになる。
これは、依頼者が拘禁ノイローゼに陥っている可能性も考えられるが、精神障がい・知的障がいの一部にみられる「自分に構って欲しい」という欲求、つまり他者への過剰な依存から来る言動と見るべきケースが多い。
なので、これをいちいち真に受けていると身が持たないし、かといって依頼者に冷たく接すると、コミュニケーションが難しくなってしまう。
その結果、弁護士がメンタルを病んでしまうことにもなりかねない。
やはり、依頼者との間では適度の距離を保って、過剰に依存するような状況を誘発しない(なので、「揉み手」のような姿勢は見せない)姿勢が必要なのだが、これがとりわけ社会人経験のない新人弁護士には難しいのだろう。