パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「散り椿」(圧倒的に映像がきれいだった)

2018年10月02日 18時44分54秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

最近、いい映画を見ていない気がしている
ところがテレビのCMを見て行く気になったのが「散り椿」
迫力と緊迫感のある殺陣のシーンが気に入ったのでも
麻生久美子や黒木華がいいなあ、、などと思ったのではなく
(この二人なんとなく好きなんだけど)
そこに映る風景、映像がとてもきれいで情感豊かで
それを見るだけで価値があるに違いないと思った

冒頭の雪の降るシーン
松並木と思しき道、部屋から見える借景画のような庭
城、田舎の川と山、タイトルの散り椿などなど
セリフ以上に雄弁な映像
大きな音の場面がなく、音楽もシンプルにチェロが人の心を描いているかのよう

谷崎潤一郎が陰翳礼讃で取り上げたような昔の日本がそうであったような
光は乏しく仄暗いシーンが全編に渡る
そしてそこに映るひとつひとつの調度、風景の美しいこと

富司純子の役以外の女性が(麻生久美子・黒木華)があまりにも寡黙・従順・忍耐強くて
男の一つの理想かなと思いつつも、正直なところ少しリアリティを欠いた
(最近はドストエフスキーの小説の生命力と意志に溢れたキャラクターの方が好みになっているかも)
でも、最後は隠した思いの丈を叫べばいいのに、、と感情移入するはめになったのだけれど

こうした静かな物語はいい
昔の森田芳光の「それから」も静かな物語だった
衣擦れの音、サイダーのシューという音、奇妙な絶望感に満ちたバスの中の花火のシーン
百合の花の香ががそこかしこに漂うような暗い室内
見ている人の想像力を信用して過度に語らない
少しづつ暗示のような(これみよがしではない)演出

この映画の監督さんは黒澤明の映画のカメラマンを務めた方だそうだ
それで映像が素晴らしいのは納得したが
気になったのはこの映画の撮影場所はどこだったんだろうということ
よくもまあ絶妙なロケ地を探し出してくるもんだ、、とつくづく感心する

ところで、物語は、なかなかいい話だったが予告編の「ただ、愛のためにー」は
男には少しばかり恥ずかしさを覚えてしまうのだけれど、、、

コメント
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