パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

愛知祝祭管弦楽団の「神々の黄昏」

2019年08月19日 08時25分38秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

「時間あたり、ざっと1000円だね」
そんな声が近くで聞こえた
チケット代金が4000円で、演奏時間が下の画像のようだから
だいたいそのくらいの計算になる

昨日は名古屋の芸術劇場コンサートホールで行われた愛知祝祭管弦楽団の「神々の黄昏」
コンサート形式の演奏会
上演に4日もかかる長い長いヴァーグナーのニーベルングの指環の最後の楽劇だ
演奏する愛知祝祭管弦楽団は素人の集まりで、作品は長いし編成も大きいので
じっくり時間かけて年に一つづつ上演してきた
途中、芸術劇場のコンサートホールが修理期間にあたったので「ジークフリート」は
音がデッドな御園座で行われた

4年前のたまたま見た「ラインの黄金」が良かった
コストパフォーマンスが良かったけでなく、演奏もプロにはない熱気があったし
何よりもめったに聞けない音楽を(全曲を)聴けることがありがたかった
タンホイザーやパルジファルは聞けても指環は縁がないモノと思っていたが
本当にいいきっかけとなった

さて昨日の「神々の黄昏」
長いのは承知してた
話がスイスイと進まず過去を説明するダラダラと長い会話があったり、
男と女の言い争いも少しばかりくどくて、うんざりするところもあったが、
音楽に合わせての証明が光の色、その明るさの強弱がとてもその時の雰囲気を表して
それはもう一つのライトモチーフのようだった

昨日の演奏で強く印象に残ったのがブリュンヒルデを歌った人(基村昌代さん)
声が出るだけでなく、性格描写とはそういうことを言うのだろうか、、、と感じさせるような
歌い手と登場人物との一体化されたようで、ブリュンヒルデの怒りや悔しさ、喜び等が
聴いている方に感情移入ができて、最後の自己犠牲のところは圧倒的な必然性をもって聴くことができた
(シークフリートとヴォータンに対するものと)

この歌とか声による性格描写で、不意に思い出したのが劇団四季の「エビータ」のヒロインのこと
「アルゼンチンよ泣かないで」はしっとり歌い上げる曲だが、エビータ自身は上昇志向の強い
いわば気のつようそうな女性、その気の強そうなところは劇団四季のきれいな歌声(声の質)では
感じられなかった、、エビータはもう少し癖のある人のほうがリアリティがあったかな
などとぼんやりと頭に浮かんだ

音楽を聴くということは演奏の比較をしているのか、
それとも作曲家の意図したものを探そうとしているのかと考えることがあるが
何回も聴く曲は自ずと演奏の比較ができるが、めったに聞けない曲はどうしても関心は
作曲家の意図とか考えたことの方に興味が湧く

ヴァーグナーのライトモチーフによる音楽
昨日はその音楽が、まるで「映画音楽」のように思われた
音楽が過度に表に出るのではなく、物語の進行に対して効果的な説明をするような、、、そんな感じだった
会場で手渡されたパンフレットの指揮者の文章の中にも、それを意図していると言うような表現があったが
多いに納得した次第

それにしても、驚くのはヴァーグナーの馬力
全部を上演するのは4日間かかる
それだけでなく彼は中断をはさみ指環の作曲に20年近く時間をかけてきている
それだけで呆れるが、20年かけても統一感のあるようにした仕掛けに驚く

ニーベルングの指環は「ラインの黄金」から始まるが、指環の物語のそもそものきっかけが
アルベリヒがラインの乙女にからかわれ、その仕返しにラインに沈む黄金を持ち去って
指環を作ったことからスタートする
この指輪は愛を断念した者が持つと世界を支配する力を持つとされる
この大事な指環をアルベリヒはヴォータンの策略により失うが、そのときに指環を持ったものは
死に迎えるとの呪いをかける

この最初に登場したアルベリヒが最後の最後になってまた登場する
アルベリヒ本人も登場するが、より重要な人物はアルベリヒの息子としてのハーゲン
結局彼が長い間の仕返しをすることになる
つまりジークフリート(ヴァータンの孫)の殺害というかたちで

ニーベルングの指環は長い
とても長い
長い作品は小説でもそうだが、最後に独自の達成感とかカタルシスがある
神々の黄昏でも今まで聴いてきたライトモチーフがいろいろ散りばめられて
過去を振り返ると同時に、きっかけとなったラインの乙女のライトモチーフも現れる
そして、最後に、、、これで長いお話は、、、おしまい、、と余韻のある終わり方をする

この終わり方、とてもいいのだけれど、より効果的に感じるのは4つの物語を
時間を開けず短い期間で聴くことだろう
ニーベルングの指環の世界にどっぷりと浸って、記憶が自分の内部に蓄積され
それが忘れられない状況で最後を迎える
それが一番の聴き方なんだろうと思う

ところで、先日の中日新聞の広告にMetライブビューイングアンコール上映の広告が載っていた
なんと「ニーベルングの指環」が連続4日間で上映されるようだ
一気に聴いたほうが、、と思いつつ、その馬力は今はないかな、、ということで
ただいま検討中




コメント
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