「白黒をつけむと君をひとり待つ
天つたふ日ぞ楽しからずや」
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の視聴率に貢献した高橋一生演ずる
小野但馬守政次の辞世の句だ
文字通り囲碁だけの話で解釈すると、悪くはないが、なにか平凡だな
と思ったりしたのだが、甘かった
この句には仕掛けがあったとネット上で盛り上がっている
それは辞世の句にある漢字の肝心なところを拾い出しみると「白」「天」「楽」の文字があって
これを適切に並び替えると「白楽天」となる
「白楽天」といえば高校の漢文で習ったことのある「長恨歌」
長恨歌のなかには唐の玄宗皇帝が美貌で最愛の楊貴妃に語ったとされる
有名な言葉がある
「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん」
この意味は「比翼の鳥」は一眼一翼(一説には、雄が左眼左翼で、雌が右眼右翼)の伝説上の鳥で、
地上ではそれぞれに歩くが、空を飛ぶ時はペアになって助け合わなければならない。
このことから、後の人は仲のいい夫婦を「比翼の鳥」に譬えるようになったと言われる。
そして「連理の枝」は、仲睦まじい夫婦が国王の怒りに触れて死を選ぶことになった
意地悪な国王はわざわざ二人を同じお墓には入れず、わざとすぐそばに別々に埋葬した
すると、なんと数日後には二つのお墓から木が生え、枝と葉が抱き合うように絡み合い、
根もつながってからみついた。そして、その木の上ではつがいの鳥が何とも物悲しい声でさえずりあっていた
以上のエピソードを踏まえた句が「天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝とならん」
「おんな城主 直虎」のドラマは直虎・政次がこの白楽天の長恨歌を知っていたか、
知っていなかったかで大きく印象は異なる
知っていなかったら、囲碁の話だけ、しかし、政次は暗示という形で(きっとわかってくれるだろうと)
辞世の句を残し、直虎は即座にその秘密(白楽天・長恨歌・比翼の鳥・連理の枝)を理解した
この様に考えると、(そう考えるべきというのが当然らしいが)この物語はより深くなる
昔の人は「教養」として、歌をうたったり覚えたり習ったりした
その知識のなかで感情の交流をはかる、、
これはなかなかおしゃれで、知的で優雅だ
表に出ている言葉、表現されたものの裏にある深い意味、、
それらを読み取る力
これらは単なる感覚的な知的な遊びにとどまらず、実用的な意味もあったのではないのか
少なくとも、それらを瞬時に理解するしないで、頭の良さと記憶力の良さは推察できる
のんびりした歌の世界が、実は人物試験のような意味合いもあったかもしれないし
そう考えたほうが、面白い(今で言えばリベラルアーツの知識を要求されているということに似てる)
何かを知ることというのは、なかなか面白い
そう言えば、話は思いっきり変わるが「いろは歌」もいろんなメッセージが込められているという噂がある
それは
いろはにほへと
ちりぬるをわか
よたれそつねな
らむういのおく
やまけふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
7文字ごとに区切った最後の文字をひろうと
「とかなくてしす」=「咎なくて死す」(罪なくて死す)
これは割合有名な話で、ミステリーの「猿丸幻視行」(井沢元彦)にも扱われていた
何かを秘密のうちに隠して分かる人にだけ伝える、、、
個人的にはとても興味深いが、政治の世界で一般人に向けてこれをやられては、、、困る