北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第一一回):PC-21ターボプロップ高等練習機

2015-07-21 23:11:04 | 防衛・安全保障
■ターボプロップ高等練習機
 航空自衛隊のT-4練習機後継機として、ターボプロップ高等練習機という、一つ従来の概念とは異なる機種を。

 航空自衛隊はT-7初等練習機を固定翼機要因は勿論回転翼練習機要員の初等練習用として運用しています、非常に使い易い練習機で、もちろん低速ですので基本的な操縦と操縦適性の選抜等に用いていて、この練習機での基本操縦練習や限定的な計器飛行訓練を終えたうえで、ジェット機であるT-4練習機へ臨みます。

 ターボプロップ練習機は、初等練習機という印象が強いのですが、しかし世界にはターボプロップ高等練習機という、ターボプロップ練習機に強力な出力を発揮できるエンジンを搭載し、ジェット練習機が対応する高速度領域の練習飛行や機動飛行等の訓練に対応する機種が誕生しています。具体的にはスイスのピラタスPC-21練習機、ブラジルのエンブラエルEMB314練習機など。

 メーカーは一応、初等練習機から高等練習機までの一連の訓練への対応が可能、としていますが、いきなりPC-21やEMB-314に候補生を搭乗させ練習飛行を行うには、速度などが置きすぎますので、T-7練習機に当たる初等練習機、ピタラスであればPC-9などの初等練習機を経て操縦訓練に臨む航空機です。

 これまでにイタリア製M-346練習機や米韓共同開発T-50練習機を提示した際、中等練習機としてはやや過剰な性能と云い得る部分がある点を示しましたが、例えば中等練習機にPC-21を充当し、これによりT-7からの中等練習機としての能力を練成した上で、M-346や高度な練習機へ進む、という選択肢は考えられるかもしれません。

 PC-21は、ターボプロップ練習機としては高出力のエンジンを採用している事から初等練習機の各機種と比較すれば、機体取得費用は勿論、訓練費用や維持費用等も非常に大きくなっているとの事ですが、メーカーの首長としてはジェット練習機と比較した場合、その費用は抑えられているとのこと。

 ただ、PC-21はメーカーの論理として高等練習機としての能力を発揮可能で、例えばPC-21での訓練を完了しますとジェット練習機を経験せずとも第一線航空機の運用に対応できるとしているのですが、開発国であるスイスの空軍はPC-21に加えてジェット練習機であるホーク練習機を運用しています。

 この提案は、別の高等練習機という機種を必要とするものですが、PC-21はジェット練習機により初等練習機に続く練習機をジェット化した場合よりは運用費用を低減することが出来、高度な性能を有する練習機を少数導入し、一種のハイローミックス的な運用を行う可能性を示唆しているといえましょう。 

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第二二回):方面ミサイル団を創設し、方面特科と方面高射特科を統合

2015-07-20 22:31:23 | 防衛・安全保障
■方面ミサイル団案
方面ミサイル団、として新たに提案するのは、方面隊の運用する高射特科群と方面特科隊の地対艦ミサイル部隊を集約し地域防備に充てる運用を行います。

方面特科部隊は現在、中部方面隊と東部方面隊以外の方面隊に配置されていますが、最大規模の部隊が北部方面隊の第1特科団で、中部および東部方面隊からは管理替えという形をとります。ただ、管理機能等の面から即座に日本原や姫路、宇都宮へ移駐するのではなく平時の駐屯を北部方面隊として有事の際に移駐という方策は取り得るかもしれません。

方面ミサイル団、その編成は、方面ミサイル団本部、本部付隊、地対艦ミサイル連隊、高射特科連隊、後方支援隊、こうした編成が考えられます。広域師団案では方面隊の特科火力を隷下の装甲機動旅団に集中するという方策を提案していまして、装甲機動旅団の打撃力強化を志向しました。

具体的には装甲機動旅団特科連隊を構成する特科大隊の内、第一大隊と第二大隊及び第三大隊を自走榴弾砲により充当し、各特科大隊は現在の規模を維持し10門とし、現在の旅団特科隊には編成に含まれていない全般支援に当たる火力として、所謂旧第五大隊に方面特科隊の運用するMLRSを充てる、というかたち。

すると、方面隊の地対艦誘導弾システムが残りますが、地対艦誘導弾システムは地対地攻撃を念頭としておらず、その射程の大きさから旅団第一線部隊の火力戦闘に際し適合するものとはなりません。このため方面隊が地域防備に用い、敵二次上陸を警戒する骨幹火力として用いる選択肢が妥当でしょう。

ただ、地対艦ミサイル連隊は16両の発射装置を基幹として集中運用する方式を採っています、同時に96発を投射可能で予備に2斉射分を1基数として運用しますので、一個連隊が同時斉射を繰り返した場合、着上陸を試みるかなりの規模の船団であっても一掃する事が可能で、一見利点といえますが、二次上陸対処としては過大といえるやもしれません。

この点で、地対艦ミサイル連隊は連隊本部管理中隊に標定小隊を置き、一個連隊が一つの船団などへ投射する運用態勢を採っています。この点ですが、各特科中隊に中隊本部を増強し標定小隊を置き、広範囲の沿岸警戒を可能とする改編、若しくは中隊ごとの分散運用を想定した改編などを行う事が望ましい。

中隊に標定小隊を置く事で、中隊ごとの運用が可能となりますので、言い換えれば第一次上陸が展開された後の二次上陸対処は、一個ないし二個の中隊を残し連隊主力を防衛正面へ展開させ、着上陸地域周辺に遊弋する敵水上部隊や主要港湾へ向かう補給船団を阻止するべく転地することが、運用上可能となる訳です。

高射特科群も、装備する中距離地対空誘導弾は旅団高射特科部隊には射程が大きく、更に改良型は射程延伸等が行われます、特に射程のみならずシステムが大型であり、旅団施設部隊の能力では掩砲所構築が難しくなります、更に方面隊は策源地防空にこの種の防空能力が必要となりますので、優先順位として方面隊に維持される点が望ましい。

北大路機関:はるな くらま
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現代日本と巡洋艦(第十二回):防空能力と新型艦艇コンパクト護衛艦との協同

2015-07-19 23:26:40 | 防衛・安全保障
■巡洋艦とコンパクト護衛艦、僚艦防空能力
 日本の海上防衛に関する防衛力要求の変容に対応する巡洋艦の提案、前回にはその装備として艦砲の位置づけをみました。

 今回は、その防空能力をどの程度必要とするのか、という視点についてです。海上自衛隊は護衛艦隊隷下の4個護衛隊群を構成する8個護衛隊全てにイージスシステム乃至ターターシステムを搭載する防空艦を配備しています、これにより全ての護衛隊は航空攻撃へ広域防空艦による艦隊防空能力を供しているのです。

 本特集で提示しています巡洋艦は、国際平和維持活動や海賊対処任務へ長期間の外洋での行動を想定しており従来の護衛艦よりも間隔を大きく哨戒任務に対応すると共に、格納庫と大型の飛行甲板を有する事で航空機運用能力を重視し、必要であれば両用作戦や邦人救出へ人員輸送拠点へ、格納庫を物資輸送や邦人救出時の多目的区間とすることも示しました、そして艦砲を重視し、特に近年の長射程化する艦砲技術に着目し戦力投射任務や対艦攻撃に大きな変革が生じ得る点にも着目しました。

 艦隊防空能力、巡洋艦についてこの能力はどの程度求められるかについて検証する試みが今回の基本ですが、巡洋艦はその任務から揚陸艦としての能力、所謂水上戦闘艦と揚陸艦の特性双方を備えた戦力投射艦としての能力付与を示唆した提案を続けてきましたが、防空能力をどう考えるかにより、巡洋艦は戦力投射艦としての運用と共に対水上戦闘に代表される海上戦闘への対処能力の大きさが均衡点として影響を受ける事となるのは間違いありません。

 ここで選択肢は、広域防空能力、僚艦防空能力、個艦防空能力、以上三類型のいずれかを選定するかが論点となります。イージスシステムを搭載し艦隊防空を大きく担う広域防空能力、整備されたらば巡洋艦構想はその航空能力如何に関わらずイージス艦として類別される事となりますが建造費も大きく増大します。FCS-3系統の多機能レーダーにESSM発展型シースパローミサイルを搭載し自艦以外の限定的防空を担う僚艦防空能力、比較的費用と艦内容積は抑えられます。個艦防空能力、RAM等限定的に搭載する、一番予算は抑えられるでしょう。

 防空能力を考える際、僚艦防空能力が大きな視点として当方は考えます。こう考えますのも海上自衛隊は新しくコンパクト護衛艦という新区分を整備する事業を平成30年ごろより開始する見込みとなっており、数個護衛隊をコンパクト護衛艦により整備する方針が示されている為です。コンパクト護衛艦、当初は地方隊用護衛艦、DE区分の復活か、と1200t程度の護衛艦等を彷彿させる内容でしたが、基準排水量3000t程度、はつゆき型護衛艦程度の規模となるようで、満載排水量は4000t前後、イギリスの23型フリゲイトと同程度若干小型で世界では大型水上戦闘艦に区分される規模となるとのこと。

 コンパクト護衛艦は大型化を続けた汎用護衛艦の規模に一旦再検討を敷いた規模のコンパクト化ですが、併せて機雷戦能力の付与等多機能を盛り込んだものとなり、併せて防空能力を汎用護衛艦が標準装備するシースパローやESSMではなく一旦射程を改めたRAM、現在はRAMも長射程化の改修計画がありますのでこの限りではないのかもしれませんが、簡略化という方針で展開するようではあります。すると、平時における開会監視任務や有事における対潜掃討以外の船団護衛任務等は対応できるでしょうが、脅威度の高い海域での任務には僚艦防空能力を持つ護衛艦の支援が必要となる訳です。

 もちろん、コンパクト護衛艦の任務をかつての地方隊護衛艦DEが担ったような後方での重要港湾での対潜哨戒や沿岸での防衛任務に限るならば必ずしも僚艦防空能力の支援を必要とするわけではありません、ただ、有事の際にコンパクト護衛艦での航空脅威などが想定される海域での船団護衛等を対処するならば、やはり僚艦防空能力を有する艦艇の支援が必要となり、ここに今回までに提示する巡洋艦構想における巡洋艦に僚艦防空能力を付与するという選択肢が出てきます。

 巡洋艦の任務に戦力投射任務を重視し外洋での長期間の行動能力を想定したものを提示し、これにより少数の巡洋艦であっても海賊対処任務を一隻で対処し得るという点を示しまして、これは現在のソマリア沖海賊対処任務へ最大で回航中の交代に当たる護衛艦と訓練待機の護衛艦に行動中の護衛艦と合計6隻を運用する状況から脱却し、護衛艦の平時の南西諸島での哨戒任務への対応へ特化する可能性を示唆したものですが、有事の際に防護能力が巡洋艦に小さすぎた場合、残念ながら遊兵化する可能性があり、看過できません。

 しかし、僚艦防空能力を付与し、ESSM用にVLSを8~16セル程度搭載できましたら、コンパクト護衛艦の支援、具体的には大戦中の水雷戦隊における駆逐艦と軽巡洋艦のような相互補完の関係に充てることが出来ますし、船団護衛任務へコンパクト護衛艦を投入するさいには航空攻撃からの船団防衛に寄与しますし、更にコンパクト護衛艦の掃海任務への投入を行う場合、巡洋艦の航空機運用能力の大きさはそのままMCH-101掃海輸送ヘリコプターを搭載し掃海支援任務に用いる事も出来るでしょう、こう考えますと一定程度の防空能力付与はその柔軟性を高める事となります。

北大路機関:はるなくらま
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UH-X開発は富士重工へ、陸上自衛隊新多用途ヘリコプター開発事業者決定

2015-07-18 23:44:06 | 先端軍事テクノロジー
■UH-X開発計画の再開
 防衛省によれば7月17日、陸上自衛隊多用途ヘリコプターUH-1Jの後継となる新多用途ヘリコプターUH-Xの開発事業について、決定したとのこと。

 UH-Xは富士重工業が開発企業となり、米国ベルヘリコプター社との共同開発により既存民間用ヘリコプターの改修により開発する事となりました。この事業へは川崎重工業とエアバスヘリコプターズの共同による新規開発、富士重工業とベルヘリコプター社による既存機の改造開発が防衛省へ提案書を提出し、二段階に分けての主要検証を行い、決定に至りました。

 総合評価方式により選定され、これは単に費用面などから選定されその後の運用に支障を来すような状況を回避する観点から行われました、具体的には以下の通り。実現可能性、納入に要する期間、機体の性能、陸上自衛隊に対する補給整備上のポリシー及び後方支援体制の構想、ライフサイクルコスト、国内生産技術基盤への寄与、国内外の民間市場への展開、以上7要素より決定されています。

 富士重工はベルヘリコプターのベル412改良型を、川崎重工は当初OH-1観測ヘリコプター改良型を原型とする案、続いてエアバスとの共同開発を目指しています。UH-Xは20年間で150機の取得をめざし、1機12億円という10名程度の人員を輸送する防衛用ヘリコプターとしては比較的安価な機体を志向していました。

 エアバスとの川崎重工による共同開発ですが、エアバスヘリコプターズは新型機開発の共同事業に関してEASA欧州航空安全機関にて認定製造場評価を得る必要があり、この点で川さk重工は着手へ手続的な問題がありました。川崎重工は現在エアバスグループの一員であるメッサーシュミットベルコウブローム社との間でBK-117を開発した経験がありますが、現在はボーイングのCH-47やアグスタウェストランドのAW-101等の生産や維持に携わっています。

 ベル412ですが、陸上自衛隊は1960年代よりベル412の原型であるベル204をHU-1Bとして運用開始して以来、HU-1H/UH-1Hとエンジン強化型の日本仕様であるUH-1Jを富士重工がライセンス生産し運用し続けてきており、陸上自衛隊航空部隊からは機械的原因での墜落事故事例が皆無、として非常に大きな信頼を勝ち得てきました。

 UH-X、ベル412からの考えられる改修として山間部や洋上での飛行へ対応すべく、エンジンの換装によるエンジン出力の強化と島嶼部防衛への対応へ洋上飛行へ対応するべく航法装置の強化や暗視装置装備下での運用へ対応する操縦席の改修などを可能な予算内での実施が考えられるでしょう。

 ただ、陸上自衛隊は新たにMV-22可動翼機を導入する事となっており、一機当たりの取得費用が83億円程度と当初の見込みよりも相当安価に調達可能となったようですが、それでも非常に多くの予算を必要とする事業です。そして対戦車ヘリコプター選定としてAH-1S後継機とAH-64D調達中止の代替や、OH-6D観測ヘリコプター後継機とOH-1調達中止の代替という事業へ臨まねばなりません。

 UH-Xの開発は、一時川崎重工へ決定しOH-1観測ヘリコプター設計を応用する形で安価に高性能の多用途ヘリコプターを量産し、OH-1の生産基盤応用や整備基盤応用などが見込まれていたのですが、要求仕様書画定への手続き上官製談合に定義される事案があった為、急遽停止し数年単位で棚上げされていました、その間にUH-1Jは16機を三ヶ年分一括調達したのちに発注が途切れた為生産ラインが閉鎖、急がれていた訳です。

 他方、これは防衛産業生産基盤維持という観点からは容易ではない提案ですが、予算が限られている現状、代替航空機が急遽必要という状況に鑑み、例えばアメリカ海兵隊のUH-1Yのように、既存のUH-1Jの機体を応用し、そのまま延命改修と双発化及び航法機能強化と全天候飛行能力強化というかたちで、UH-1Jを12億円程度かけ、UH-1JK、と改修する選択肢なども実はその可能性の可否を検討する必要はあったのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十七年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.07.18-20)

2015-07-17 23:59:08 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 祇園祭山鉾巡行、台風接近下の雨天をついて無事今年もその大任を果たしました、後祭は来週です。

 千歳基地航空祭、今週末の自衛隊関連行事最大のものは北海道の航空自衛隊千歳基地の航空祭です、F-15二個飛行隊を隷下に置く精鋭第二航空団と政府専用機を運用する特別輸送飛行隊が展開する基地で北海道という冷戦時代の最前線を担った基地の航空祭、現代でも那覇基地についでですが、緊急発進が多い基地で、千歳基地は新千歳空港に隣接し、首都圏や京阪神から日帰りできる航空祭として有名です、台風の影響はどうなるのでしょうか。

 陸上自衛隊関連行事は北海道で今週末も盛況で、明日土曜日、北恵庭駐屯地祭が行われます。第72戦車連隊の駐屯する駐屯地で、かつては北部方面隊直轄第1戦車団が駐屯していましたが第1戦車群への縮小改編を経て機甲部隊縮小の影響と共に廃止されました、が、真駒内駐屯地より第11戦車大隊が移駐、連隊に五個戦車中隊と大隊に二個戦車中隊、自衛隊でも有数の戦車部隊が駐屯する駐屯地となりました。

 静内駐屯地祭、北海道の駐屯地ですが第7高射特科連隊が駐屯、陸上自衛隊の駐屯地にあって唯一実弾射撃が展示される駐屯地祭です。第7高射特科連隊は第7師団直轄の連隊で87式自走高射機関砲4個中隊と81式短距離地対空誘導弾2個中隊を配置し、機甲師団である第7師団に相応しい機動防空能力を発揮する部隊、駐屯地が射撃場に隣接していますので、高射機関砲と地対空ミサイルの実弾射撃を見ることが出来、非常に珍しい。

 釧路駐屯地祭、第5旅団隷下の第27普通科連隊が駐屯する駐屯地です。土曜日に行われまして、こちらを見学しました後に千歳航空祭という選択肢もあるやもしれません、旅団普通科連隊で本部管理中隊と三個中隊を基幹とする編成、師団普通科連隊よりも一個中隊と迫撃砲中隊が省かれた編制なのですが、装甲車化された中隊があり、能力が高く、そして迫力もあります。

 美幌駐屯地祭、第5旅団隷下の第4普通科連隊が駐屯していまして、嬉しい事に月曜日の海の日に行われます、ですから土曜日に釧路駐屯地祭へ足を運び、月曜日に美幌へ、という行程が可能です。日曜日の千歳基地航空祭ですが、やはり悪天候となりますと飛行展示に大きな影響が出ます、実際悪天候と視界不良で飛行展示が全て中止となる航空祭も有り得ますので、悪天候に強い普通科部隊や機甲部隊の駐屯地祭を廻る、という選択肢も考えられるでしょう。

 下総航空基地サマーフェスタ2015、下総教育航空群司令部が置かれる海上自衛隊の航空基地で千葉県北部に位置しています、下総という地名から房総半島南部を思い浮かべつ方がいるようですが我孫子市の近く、習志野市の近く、首都圏です。海上自衛隊創設以来航空集団司令部が置かれていた基地で、厚木航空基地部分返還と共に厚木へ移駐しましたが海上自衛隊の重要な基地です。

 小月航空基地キッズフェスタ2015、山口県の小月航空基地の一般公開です、追う空祭ではありませんので派手な飛行展示などが行われる訳ではないのですが、なかなか他の基地では見ることが出来ない海上自衛隊のT-5練習機が配備されている基地でして、そしてシミュレータの体験操作なども行われます。ただ、人数制限があると考えられますのでご注意を。

 小松島航空基地サマーフェスタ2015、徳島県の海上自衛隊第24航空隊が展開しています基地で、SH-60哨戒ヘリコプターが配備されています。SH-60哨戒ヘリコプターの飛行展示がおこなわれわれる予定です。少々交通が不便なところにありますが徳島駅から本数が少ないものの直通バスが運行されています。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭



・7月18日:釧路駐屯地祭・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・7月20日:美幌駐屯地祭・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・7月18日:北恵庭駐屯地祭・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/
・7月19日:千歳基地航空祭・・・www.mod.go.jp/asdf/chitose/
・7月19日:静内駐屯地祭・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/
・7月18日:下総航空基地サマーフェスタ2015・・・www.mod.go.jp/msdf/simohusa/
・7月19日:小松島航空基地サマーフェスタ2015・・・www.mod.go.jp/msdf/oz-atg/www.mod.go.jp/msdf/22aw/intoroduction/24fs/24fstop.html
・7月18日:小月航空基地キッズフェスタ2015・・・

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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榛名防衛備忘録:安全保障法制に関する視点と必要な知識を得る主権者の責任

2015-07-16 23:40:09 | 国際・政治
■安全保障法制衆議院可決
 大型台風が京阪神に接近し祇園祭どうなるのかという最中、安全保障法制に関する視点について、本日も。安全保障法制が衆議院を可決し通過、明日より参議院での議論に移ります。

 安全保障法制についての討議が不十分、という声を散見しますが当方だけでしょうか。110時間の質疑が行われた今回の平和安全特別委員会、個人的には十分議論されたものと考えています。実はその質疑の様子がNHK等の中継を録画する以外に、衆議院が衆議院インターネットに平和安全特別委員会としてビデオライブラリが自由に閲覧できる状態となっていましす。その内容はその気さえあれば全て見ることが出来ます。

 こうした上で審議不十分、という主旨の所見を持たれている方、研究者や識者の方でも110時間全てを見ていた、という方はなかなか聞きません、不充分という主観があるもしくは不十分という報道を聞き、その上で確認せず、審議が不十分だという自己暗示にかかっているだけではないのでしょうか。

 安全保障法制に関する視点と必要な知識を得る主権者の責任、現在の命題を理解するには最低限の努力が必要となりまして、当たり前の話ではあるのですが、理解する努力なしくて張り合い出来る領域を広げる事は出来ず、逆に中途半端な理解のまま進みますと、その範疇で知った専門用語を織り込まれた誤解の情報に接した際、情報選択が的確にできず、結果的にだまされる、誤解のまま次の論理へ進むことがあります。

 今回の議論でも、反対する野党と一部識者には論理飛躍を意図的に創り上げ、誤った印象、戦争法案という表現そのものが最たるものですが、または徴兵制の印象刷り込み、一国での防衛能力強化に関する誤解、現代戦の様相と実際に想定される武力紛争の展開への誤解、自衛官へのリスク増大等々が入り乱れている印象が拭えません。

 誤解としまして、戦争法案と表現される安全保障法制整備、もっとも周辺事態法や武力攻撃事態法で散々反対派に押し付けられた表現ですが、子供たちを戦場に送るな、というスローガンとともに語られるこの概念、それでは現在の法体系下ではどうなのか、という点を考えねばなりません。

 現行の憲政下では我が国は専守防衛、つまり本土決戦という国土戦を国是としていますので、開戦即本土侵攻、つまり、“子供たちを戦場に送る”というレッテル貼りが為されている現状は、送らなくとも侵攻されたならば脅威が直接くる“子供たちのいるところに戦場がやってくる”状況であり、この法制は紛争を抑止し、現況を脱却しようとするもの。

 徴兵制の印象刷り込み、安保法制に反対する勢力はこの徴兵制の危惧を声高に叫び、不安を煽っています。何故徴兵制に論理飛躍するかなのですが、これは反対派の論調では以下の通り。自衛隊が海外で大規模紛争を展開する、結果多くの犠牲者が出るので自衛隊志願者が減る、対処法として人員不足を補うために徴兵制が行われる、という言いがかり。

 徴兵制レッテルが言いがかり、と当方が表現しますのは、現代陸上戦闘が非常に高度な知識を求められるためです。徴兵制を行っても例えば小銃を使うだけのライフルマンの養成だけで三か月かかり、野戦築城や陣地戦闘と攻撃前進に市街地戦闘と対戦車戦闘に夜間戦闘、自衛隊はこれら陸上戦闘の専門技能を二年かけ最低限度を教育します、所謂ライフルマン一人の装備に要する費用は200万円、ライフルマン10名集まれば800万の高機動車に乗車させ、機動しなければなりません。

 徴兵反対、実は自衛隊は明確に反対しています、教育訓練の負担が大きく成り過ぎ、壮美も足りませんが、駐屯地も演習場も足りません。先進国ではドイツを含め欧州各国が次々と徴兵制制度を廃止ないし無期限停止、先進国で維持しているのはイスラエル、永世中立国のスイスにオーストリアとフィンランド、他にはギリシャくらいです。北東アジア地域では中華民国が志願制に移行中で韓国と北朝鮮くらいです。

 実際、軍事的合理性から徴兵制を行う利点はありません、自民党が与党である限り例えば小説の日本沈没というような状況でも生じなければ皆無でしょう。ただ、民主党は施行し得ます、何故ならば福島第一原発事故への消防吏員への強制措置がありますし、何より安全保障基盤整備と危機管理に消極的乃至稚拙な施策しか行わず、更に人員が足りなくなれば徴兵制が採られ得るという主張を行っている為で、合理性を無視してでも施行する可能性がある、いろいろ考えてみましたが可能性はこのくらいでしょう。

 現代戦は高度な知識が必要であり、第一線歩兵だけでも高価な装備と機械化が不可欠で更に訓練で年単位が必要になる。そして日本は島国であるので航空作戦と海上作戦がより重要となり、こちらは十年単位で部隊を養成しなければ対応できません、戦争を忌避し若しくは理解しようとしない事から知識が第二次大戦で止まっているのかもしれませんが。もっとも、赤紙で徴兵された、という知識的な誤りが、赤紙は臨時召集令状で予備役を動員しているだけであり徴兵ではないのですが、こうした誤解がそのまま通る現状、知識の陳腐化が端的に表れているといえるところ。

 一国での防衛能力強化に関する誤解、例えば野党第一党の幹事長の言葉として、例に弾道ミサイル防衛を挙げ、迎撃するのは集団的自衛権ではなく迎撃ミサイルなのだから集団的自衛権は不要でミサイルが必要だ、と。しかし、この主張は迎撃ミサイルが弾道ミサイルの発射をどのようにして感知し追尾するかが抜けています、ミサイルの発射を迅速に感知するには弾道ミサイルを感知可能なレーダーを搭載した艦艇と人工衛星からの情報が必要で、この視点が意図的に省かれていました。

 集団的自衛権論議の示された弾道ミサイル防衛、その索敵手段は前者はイージス艦、後者はアメリカが装備するDSP衛星の早期警戒能力、現代戦はデータリンクで情報共有を行い情報優位に立つことが死活的に重要ですので、このデータリンクを行う相互補完するという視点が我が国の言うところの集団的自衛権行使の定義に含まれるという事に他ならないのです。

 現代戦の様相と実際に想定される武力紛争の展開への誤解ですが、反対勢力の多くは徴兵制や戦場に送る等、第二次世界大戦の知識に依拠して反対しているように見受けられます。そして、憲法が専守防衛として、結果論としてですが本土決戦を行うように志向している為、国家の戦争指導方針が憲法上の制約から本土決戦という大戦末期のものを踏襲せざるを得ない為致し方ないのかもしれませんが。

 現実は非常に複雑です、平時の警戒監視がかなりの部分で奇襲、つまり第一撃そのものを抑止し得るのです。海洋監視任務や情報優位に依拠した遠距離打撃を行う戦術体系と情報優位の戦域優位への直結等、戦闘の様相は技術の発達で大きく変化しており、そもそも制度として宣戦布告という制度も国際法上消えていますので、明確に平時と戦時の制度的な区切りがありません、このあたりも留意し賛否を考える必要があるか、と。

 自衛官へのリスクですが、高まる事は確かです、しかし現状でも高い。そもそもリスクを最小限に抑えるのは、戦術面で研究された勝つために科学的に必要な要素、火力投射能力と展開能力、支える後方支援基盤と生産基盤、これらを有機的複合的に展開すればリスクを低減できるのですが、法整備が曖昧であれば有事の際に法規制が部隊の行動を規制してしまう。

 故に必要な特に必要な陣地や移動が出来ず、切迫した状況下で判断に平時の感覚が浸透し動けない、これが犠牲者を増やすリスクそのものです、つまり法整備が無ければ法治国家の状態を超法規として停止する例外状態にでも置かない限り、必要な行動が取れない、即ち現状の方がリスクは高い。

 リスクですが、PKO協力法などを制定した際の野党反対派が今回の安全保障法制反対派と重複しています、彼らがかつての主張に、競合地域として突発的戦闘が発生し得る状況化への派遣に、自衛官に丸腰に近い状態で派遣するよう要求した事を忘れてはなりません、紛争地への国家再建への国連平和維持活動に、ほとんど小銃のみで派遣されたこともありました、必要な際に必要な装備を持たせない使わせない、実は国会において自衛官のリスク増大危惧を指摘する勢力がそのまま過去に自衛官に多大なリスクを背負わせていた事、忘れるべきではありません。

 そして、集団的自衛権の容認でアメリカの戦争に日本が巻き込まれるという危惧、現代戦の様相と実際に想定される武力紛争の展開への誤解の一つでもありますが、実態は逆です。治安作戦を主体とした武力紛争対処を除けば、現在世界で最も航空戦闘や大規模海上戦闘が発生する可能性が高い地域は、東シナ海と南シナ海です、続いての規模でクリミア半島と黒海沿岸地域、自衛隊が黒海でロシア海軍と大規模戦闘、という可能性はありませんが、上記地域の二つは我が国周辺地域です。

 我が国隣国の強引な海洋進出と他国領域の一方的併合宣言と軍事力を背景とした恫喝が要因ですが、この場合に、アメリカの戦争に日本がまっ込まれるというよりは真逆の、アメリカが日本に巻き込まれる危惧というものがアメリカで大きく存在します。巻き込まれる危惧は双方によりなされており、そして航空及び海上での大規模紛争発生の危険性は我が国周辺地域が多い、という点を留意し考えた場合、実は杞憂と云いますか真逆の状況が存在する事、留意すべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第二一回):方面混成団、教育訓練と後方警備担う基幹部隊

2015-07-15 23:46:54 | 防衛・安全保障
■方面混成団
今回は方面混成団について。実際に編成されています教育訓練と後方警備担う基幹部隊です。

方面混成団は新隊員自衛官候補生共通教育及び陸曹教育と即応予備自衛官基幹普通科連隊の教育訓練を担い有事の際には地位警備の主力となるもの、広域師団案においては更に強化しまして機動旅団隷下の普通科連隊を現役自衛官部隊と即応予備自衛官及び予備自衛官部隊に分け、第一大隊と第二大隊とする案を提示しています。

普通科連隊を管区ごとに分け、現役大隊と予備役大隊に分け、現役大隊を機動旅団へ編入し機動運用し予備役大隊を地域配置部隊に置くという区分案ですので、この第二大隊を基幹として方面混成団は機動運用の枠外における重要施設及び主要道路警備にあたる部隊という位置づけを受け、重要な位置づけを受けます。普通科連隊は連隊区を有するため、その隊区での予備自衛官教育を包括し行うという方式を提示していました訳です。

現在の方面混成団は直轄の普通科連隊を一つ乃至二つ即応自衛官主体連隊を置き、中隊ごとに広く分布させ、中隊ごとに訓練を行うという方式ですが、ここを連隊が大隊規模で行うという方式に改めます。訓練支援へは方面混成団より教育要員を派遣し分遣隊のかたちで支援を行いますが、隊区は有事の際に戦闘部隊の主力である現役自衛官部隊が展開したのちにも予備自衛官を招集する事で警備能力と突発的な事態、災害派遣を含め対処する事となるでしょう。

即応予備自衛官を一個中隊と、予備自衛官を二個中隊程度、これを以て予備役大隊を編成する案、訓練度合いは現役部隊よりも相当低いことは確かですが、現役部隊には後顧の憂いと云いますか、二次上陸への警戒と攪乱部隊浸透は重大な脅威であるため、そこに即応予備自衛官の中隊と予備自衛官の複数中隊を配置し警戒する事で、逆に管区換えを行い他の普通科連隊を警備に充当する必要がなくなるため、現役自衛官部隊の機動運用能力は大きく向上するでしょう。

混成団本部について、混成団は方面隊直轄で余程のことが無ければ機動運用する事はりませんが、方面隊が指揮を担います。編成案としましては、即応予備自衛官指揮隊、方面指揮所訓練支援隊、評価支援大隊、教育支援隊、陸曹教育隊、機甲教育隊、特科教育隊、以上を基幹とし、教育部隊を包括すると共に機甲教育隊、特科教育隊、評価支援大隊を有事の際に戦闘部隊とし、教育用の装甲車両や火砲等を火力支援に用いる、つまり全般支援に充てることも配慮すべきでしょう。

陸曹教育隊や評価支援大隊等は機動運用部隊となるのですが、予備自衛官主体部隊は連隊管区にあってその連隊の連隊本部と第一大隊及び重迫撃砲対戦車部隊が機動旅団として派出したのちの後詰に大きな能力を持ちます、そして、方面指揮所訓練支援隊を方面混成団に含めたのは、指揮所訓練の教導要員をそのまま方面混成団の指揮下に含める事で指揮統制を円滑化する為です。

北大路機関:はるな くらま
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榛名防衛備忘録:安全保障法制に関する国民的見解と論点への幾つかの私見

2015-07-14 23:39:44 | 国際・政治
■安全保障法制論議に関する私見
現在北大路機関を掲載中のgooには日記カテゴリがあり、こちらに類別すべきかとも考えつつ。

安全保障関連法案が話題になる中、こちらについて幾つかの私見を。安全保障関連法案とはは平和安全法制整備法と国際平和支援法に重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律などこの法律を示すもので、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律と国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律という正式な名称があるのですが、略称というかたち。

存立危機事態、という新しい概念が安全保障関連法案に盛り込まれ、集団的自衛権の行使が限定的に可能となる、との部分が新しく、そして議論になっているもの。集団的自衛権、そもそも国際法では自衛権は正当防衛と同語であり、これを個別的自衛権と集団的自衛権に分けているのが我が国自衛権定義の特色なのですが、元々は日本国憲法が国としての交戦権を否定する明文を九条に盛り込んだため。

しかし、国家が存在し、そして日本国憲法制定時代には第二次世界大戦の日本の敗戦により米軍を中心とした進駐軍が日本を占領している状態であり、進駐軍が外国から日本国土への侵略も同時に防ぐ制度となっていた為我が国の防衛力という概念が必要性が無かったわけでした、ここが朝鮮戦争の勃発に伴い我が国周辺情勢が、元々朝鮮半島は敗戦まで日本本土扱いで最後には帝国議会議員として代表を国政の場に送る枠組が出来上がっていた場所であったのが戦地となったため、日本国として防衛を考える必要が生じてきました。

すると、日本国憲法は陸海空軍の保持を禁止しているもののこの定義が明文化されておらず、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を放棄していると明示しているものであり、国権の発動たる戦争以外の武力紛争への対処即ち一方的に攻め込まれた場合の自衛権を否定していない点、武力による威嚇又は武力の行使については国際法上の経済制裁や排他的協定妥結等を意味する武力行使なのか武器を使用し戦闘乃至戦闘準備を行う武力攻撃なのかが不明確であったわけです。

この欠缺から自衛権のための実力組織としての自衛隊、安全保障上の補完を行う日米安全保障条約が締結され、自衛権を保持している故の具体的施策が整うにつれ、自衛権の際限ない拡大運用を抑制するために自衛権を個別と集団にわけた、というもの。日米安全保障条約については、そもそも憲法上、国際法と憲法どちらが優位かについて鶏が先か卵が先か的論争があり、憲法第98条に憲法は最高法規だが国際法は遵守する、という明文がある為、学説が分かれているほど。

しかし、この件について、最高裁判所は過去の憲法判断を求められる事案への判決として、統治行為論、英訳をそのまま邦文化すれば政治の問題、として政治の問題なのだから政府の判断が最高裁判所に代わる憲法上の判断なのだ、と判決することが基本で、このもとで判断を最高裁からゆだねられた形となる内閣法制局は、当初は集団的自衛権を保持していないとしていたものが、保持しているが行使できないと解釈を変容させ、併せて今回の安全保障関連法にて、集団的自衛権を行使し得る、と転換させることになったかたち。

そもそも集団的自衛権行使、昨年までは保持していても行使できない、これは刑法学の視点からは緊急時に適法性を判断できない状況において緊急避難的に行使し得るという黙示的な行使容認論であったわけですが、これが何故必要になったのか、ということ。その背景には、近年の南西諸島と我が国周辺地域における大陸側の隣国が領土拡大を一方的に宣言し国内法で外国領域を編入、軍事力を行使し一部は武力行使に留まらず武力攻撃と解される行動を採り、我が国に対しても示威的な軍事行動を行い、ここまでの緊張度は冷戦期にもなかったほどの露骨な行動を行うようになった為。

もちろん、日本が防衛力を強化し、大陸側からの軍事圧力を一国で一蹴できる程度の軍事力を、例えば第二次大戦前の大日本帝国陸海軍が持っていたような優位性を、確保出来るならば、自衛権を、つまり日本が攻め込まれた場合でも一国で跳ね返すことが出来るのですが、大陸側の圧力は、稼働率はともかくとして数が多く、経済発展に併せて軍備近代化を大車輪で進めており、核兵器と弾道ミサイルを日本に突き付けている状況、一国ではどうにもなりません。

それ以前に当たり前ですが、一国で大陸からの軍事圧力に対抗できるような強大な軍事力を我が国が整備すれば、強大な軍事力同士の果てしない軍拡競争となってしまい“血を吐きながら続ける悲しいマラソン”のような状況となってしまいます。また、軍事力を脅威へ一対一で対抗できる能力よりは、多国間の集団安全和尚の枠組に置き軍事力を多国間で管理する方式を採った方が、一国の判断で武力紛争を開始できなくなるので、かえって戦争を二度と起こさないという視点では重要なのではないかという視点、これは冷戦期のNATO北大西洋条約機構の枠組に西ドイツを編入した際の論点として存在しました。

曰く、こうはいうものの日米安全保障条約という実質的な軍事同盟が存在するのだから集団的自衛権の行使は元々想定内であったのではないか、という視点はあるのですが、我が国政府は日米安全保障条約の枠内で自衛権を個別的に発動し、アメリカがこれを支援する形をとるという片務的な条約、好いとこ取りともいいますか、この方式で日米の調整をが硫黄上の努力により続けてきまして、自衛権論争の圏外に同盟条約を置く安全保障政策を採ってきたわけです。

ただ、日本は1956年に国際連合へ加盟しました、1947年の日本国憲法施行、日米安保条約締結が1952年、自衛隊発足が1954年、そして1956年の国連加盟です。これは一見安保法制論争とはかけ離れた論点に見えますが、国連はその任務が国際の平和と安定とし、国連憲章2条5項に国連の行動へいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与える義務が盛り込まれており、国連は憲章上国連軍を編成できますし、有事には国連軍事参謀委員会が招集され連合軍を編成します、ここに日本が加盟した、ということは、やはり黙示的に集団的自衛権の行使と云いますか、自国の軍事機構を国際的な運用に置くことは想定して異なことに、結果論としてですが、なる。

更に難しい問題としまして、集団的自衛権の視点は軍事技術の発展により境界線が不明確となりました、現在日本は冷戦時代の西側即ち自由主義陣営に位置し装備を整備してきましたが、現用兵器はデータリンク機能を有します、インターネットのようなもの、近い概念で、部隊と部隊の連携を行う事で打撃や防御など行動を迅速化する目的で為されたもの、昔は無線と手旗で行っていた意思疎通をデータ通信に置き換えたとの解釈が分かりやすいでしょうか、こうしたもので繋がっています。

すると、データリンクで目標の位置情報や脅威優先順位等の割り当てを行うと、データリンクで装備品が繋がりあう前提で運用されますと、ネットワーク内で個別か集団か、分けにくくなるわけです。ここの部分が、個別的自衛権行使をスローガン以上に抑える事が難しくなっているところ。現在の戦闘は情報優位が即戦闘での優位に反映されますので、データリンク能力の意味は重要で、この技術という現実を無視し、大昔に自衛権を個別と集団に分けた悪影響が法整備に影を落としている、こう表現することが出来るでしょう。

ですから、安全保障法制、この法整備は法律を実際の必要性に併せアップデートしたものに過ぎないものですし、自衛権の集団的な運用の権限についての最高裁判所からの判断を一任された内閣法制局の解釈で、従来は持っていて使えなかったという視点を、持っているので使えるようにする、その程度に過ぎないのですが。

併せて、”そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態”、ですがこれも20世紀の橋本内閣時代における周辺事態、もともと重要影響事態法は周辺事態法の改正法ですから当然なのですが、経済活動や国際テロリズム等が地球規模で展開し、地域を区切っていては対処出来ないという実態に合わせた改正でしかなく、そもそも周辺事態法にて周辺事態の定義を敢えて曖昧としていた部分を明確に地域的な区切りを実態に合わせただけのもの、といえます。

こうした部分を考えますと、何故この安全保障法制が大きな議論となっているかと問われたならば、その要因は、緊急時に判断すべき命題として、敢えて想定外を法整備に建前と本音論の形をとり判断を避けた、一種事勿れ主義的な法整備を転換する必要に迫られ、建前論からの脱却を一度に行おうとしたゆえの混乱であり、加えて、安全保障や防衛への国民的な無関心、無関心を放置した政治と報道の責務、主権者として関心を無心として責務を果たさなかった、その両面から、漠たる不安と不明瞭な理解が論争へ転換しているだけなのではないか、と。

対して、討議へ参画する国会における野党、その防衛への無関心さと議論に参加する上での必要な共有知を持ち合わせず、防衛知識と安全保障知識が議論にならない水準でしか持ち合わせず討議に望んだ結果、言葉のあやと歪曲解釈の揚げ足取りに終始する事しかできず、充分な議論をもとから出来ないまま論議不充分と叫ぶ状況は残念です。果ては論議に無関係の徴兵制議論まで野党や報道が一方的に振り掛け、一人相撲のような状況を呈している現状は、やはり必要な知識がないままの議論はこうなる他ないのか嘆息してしまうところ。

ただ、建前論的な部分を明示し、法整備する事で法規と実情の欠缺を補うという今回の法整備は、充分な説明を行う事でもう少し国民理解を得る事は出来ます。しかし、その為には防衛力と周辺情勢への最低限の知識は必要でして、これを十分周知させることは、流石に揚げ足取りで危機感を煽るとの批判は無いでしょうから、もう少し広報へ予算を掛け、共通理解の量いkを広げる努力はあって、良いのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第一〇回):超音速の米韓共同開発T-50練習機

2015-07-13 23:44:01 | 防衛・安全保障
■米韓共同開発T-50練習機
T-50,米韓共同開発の超音速練習機です。M-346と並び提示しましたT-50,こちらを今回は見てみましょう。

アメリカ空軍の次期練習機計画に有力候補として提示されるもので、主要部分の設計と量産はロッキード社が実施、開発資金は韓国が出しています。超音速飛行が可能で高等練習機にあたり、実際TA-50はF-5戦闘機改修型等に搭載されるイスラエル製EL/M-2032 レーダーを搭載し、AIM-9空対空ミサイルの運用能力を有します。

空対空戦闘を展開するには、特にMiG-21以上の脅威との航空戦闘には少々厳しく、オプションとして開発段階にはアメリカのF-20戦闘機用に開発されたAN/APG-67レーダーの搭載が検討されていました、AN/APG-67を搭載した場合には例えばAIM-120AMRAAM中射程空対空ミサイルの運用能力付与を意味しますので、能力的には高くなることを意味しますが。

もともとT-50は韓国空軍納入費用で320億ウォンに達するもの、設計費用等を上乗せした場合邦貨換算で50億円程度の練習機であり、レーダーを搭載するTA-50ではこれをさらに上回るものとなりますので、AN/APG-67を搭載したうえでAIM-120AMRAAMを運用した場合、スウェーデン製JAS-39戦闘機に迫る高価な練習機となってしまいかねません。

マッハ1.5の高速度を発揮し、高度な性能を支えるのはF/A-18Eに搭載されるGE F404エンジンの系統であるGE F404-GE-102を搭載しています、これはF/A-18E/Fの双発を単発としたものですが、同じくスウェーデン製JAS-39もGE-F-404をライセンス生産しましたボルボフリューグモートル社製 RM12を単発搭載していますので、戦闘機と同等の推力を誇る練習機ではある。

ただし、非常に残念な話で当然な話ではあるのですけれども、取得費用はオプション次第では戦闘機と同額となりかねないところ。そしてT-50は練習機としては最も高性能な超音速練習機ですので、T-50に機種転換する以前に練習生はジェット練習機乃至これに当たる高度な練習機を経験する必要があります。

初等練習機からいきなりT-50に乗れるわけではありませんので、航空自衛隊がT-4練習機の後継機を探す場合に、T-4の後継にそのままT-50を置くには少々無理があります。T-50の利点はなによりも超音速飛行能力にある、と各国に強く売り込んでいますが、残念ながら練習機が超音速飛行能力を必ずしも必要とはしていませんので、M-346等の競合機に苦戦が続きました。

T-50はインドネシア空軍へかなり安価に販売される事となりましたが、インドネシア製CN-235輸送機とのバーター契約により実現したものであり、一筋縄ではいきません。バーター契約の取得費用は条件が単独契約とは少々状況が変わりますので、その採用に関する中立的な分析が難しいところ。

続いてフィリピン空軍が次期戦闘機としてTA-50の空対空型であるFA-50練習機を採用する方針が伝えられましたが、フィリピン空軍はジェット練習機としてイタリアのアエルマッキ S-211を運用しています、やはりT-4の後継にT-50を導入する際にはどうしてももう一つ別のジェット練習機が必要となる事を意味する訳です。

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第二〇回):方面情報隊の無人偵察機と沿岸監視部隊

2015-07-12 20:24:14 | 防衛・安全保障
■方面情報隊はどうあるべきか
 方面情報隊はどうあるべきか、現在配置されている部隊をどのように展開させるかについてです。

航空機や機甲部隊を如何に駆使したとしても情報が正確かつ迅速でなければ何等意味がありません、着上陸の迅速な情報収集が筆頭任務として上がるところですが、重要港湾、原子力発電所、重要橋梁、主要高速道路、主要空港、有事の際には特殊部隊等による攻撃の対象となる脆弱な施設が多い。

しかし、これら施設は第一線部隊の行動を支え、併せて航空優勢や制海権維持の作戦部隊の行動を支える上で非常に重要です、もちろん法執行機関による警戒も行われましょうが、警察や海上保安庁の警備能力では限界がある、このように、こうした施設への警戒を行ううえでも特殊部隊浸透への警戒監視は、第一撃を受け防衛出動命令が発令された後においても重要となります。

方面情報隊は、現在の陸上自衛隊でも各方面隊に編成されており、移動監視隊と無人偵察機隊を以て編成されていますが、無人偵察機隊に配備されていますFFOS遠隔操縦観測システムについては一点から一点を観測する装備であることから、方面隊の装備として必ずしも有用かについて一考の余地があります。

提案としては方面特科部隊より旅団に全般支援火力を移管すべきという視点、MLRSを旅団に配備するという提案を行っており、FFOSについてもMLRSとともに装甲機動旅団特科連隊情報中隊に移管する事が望ましいでしょう。構成機材が多く使いにくい装備とのFFOSですが、衛星などの通信支援を受けず、独立した通信中継と管制機材を統合した装備ですので、大袈裟ではありますが、電子妨害等への脆弱性を抑えた装備では、ないこともない。

一方これは師団直轄部隊の項目で提示しますが、導入が開始されていますスキャンイーグル無人機についてはその能力と性能から広域師団無人偵察機隊に移管するべきと考えます、しかし方面隊には無人機は不要であるかと問われた場合そうではなく、陸上防衛全般を考えますと方面隊にはより進出速度の大きなものが必要です。

方面隊には高速度の、若しくは汎用性が高い無人航空機が必要であると考えますので、無人偵察機隊を移管するという表現はあえて避けました。方面隊には防衛基盤として侵攻着上陸地域への迅速な航空情報収集を行い第一線師団へ情報を提供する任務がありますし、統合任務部隊を編成し複数師団を集中させ状況に臨む場合には、移動した師団による防衛上の空隙へ二次上陸が為されないよう、警戒に当たらなければなりません。

主任務は沿岸部における浸透対処任務ですので海上自衛隊が導入するMQ-8無人機のように軽武装が可能で長時間の沿岸監視及び警戒と必要ならば軽攻撃を担う事が可能な航空機か、 MQ-1Cのように長時間にわたり沿岸部を監視可能な航空機を配備し対応する事が望ましい一方、費用面ではスキャンイーグルを当面師団無人偵察機隊とは別に運用し、戦域情報管理と沿岸警戒と師団と方面隊の任務を区分する選択肢も有用やもしれません。

移動監視隊については、二次上陸対処と特に後方の重要施設警戒に必要な部隊であるので、むしろ自動化した監視機材を多数導入し、即応予備自衛官部隊等による湯時の際の後方警備充実という選択肢を考慮する必要はあるところで、光学監視装置と沿岸監視レーダーの装備が師団後方策源地と方面隊拠点への接近経路に対する攪乱攻撃阻止という任務に用いられるため、その任務の特性から師団直轄とするよりは方面隊直轄任務とするのが妥当です。

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