北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成三〇年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2019.01.12-01.13)

2019-01-11 20:18:47 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 この冬一番の寒さではないかというところですが皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 空挺団降下訓練始め、13日の日曜日に挙行される一般公開訓練です。第1空挺団は我が国唯一の空挺部隊で、航空機による機動展開を任務とする。団本部付隊、第1普通科大隊、第2普通科大隊、第3普通科大隊、空挺特科大隊、空挺後方支援隊、通信中隊、施設中隊、空挺教育隊、1900名を基幹としています。降下訓練始めは年頭の落下傘降下訓練を行う。

 第1空挺団の降下訓練始め、毎年恒例となっている訓練ですが、団長以下の落下傘降下に続き、中隊規模の輸送機からの落下傘降下、続いてヘリボーンと共に訓練展示を展開しまして、仮設敵には富士学校を中心とする戦車部隊が当り、空挺部隊の迅速な空挺堡の確保と共に、空挺団機械化部隊の増援と第1師団との合流により仮設敵を撃破する展示の流れ。

 東京の今週末は荒天予報がありまして、特に日曜日は雪が混じる予報も。一般公開の訓練である為、強風時は落下傘が狭い訓練場を離れ市街地へ到達する危険性がある為、ヘリボーンのみ。視界不良時は航空機安全確保の観点から地上部隊のみとなる事もありますが、過去には積雪時、空挺団は冬季迷彩を着用しヘリコプターと共に展開した事もありました。

 さて撮影の話題を。自衛隊行事では式典や訓練展示も活況で素晴らしい写真を撮影できる貴重な機会となるのですが、同時に駐屯地弘済会や自衛隊父兄会、そして協力会や一般公募制の模擬店で売られる品々を愉しむのも重要な式典の要素です。変なグルメ系フェスタに不可解なコインを買って不明瞭な食事を制限下で胃に入れるよりも、自衛隊行事のグルメは遥かに楽しい。

 ホタテ浜焼き、マンガ肉、日本酒、と最近は凄い。しかし、一番最初に留意すべきは、使い捨てトレイや串を何処で廃棄するか、要するに捨てる場所を確認、それを最初に行った上で買わなければ、最悪レンジャー展示や装備動作展示に発泡スチロール容器を抱えたまま、紙コップを押し潰してポケットに入れたまま撮影する、という状況になりかねません。

 自衛隊駐屯地や基地を数多く散策しましたが、ポイ捨てを見た事がありません。これに慣れていますので昨今の催事や海浜のごみ問題が理解できないのですが、しかし、基地の中でも持ち歩くのは大変です。ですから最初にどうやって始末するかを確認してから、食事を愉しめば、ホルモン焼きうどんやコブラうどん等、純粋に楽しむことができるでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・2019年1月13日:平成31年-第1空挺団降下訓練始め…http://www.mod.go.jp/gsdf/1abnb/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新哨戒艦はどんなフネ?新中期防考察記【1】外洋哨戒艦か多用途支援艦か新型船形艦か

2019-01-10 20:10:13 | 先端軍事テクノロジー
■新中期防衛力整備計画で四隻
 平成30年に閣議決定しました、新しい防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画、今回からこの中長期計画に盛り込まれた新装備について、ひとつ考えてみましょう。

 新防衛大綱に新たに哨戒艦という新区分が導入されることが明示されました。哨戒艦、舞鶴にも配備されるのだろうか。中期防衛力整備計画ではこれからの五年間で4隻が取得されるという。哨戒艦、海上自衛隊は過去に哨戒艇として港湾警備用の機関砲を装備する小型艇を地方隊隷下の警備隊へ装備したことはありますが、哨戒艦という区分の装備を海上自衛隊は過去保有したことはありません。

 哨戒艦、それでは新しいこの聞き慣れない装備はどういったものを想定するのでしょうか。哨戒艦とは、外洋における警戒監視任務や離島と国境線における法執行任務にあたる海軍艦艇を示します。旧海軍では海防艦が担っていた任務で、老朽化した駆逐艦を哨戒艇に区分変更し、水陸両用作戦に用いる大型発動艇を搭載し任務に当てていたこともありました。

 しかし、様々な視点から、今回導入される哨戒艦はこれまでとは異なる装備のようです。海防艦としての任務は考えられません、理由は海上保安庁があるためです。旧海軍時代は海洋法執行任務も海軍の任務となっていました。しかし、戦後にこの任務は海上保安庁の任務となっています。海上保安庁では哨戒艦や哨戒艇ではなく巡視船や巡視船としている。

 厳密にいえば海上保安庁から独立した海上警備隊が現在の海上自衛隊ですので、法執行を主体とする海洋防衛から海上防衛が独立した構図ですね。駆逐艦を転用した哨戒艦艇という可能性、つまり老朽化護衛艦の転用という可能性は、なんともいえません。実は新防衛大綱には建造される護衛艦の数量とともに排水量が明示されていまして、上限が分ります。

 中期防衛力整備計画の装備調達計画、ここには具体的にトン数6.6万トンと記した上で、護衛艦10隻に潜水艦5隻と哨戒艦4隻、その他4隻となっている。5年間で23隻、護衛艦を毎年2隻建造する、として注目されているものです。なお、お忘れの方が多いかもしれませんが、現役艦艇の中でも、むらさめ型護衛艦、はつゆき型護衛艦、過去には毎年2隻建造された事は実は多い。

 30FFMとして建造される所謂コンパクト護衛艦、基準排水量は3900tです。満載排水量では5000t規模となるのですが、海上自衛隊は伝統的に基準排水量で艦艇を示しています。そうりゅう型潜水艦の基準排水量は2950tという事ですが、後継艦には3000t型潜水艦の整備が開始されています。護衛艦10隻で39000tと潜水艦5隻で15000t、44000tとなる。

 中期防衛力整備計画では残る2.2万トンのうち、哨戒艦4隻とその他艦艇4隻の取得となるのですが。その他艦艇に補給艦や多用途輸送艦等が含まれているのかについては、何分その他であるために判然としません。新型船形艦として防衛装備庁の将来三胴船が一番可能性が高いと考えますが、地方隊配備の1000t級多用途支援艦という可能性もあります。これらの大きさから導入可能という哨戒艦の規模の上限が見えてくるのですが。

 OPVという区分、世界にはOPV外洋哨戒艦という区分がありまして、フリゲイト等と比較し武装を艦砲に機関砲程度としつつ、警戒監視任務へ多機能レーダーを搭載するとともに長大な航続距離を付与したものがこれにあたります。実はオランダ海軍がホランド級OPVを導入したのですが、多機能レーダーを筆頭に建造費が高騰する出来事がありました。

 ホランド級の前型にあたるカレル-ドールマン級フリゲイトはヘリコプターと垂直発射方式のシースパロー対空ミサイル、76mm艦砲とハープーン艦対艦ミサイルに324mm短魚雷発射管を備えた典型的なフリゲイト、冷戦後海洋安全保障を考慮したオランダ海軍はフリゲイトからOPVへと主力を転換したのですが、結果的に新型の方が高コスト化したという。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】建仁寺,日本最初の禅寺に勇躍そうりゅう-うんりゅう躍動の正月東山散策記

2019-01-09 20:08:47 | 写真
■京都そうりゅう-うんりゅう
 東山は銀閣寺に清水寺と八坂神社に賑わいが溢れていますものの、静寂といいますかあたかも美術館のような静かさを湛える寺院もある。

 建仁寺、けんねんさんとしても知られるお寺は京都五山の第三位に順じ、東山は大和大路四条に在る臨済宗建仁寺派大本山の寺院です。建仁年間の1202年に開山したという建仁寺は茶の湯を再興した明菴栄西が源頼家と開いた我が国最古の禅寺として慕われています。

 正月三が日は、そうりゅう、うんりゅう、観に行ってきました、というと、なあんだ呉基地と横須賀基地へ行脚したのか、と思われてしまいました。実はこの正月、それほど体調思わしくなく、ゆっくりしていたので年末八坂神社へ無病息災祈願へも行けませんでした。

 風神雷神図で有名な建仁寺を拝観したらば、勿論少し外の空気も吸って、という事も含めまして多少は年始を快く過ごせるだろうと思い、八坂の方へと歩みを進めたのですが。なにしろ正月三が日、八坂神社は初詣の参拝者が多く、しかし建仁寺界隈はそれ程でもない。

 日本画家小泉淳作、法堂の双龍を描きました、渾身の描写と云い2002年のものです。小泉淳作は、つい最近まで御存命との事ですが、映画サザエさんやモスラはじめ東宝特撮映画で有名な俳優小泉博氏の実兄、といますとぐっと親近感がわく、というところでしょうか。

 法堂は明和年間の1765年建立といい、ここに2002年に双龍が描かれたという訳です。実は日本最古の禅寺は大陸文化の影響が濃い博多聖福寺に在るとの事なのですが、建仁寺に日本最古禅寺、方丈に大書されています。これは開山の栄西大師が先に建立した為という。

 双龍と雲龍、海上自衛隊の潜水艦でも無ければ旧海軍の航空母艦でもありません、海軍の方は双龍ではなく蒼龍ですが。龍は我が国仏教における威光と信仰の守り手の象徴、法堂の天井に双龍が一杯に広がり、襖絵として静かに目を光らせる雲龍が拝観者を迎えます。

 鎌倉幕府2代将軍源頼家が造営した建仁寺、その伽藍は応仁の乱はじめおおくの災厄と共に創建の時代を伝えるものは僅かながら、応仁の乱直後から全国の臨済宗寺院より伽藍の移築を進め、三門や勅使門に方丈も広島や静岡から早いものでは16世紀に移築したという。

 八坂に清水と高台寺、東山文化と云いますが車山文化という程に渋滞が続きそれ以上の行列が寺院へと続く中、何故かここは観光客が少なく比較的静かな一角という不思議な寺院です。寺社仏閣を拝観するに静かな方が良いのですが、昔から建仁寺境内は静かな印象だ。

 双龍と雲龍、法堂に画かれています。建仁寺と共に楢府京都五山には有名な睨み龍の天井画で知られる大伽藍がありますが、なかなかにカメラの持ち込みを許されず、仏教美術専門書やテレビ番組に特別に撮影される様子で面影を思い出すものも多いのですが、ここは。

 京都五山第三位に列せられる建仁寺は、双龍と雲龍はじめ重要文化財の襖絵等も拝観するに留まらず、その様子を写真として持ちかえる事を許す、なんというか寛大な寺院です。もっとも商用写真はお断りという事で、この線引きが明白というのはなんというか嬉しい。

 八坂の塔として有名な法観寺五重塔は、夕日に佇む塔や町屋と並ぶ様子、京都を紹介する際の定番の風景として用いられる情景の代表例ですが、考えてみればあの寺院も建仁寺の塔頭寺院の一つ、そして臨済宗の高台寺も、この建仁寺の末寺という関係にあるのですね。

 建仁寺の襖絵と天井絵に庭園は全て考えさせられるものがあるのですが、有難いことに座る事が出来る場所も多く、物事を考える思慮の機会を得られる庭園というものは心に豊かさを与えてくれる。華美さ派手さに物量を競う寺社仏閣拝観に飽きた方にお勧めでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【28】F-35,安価なF-22補完から三軍統合戦闘機へ昇華

2019-01-08 20:17:33 | 先端軍事テクノロジー
■F-35,そもそもどんな機体か
 F-35戦闘機は単純な戦闘機ではなく情報優位と情報伝送による戦域優位を掌握するための航空機だ、とは開発中に予算削減が検討された当時のアメリカ海軍の反論です。

 F-35B戦闘機はアメリカ海兵隊が強襲揚陸艦の艦上から運用する航空機として要求され、イギリス海軍が軽空母の艦隊防空用空母艦載機として運用する事が要求された航空機です。そしてF-35の能力は単純に第五世代機としてステルス性と長距離打撃力を活かした絶対航空優勢確保と航空阻止近接航空支援任務、単なる強い戦闘機に留まるものではありません。

 ネットワークセントリック、という能力が強調されるF-35B,この戦闘機が展開する事により敵目標情報と脅威情報を標定し情報を共有すると共に、地上戦闘を優位に展開させるうえで重要な地位を有する事となるでしょう。勿論、経空脅威の無い安定化作戦等ではF-35は必要性が薄いですが、攻勢防勢共に従来型戦闘ではその必要性が飛躍的に高まります。

 JSF計画として現在のF-35戦闘機の構図が醸成されたのは1990年代であり、この頃は単にF-22戦闘機という取得費用と運用費用が莫大且つ機密の塊で輸出が難しい第五世代戦闘機を補完する安価なステルス戦闘機、という青写真が構成され一つの共通認識となっていた事は確かです。F-16にF/A-18CとAV-8やA-10を一機種で置き換える壮大な構想でした。

 F-16にF/A-18CとAV-8やA-10を一機種で置き換えるという構想ゆえに当初は一機当たり2300万ドル程度に抑えられるという量産効果と性能を含め、安価な第五世代機が見込まれていたのですが、開発期間が長期化すると共に戦闘機を取り巻く運用環境が変化し、これを適合させる為に様々な性能を盛り込み、一機一億ドルという区切りの好い高価な機体となる。

 ハープーンミサイルの後継が長射程化するためにセンサーノードが必要となり、ステルス性と自衛空対空戦闘能力を有するF-35B,という構図はハープーンミサイル後継のミサイルが非常に長射程化した今日であるからこその視点であり、JSF計画当時の対艦ミサイルは200km前後の射程が主流、F-35等に索敵を依存しなくともある程度対応できる物でした。

 海兵隊が運用するF-35B戦闘機、これは同時にネットワークセントリックという通信技術と情報優位の戦域優位への必然的な直結時代には不可欠な装備であると共に、F-35Bのネットワークセントリックが頭上に展開しているか、戦域内にネットワークセントリック能力が展開していない状況では、空の下、陸上戦闘の様相は全く異なるものとなるでしょう。

 MQ-9無人攻撃機やRQ-4高高度無人偵察機等の無人航空機が多数滞空している状況ならば、陸上戦闘は情報優位を比較的堅実に維持できる事でしょうが、残念ながらMQ-9やRQ-4では敵戦闘機や敵広域防空ミサイルの脅威下での従来型戦闘では、まず敵戦闘機とミサイル、これらを無力化しない限り、低速且つステルス性が低く簡単に無力化されかねません。

 垂直離着陸可能なF-35Bを陸上自衛隊の視点から考えるのであれば、敵無人偵察機を排除し敵からの情報秘匿を維持しつつ、しかし我が方は敵戦闘機を自力で排除し情報優位を確保出来る、という、アメリカ海兵隊とF-35Bの関係の様に陸上自衛隊の陸上防衛とネットワークセントリック能力の不可分の関係性から、F-35Bが必要性だと視る事も出来ます。

 陸上自衛隊もF-35Bの能力を必要としている、しかしこの能力はF-35A戦闘機でも成り立つものですが、遠方の航空基地から陸空作戦協定の枠内で運用される機体よりは、制空戦闘とは別枠で運用できるF-35Bを航空自衛隊が運用し、情報優位能力を陸上自衛隊へ提供する、可能ならば海兵航空団のような自前の機体を、という考えもあるのかもしれません。

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火力戦闘車/装輪155mm榴弾砲試作車が納入(考察2)特科火砲三〇〇門時代の新型火砲

2019-01-07 20:08:03 | 先端軍事テクノロジー
■FH-70榴弾砲479門の後継
 75式自走榴弾砲、99式自走榴弾砲、続く新自走榴弾砲の完成となるか、評価試験次第は試製56式自走榴弾砲に続く、という火力戦闘車について、昨年掲載の前回とは転じた視点から考えてみましょう。

 当初構想されたものは防衛装備庁が技術研究本部時代に開発した先進計量砲をそのまま車載する、というものでした。駐鋤で反動を吸収すれば国産の日野のトラックでよい、中砲牽引車と整備性も共通化でき、という考えであったようです。車体が大きくなり、目立ちますが、その分車体が自走できるならば陣地変換を迅速化できる、という視点での自走砲です。

 先進軽量砲を日野のトラックに、しかし、日野自動車は155mm榴弾砲射撃時の瞬間的に掛かる負荷と車体懸架装置強度を計算し、日野自動車には火砲を搭載し射撃する前提の強度冗長性を有するトラックはなく、既存車両では軽自走榴弾砲への転用は不可能、こう伝えたとされます。実際、155mm榴弾砲のフル装薬射撃、派米訓練では物凄い発砲焔が出る。

 富士総合火力演習では大きな反動は見えませんがあれは距離3kmでの射撃、52口径のフル装薬では、155mm砲弾を40kmから50kmと実に京都駅から大阪駅まで投射するものです、それだけ反動は大きい。無理に搭載していたらば、懸架装置を破損するか駐鋤が大型化し過ぎ試作段階で制式化見送りとなったかもしれません、が、ここで最初の頓挫となります。

 重装輪回収車、陸上自衛隊は96式装輪装甲車の回収用に導入を開始し、続いて03式中距離地対空誘導弾システム、12式地対艦ミサイルシステム、PLS装置付トラック、Pー21対空レーダ装置、と派生型を展開させていました。当初は火力戦闘車も派生に加わる予定でした。しかし、火力戦闘車試作車はMAN社製、つまりドイツ製のトラックを採用しました。

 MAN社製トラック、二階建観光バスくらいでしか国内では見ないトラック、軍用トラックとしては定評のある大手メーカーですが、自衛隊での採用実績はありません、実は部分試験車両の時点で防衛装備庁公開写真にMAN社製トラックが採用されていましたので、部分試作であるのか、全体試作もMAN社製トラックを採用するのかは、大きな関心事でした。

 火力戦闘車が重装輪回収車を採用せずMAN社製トラックを採用した背景には、道路運送車両法に基づく車両限界で、重装輪回収車を車載すると全長が12mを越えてしまい特殊大型車輌になるのが要因とも、重装輪回収車よりもMAN社製トラックの砲が安価であったためともいわれるのですが、これらは推測の域を出るものではなく、まだ詳細はわかりません。

 MAN社製トラック採用の背景、最大のものは陸上自衛隊火砲定数の縮小でしょう。現在の定数は300門、北部方面隊には40tの装軌式自走榴弾砲である99式自走榴弾砲が、これでなければ90式戦車や10式戦車に随伴できないとの理由から配備されています、量産数はすでに140門ほど、すると火力戦闘車はどれだけ多くとも150両少々しか生産されません。

 日本製鋼所がライセンス生産したFHー70榴弾砲の479門には遠く及びません、そして防衛計画の大綱が2018年内にも再改訂の方針が示されていまして、これまで1995年の1000門が900門に縮小されたのを皮切りに、自民党政権時代と民主党政権時代で一貫し火砲は削減され続けていますので、新防衛大綱でも火砲定数が更に削減される可能性もあります。

 方面特科連隊、陸上自衛隊は現在、本州の師団特科連隊と旅団特科隊を全廃し方面特科連隊へ移行する改編を推進中です。具体的には九州沖縄の防衛警備を担う西部方面隊は元々師団特科連隊として第4特科連隊と第8特科連隊に合計8個特科大隊を配置し、また方面隊直轄火力として方面特科隊が置かれ203mm自走榴弾砲やMLRSを装備していました。

 300門への特科火砲削減、この影響は大きく西部方面特科連隊改編により3個大隊、30門にまで激減しています。改編前には第8師団の第8特科連隊がFH-70榴弾砲だけで2017年までは60門装備されていたのです、それが方面隊全体で、つまり九州全域と南西諸島を担当する方面隊で30門、この状況で二種類の火砲採用には工夫が必要だったのでしょう。

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【新年-防衛論集】“新しい八八艦隊構想”,防衛大綱F-35B導入決定と将来水上戦闘の変容(3)

2019-01-06 20:19:35 | 北大路機関特別企画
■まや型イージス艦量産に併せ
 新しい八八艦隊の必要性を護衛艦ひゅうが就役10周年に合わせて提示しました新年防衛論集は今回の第三回が一応の完結となります。

 護衛隊の能力に格差が生じさせないという観点は、対艦ミサイル戦闘に加え対空ミサイル戦闘という視点からF-35Bを必要としており、ヘリコプター搭載護衛艦の増勢と新しい八八艦隊が、イージス艦8隻という現在の防衛力と共に現在4隻となっているヘリコプター搭載護衛艦の8隻への増強、全ての護衛隊にヘリコプター搭載護衛艦の配備は、必要です。

 航空母艦が必要と考える訳ではありません、全通飛行甲板型護衛艦で充分です。航空母艦と全通飛行甲板型護衛艦の明確な違いは内閣法制局統一解釈において、“専ら相手国度に壊滅的な打撃を与える兵器”として戦略爆撃機と並び攻撃空母が挙げられました。全通飛行甲板型護衛艦は艦載機を主としてセンサーノード任務に充当、この定義に含まれません。

 しかしながら、センサーノード機という区分では、艦隊防空戦闘機は不要であるが将来に長射程化するミサイル戦闘へ対応するには相応の性能を持つセンサーノード機が必要となる訳ですので、航空母艦は必要ではないがセンサーノード機の母艦が必要になる。この選択肢として経済的に現実性があり導入が可能な機種が世界にはF-35Bしかない、という。

 四個護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦は各1隻が配備されています。しかし、防衛大綱別表にはイージス艦は8隻と定数が示されていますが、ヘリコプター搭載護衛艦の定数はありません。そして各1隻という配置は、護衛隊群が現在の2個護衛隊編成前、3個護衛隊を隷下においていた時代に直轄艦、つまり旗艦に充てられていた時代の名残でもあります。

 第51護衛隊に護衛艦しらね、ひえい。第52護衛隊に護衛艦くらま、はるな。実はヘリコプター搭載護衛艦が配備された当時には護衛隊群へのヘリコプター搭載護衛艦の配置は元々2隻でした。しかし、はつゆき型が竣工した1980年代より汎用護衛艦へのヘリコプター搭載がはじまり、4個ある護衛隊群を共通編成とする為に各群に旗艦として配置された。

 護衛隊群が有事の際には統一行動を採れば済む事であり、個々の護衛隊にヘリコプター搭載護衛艦を配備し、自己完結させる必要はあるのか、こうした反論はあるかもしれません。一つの視点ではあるでしょうが、独立運用可能な作戦単位が護衛艦隊全体で4個か8個かの違いは大きいという一点、そしてイージス艦主体の護衛隊編成が転換しつつある一点が。

 こんごう型護衛艦一番艦こんごう就役は1993年ですが、海上自衛隊は護衛隊群に各2隻のミサイル護衛艦を配備しており、広域防空ミサイルを運用し艦隊防空に充てています。ターターシステム搭載の、あまつかぜ、たちかぜ型、はたかぜ型、と整備されてきました。こんごう型からミサイル護衛艦はイージスシステム搭載のイージス艦時代へ発展しました。

 まや、まや型護衛艦の進水式と共に海上自衛隊は2019年進水式を迎える護衛艦まや型二番艦の就役を待って八個護衛隊全てにイージス艦が配備される事となります。イージス艦はSPY-1レーダーとスタンダードSM-2ミサイルの併用で100km圏内21目標を数秒間で対処できる極めて高い防空能力を有します。まや型は今年もう一隻進水式を迎える予定です。

 全ての護衛隊へイージス艦が配備される事になる。この意味するところは現在の護衛艦隊護衛隊群を構成する二つの護衛隊がヘリコプター搭載護衛艦主体の護衛隊とイージス艦主体の護衛隊という現在の編制の定義が薄れつつある、という事であり、艦隊防空の視点では二つの護衛隊の能力はある意味近いものとなる訳です。ある意味、とは深い意味がある。

 SM-6,今年度から試験弾取得が開始されるスタンダードミサイルの新型は射程370kmと高高度目標に対しては450kmの射程を有する将来の広域防空ミサイルです。思い出す点は冒頭に示しました“射程500kmの対艦ミサイルも索敵できなければマストが見渡す30km以遠は照準さえ出来ない”というもの。勿論相手が飛行していれば、もっと伸びるのですが。

 SM-6のセンサーはAMRAAMの物を流用しています。そしてこのSM-6はF-35とリンクし誘導が可能で、450kmもの距離をイージス艦から見渡す事が出来ません、ここにF-35Bが、という。誤解を恐れず表現するならば、イージス艦のスタンダードミサイル誘導を行うSPG-62イルミネーターの役割をF-35BのAPG-81レーダーが部分的に担うということ。

 F-35戦闘機によるスタンダードSM-6誘導実験は既に開始されており、2016年にはF-35BがMQM-107無人標的機の飛行情報をLSS1デザートシップ地上イージス実験設備へ伝送、この目標情報を元に迎撃を行う実験が行われました。イージス艦の見通し線外の対空戦闘の一端をF-35Bが担う事で多数目標への迎撃猶予時間を延伸し艦隊防空強化を目指します。

 護衛艦隊隷下の全ての護衛隊へイージス艦の配備が決定し、まや型の量産が進む中、イージス艦の能力を最大限に発揮する為に、F-35Bとの連接が重要です。特にSH-60哨戒ヘリコプターにはSM-6の管制能力がありません、この意味するところはヘリコプター搭載護衛艦を有さない護衛隊はスタンダードミサイルの最大限の能力を発揮出来ないということ。

 40機のF-35B,どのように運用するのか。新防衛大綱では約40機のF-35Bを導入する方針が示されました。この規模をどう考えるかですが、この40機という機数は2個飛行隊分となります。すると2個飛行隊を8隻に分ける事への不安を案じられるかもしれません。ただし、センサーノード機として運用するならば、それ程多数の機体は必要ではありません。

 Su-30等の航空機が我が方のF-35Bによる索敵を妨害へミサイル攻撃を展開してきた場合ですが、F-35BにはAMRAAM空対空ミサイルが搭載可能です。しかし、それ以上にF-35Bが誘導するスタンダードSM-6がイージス艦から投射される事で対処可能です。レーダーに明確に映り込む兵装庫開閉を行わずにイージス艦にミサイルの出前を要請出来るのですね。

 8隻のヘリコプター搭載護衛艦に8個飛行隊、とする必要は必ずしも無く、即応機と任務機に整備中の機体とでローテーションを組める程度、理想では6機ですが導入計画の約40機という数字から5機程度でも充分でしょう。その分、ヘリコプター搭載護衛艦は対潜戦闘に必須のSH-60J/K哨戒ヘリコプター等各種ヘリコプターをを搭載しなければなりません。

 インヴィンシブル級航空母艦、ハリアーを艦載機とする世界空母史上に軽空母という新区分を開拓したイギリス海軍が1970年代後半から2010年代前半にかけて運用した航空母艦ですが、その満載排水量19500tで護衛艦ひゅうが満載排水量19000tと同程度でしたが、平時におけるハリアー攻撃機の搭載数が5機でした。5機で充分運用が成り立つのでしょう。

 F-35Bを5機、というものは訓練体系と整備補給体系を考えますと航空自衛隊が導入するF-35Bを全て艦上に置くのか、と批判されるでしょうが、実際のところ其処までぎりぎりの運用を必要とするのは有事の際だけです。護衛隊群が4個体制を維持しているのは、実任務対応群、即応待機群、教練練成群、重整備群、とローテーションを組む為の編制です。

 このように、新しい八八艦隊構想は、ヘリコプター搭載護衛艦を更に4隻建造する事により、海上自衛隊護衛艦隊の能力を飛躍的に向上させる事が可能です。そして、旧海軍の八八艦隊構想のような無茶苦茶な経済的負担はありません。ヘリコプター搭載護衛艦は艦載機を更新する事で数十年間第一線に寄与する事は護衛艦はるな、が証明しました。F-35B導入が決定した今日、その最大限の活用方法として検討する価値はあると信じます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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能登半島沖韓国艦火器管制レーダー照射事件,クァンゲト-デワンがP-1哨戒機にミサイル照準

2019-01-05 20:14:51 | 国際・政治
■日本の再発防止要請を韓国拒否
 日韓の錯誤に終わると思われた昨年末の事案が事件へと拡大しています、両国関係へ防衛上無視できない大きな歪が生じるかもしれません。

 海上自衛隊のP-1哨戒機に対し韓国駆逐艦クァンゲト-デワンが2018年12月20日能登半島沖の我が国排他的経済水域において火器管制レーダーを使用しました。第二北大路機関へ掲載していましたが、韓国側の謝罪で早期収束するとの見通しは無くなり、改めて1月5日に今回の事案をまとめました。この行為はミサイル照準を行う行動、通常は行いません。

 能登半島沖、12月20日1500時頃、韓国海軍艦艇と公船が海上に遊弋している状況を厚木基地第4航空群所属のP-1哨戒機が発見しました。P-1は当該艦船周辺を飛行していたところ、突如クァンゲト-デワンより指向性の高いレーダー照射を受け、火器管制レーダーによる脅威電波と判断したP-1哨戒機は回避行動を採ると共に衛星回線で本省へ報告しました。

 韓国海軍駆逐艦クァンゲト-デワンと海洋警察庁所属警備船サンボンギョの遊弋している様子と、その付近に浮かぶ国籍不明漁船の様子はP-1哨戒機が写真を撮影すると共に動画を撮影していまして、この動画は二転三転する韓国側の反論として防衛省が公開しています。そして動画からは遺憾な程に韓国側の主張が事実と反している様子が映されていましたね。

 シースパローミサイルでいきなり攻撃される可能性がありました、防衛省動画には乗員が衛星回線で報告する旨を話していますが、撃墜された場合への備えです。火器管制レーダーは2013年1月30日に発生した中国海軍レーダー照射事件として中国海軍フリゲイト連雲港が護衛艦ゆうだち、に対し使用し日中関係にて大問題になった事をご記憶でしょう。

 P-1哨戒機は回避行動を採った後、121.5MHz VHF緊急周波数、156.8MHz国際VHF、243.0MHz UHF緊急周波数にて各二回の合計六回、韓国艦に対し火器管制レーダー使用の意図を問うたものの、韓国艦からの一切の応答はありませんでした。ただ、返答の代わりに数分間に渡り複数回の火器管制レーダー照射が行われており、偶発事故ではありません。

 日韓防衛当局は衛星会議システムにより本件事案についての討議が行われましたが、日本側が航空法施行規則と国際民間航空条約第2付属書に基づく範囲内での飛行を行い威嚇行為は行っていない、との主張に対し、韓国側が日本側が虚偽発表を行っているとして反発したと報道されています。日本側としては再発防止を求めており、平行線のまま推移する。

 再発防止を求める防衛省に対し、韓国側の反論が二転三転し、実はこの事件は政治点で第二北大路機関において速報し、その状況を紹介しているのですが、当初当方は韓国側が遺憾の意を表明し、形式的な謝罪を経て2018年内に鎮静化すると思っていました。しかし、韓国側が意味不明の反論を行うと共に正当化を図り、予想外に長期化してしまいました。

 二転三転とは、韓国海軍が北朝鮮船舶を救助作業中であり悪天候により火器管制レーダーを用いて捜索を行っていた、そもそもP-1哨戒機に対する火器管制レーダーの使用は行っていない、P-1哨戒機が駆逐艦上空を低空飛行した為に危険を感じて火器管制レーダーを作動させた、上空は飛行していないが威嚇飛行を用いた事は間違いない、と二転三転です。

 二転三転しては議論が成り立ちませんが、火器管制レーダーを使用しても海上の遭難船舶捜索は不可能である点、そもそも悪天候ではなくP-1哨戒機から目視で韓国艦船と北朝鮮遭難船舶が近距離に見えている状況であったとしましたが、韓国側は日本発表を捏造であると非難、12月28日に政府はP-1哨戒機が撮影した事件当時の動画をWeb公開しました。

 事態は収束しませんでした、韓国側は日韓衛星テレビ会議において当時の映像を公開しない事を要請したとして、韓国側の主張と異なる事実を公開した事に対し激しく抗議しました。また、映像は客観的ではないとして、韓国側にも映像公開の用意がある事を発表、P-1哨戒機による威嚇があったとして改めて抗議し、火器管制レーダー使用を事実上認めます。

 クァンゲト-デワンはKDX-1計画として韓国海軍が初めて建造した外洋型水上戦闘艦での一番艦で1998年に竣工、同型艦が3隻あります。韓国海軍艦艇としては当時最大のもので、海上自衛隊はつゆき型護衛艦に準じる大きさであり、同年に挙行された韓国建国記念国際観艦式にて金大中大統領が乗艦した駆逐艦です。艦対空ミサイルも初めて搭載しました。

 火器管制レーダーは対空レーダーにより発見した目標に対しミサイル等を誘導する正確な照準を行うためのレーダーであり、戦闘機でいうところの“ロックオン”を行う装置です。これを使用した場合、国際法上の武力攻撃には当たりませんが武力行使の定義に含まれ、照準された側はミサイル欺瞞用チャフやフレアーを用いた回避行動を採る事もあります。

 防衛省報道発表画像にはクァンゲト-デワンの後部火器管制装置が撮影側、つまりP-1哨戒機へ指向されている明確な写真があります。韓国側の反論の一つに、火器管制装置が指向していても主砲は指向していないというものがありました。しかし、クァンゲト-デワンにはMk41VLSに搭載されたシースパロー艦対空ミサイルがあり、指向の必要がありません。

 韓国側は日本側が事実の歪曲を行っている根拠として、火器管制レーダーにより照準されたのならば再度接近する事は有り得ない、としています。しかし、動画に示されている通り、衛星通信により本省へ通知している点は、この後に仮に撃墜されたとしても航空救難を受けられるよう、事実がどうであったかを知らせる為、非情な程の胆力で実施でしょう。

 1月4日、韓国側が動画を発表しました。仕事始めは日韓一緒なのか、と妙に感心しましたが、発表動画は残念ながら日本側が撮影した画像を再編集した四分以上の動画に韓国海洋警察撮影の十秒程度の動画を加えたものでした。また、信じがたい事に証拠動画の音声部分が全般に渡り演出用音楽により塗潰されており、あれでは単なるプロパガンダ動画です。

 ミル/シュトリヒ計算法により韓国海洋警察が発表した十秒間の動画ではクァンゲト-デワンとP-1哨戒機が写り込んでいるのですが、当該画像が撮影された際の海洋警察サンボンギョとクァンゲト-デワンの距離はP-1哨戒機から撮影されており、全長38mのP-1とクァンゲト-デワン135mから算定しますと、やはり高度200m程度、離隔は3000m以上ある。

 ミル/シュトリヒ計算法は幅の分っている基準目標から距離を概算するのですが、戦車砲照準器等で目標までの距離を測る手法で、テレビアニメ“ガールズ&パンツァー”等でも有名になりました。ただ、サンボンギョとクァンゲト-デワン離隔距離が概算である事から、高度200m程度、離隔は3000m以上は最低値であり、もう少し距離があるかもしれません。

 日本側は再発防止を求めているのですが、これを韓国側は日本へ謝罪する事への劣等感と勘違いしている印象が否めません。しかし、再発防止の意図は火器管制装置の照射が恒常化したならば、偶発的ミサイル発射に繋がりかねない。韓国海軍は簡単に武力行使を行う様な統制のとれない無法者ではないと信じたく、原因究明と再発防止措置を望みたいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成三〇年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2019.01.05-01.06)

2019-01-04 20:08:22 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 正月明けの金曜日の仕事始めを皆様いかがお過ごしでしょうか。今週末は自衛隊行事などはありません。

 初夢の話題などを。一鷹二富士三茄子、鷹ではなくイーグル即ち鷲ですが小松基地航空祭のF-15大編隊の様子を紹介しましょう。鷹と云いますと三沢基地までF-16編隊飛行の様子をとも思いましたが米軍機はあまり編隊飛行を展示しないのですね。国産初のジェット練習機T-1初鷹は2006年に除籍され早13年、その様子を紹介してから13年となりました。本年もよろしく。

 一鷹二富士三茄子、富士の編隊飛行を行う第1航空団のT-4練習機大編隊の様子、浜松基地航空祭は久々に富士山を望見できまして、その上に真上を大編隊が飛行するという富士尽くしでした。富士と云えば富士総合火力演習含め、いざ撮影という瞬間にうす雲に隠れてしまい照れ屋さんの印象がありますが、初夢の縁起を大編隊にて雰囲気伝われば幸い。

 一鷹二富士三茄子、C-130H大編隊を。いよいよ一鷹二富士三茄子から離れていますが、C-130Hの胴体からその、ずんぐりした形状に茄子を連想できるのではないでしょうか、いやいや流石に無理、と思われるかもしれませんが、少々無理のある写真でも文章と共に読み応え感じる文章を仕上げられれば、と。重ねまして本年もよろしくお付き合いください。

 さて撮影の話題を。EOS-KissX7はお勧めできる最良のカメラだ、とはこれまでに強調しましたが、撮影を行う際に最も懸念するのはカメラの信頼性です。経験論ですが、バリアングル液晶、つまり角度を転換させる事が可能な液晶部分ですが、概してカメラはこの部分の故障が一番多い。コンパクト機種PowershotG-12にミラーレス機EOS-M3,共にここで動かなくなりました。

 X7は液晶部分が固定式であり、この部分に堅実な設計が採用されていましたが、後継機種の後継機種X9はバリアングル液晶を採用しているのですね。X7は毎秒4枚とX9は毎秒5枚と性能は進化しているのですが、どれだけ高性能であっても現場で動かなければ、もう一回撮影できるのか、という事になります。これが観艦式であれば取り返しがつきません。

 しかし残念なのはX7は2014年に世界最小最軽量として発売されたものの、生産終了となっているのですね。高評価だったのでしょう、新品二次流通価格は高騰、最安値の時代よりも1.8倍程度となっており、この価格帯ではとてもお勧めできません。布教用に十台ほど買い占めておけばよかったと後悔する程で、またああしたカメラ開発を期待したいですね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の自衛隊行事無し

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【新年-防衛論集】“新しい八八艦隊構想”,防衛大綱F-35B導入決定と将来水上戦闘の変容(2)

2019-01-03 20:10:15 | 北大路機関特別企画
■海上戦闘の主軸は護衛艦
 前回はヘリコプターの行動半径がミサイルの射程延伸へ対応できていない現状を紹介しましたが、もう一つヘリコプターの運用限界の視点があります。

 現代の海戦はミサイルの射程が延々と延伸されていますが、艦隊戦闘が航空機の誕生により三次元で展開するようになった第二次大戦のミッドウェー海戦から今日に至るまで、敵艦隊の位置が判別できねば闇雲にミサイルを発射したとして命中しません。射程500kmの対艦ミサイルも索敵できなければマストが見渡す20km以遠は照準さえ出来ないのです。

 広域防空艦の普及、これが前回末尾に記したセンサーノード機としてのヘリコプターに課題です。広域防空艦とはミサイル艦、海上自衛隊のターターシステム艦やイージス艦のような長射程の対空ミサイルを搭載する水上戦闘艦です。中国海軍が特にこの分野で顕著で、射程120kmのHQ-9対空ミサイルを昆明級駆逐艦12隻、蘭州級駆逐艦6隻に搭載しています。

 防空巡洋艦というべき大型の055型駆逐艦が続いて少なくとも4隻が建造中で、こちらは満載排水量が13200tと海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型の19000tよりは大きくないものの、水上戦闘艦としては非常に大型です。広域防空艦へヘリコプターが対艦ミサイルの索敵任務で接近する事は非常に難しく、生き残るにはステルス性が必要だ。

 むらさめ型、たかなみ型、といった護衛艦に搭載されるSH-60J/K哨戒ヘリコプターは将来においても対潜能力において卓越した能力を維持する見通しですが、前述のセンサーノード機任務については、敵対する広域防空艦のミサイル脅威下では生き残る事が出来ません。するとミサイル脅威下で生存できるステルス性か、数百km以遠を索敵する能力が要る。

 F-35Bはこの重要な選択肢となり得ます。F-35Bを垂直離着陸可能なステルス戦闘機、と考えるならばそれはノートパソコンをワープロとしか使わない程に用途が限定されている。F-35BはAPG-81レーダーや光学情報のみで広範囲を索敵するEO-DASシステムを有し、F-35間は秘匿性の高いMADLネットワークにて広範囲情報を常続的に共有できます。

 新しい八八艦隊、しかし水上戦闘の主力は汎用護衛艦で、防空戦闘の中心はイージス艦です。その上で、護衛艦へ搭載される各種装備の長射程化は従来からの索敵や誘導手段にも世代交代を必要とさせるものであり、最大性能を発揮出来ない状態を放置する事は逆に税金の無駄と云わざるを得ません。しかしF-35Bを加える事でこの問題は解消されるのです。

 ヘリコプター搭載護衛艦増勢、勿論いずも型ほど大型の物でなくとも、ひゅうが型と同程度の船体であっても必要な能力は数機程度のF-35Bをセンサーノード機として展開させ護衛艦の各種ミサイルの能力を活かす事が目的、アメリカ海軍の様な空母航空団による航空打撃戦を展開する訳ではない故に充分です。建造費を抑え必要な数を揃える優先度の方が高い。

 現在の護衛隊群はヘリコプター搭載護衛艦を中心とする護衛隊とイージス艦を中心とする護衛隊という編成です。ヘリコプター搭載護衛艦と汎用護衛艦に汎用護衛艦とミサイル護衛艦という護衛隊が一つ。イージス艦と汎用護衛艦に汎用護衛艦と汎用護衛艦という編成の護衛隊が一つ。ヘリコプター搭載護衛艦にF-35Bが数機配置されればきわめて強力です。

 新しい八八艦隊構想では、護衛隊群を構成する全ての護衛隊へヘリコプター搭載護衛艦を配備するという提案です。言い換えれば、海上自衛隊が現在運用する対艦ミサイルの後継として、アメリカ海軍が採用するLRASMとVL-JSMの何れかと同型、もしくは同等の射程を有する対艦ミサイルを護衛艦へ搭載する事は、将来水上戦闘を行う上で必須でしょう。

 ひゅうが型護衛艦などヘリコプター搭載護衛艦から発進したF-35Bはステルス性能を活かし、敵広域防空艦からの探知を回避、一方で搭載するAPG-81レーダーの脅威電波標定能力により広域防空艦のおおまかな方向を自らは電波を出すことなく標定、EO-DAS分散型複合光学情報装置により正確な敵水上戦闘艦部隊の情報をやはり電波を出さず察知されず収集します。

 F-35Bの能力はMADLネットワークにより敵に把握されないまま、この目標情報をF-35B間で共有できる事で別のF-35Bへ共有すると共に母艦へ情報伝送中継を行う事が出来る点です。情報を受けたヘリコプター搭載護衛艦は護衛隊を構成する護衛艦4隻とリンク16データリンクにより目標情報を共有、各艦からLRASMが一斉発射され敵艦隊を無力化する。

 2020年代の海上自衛隊護衛隊の戦闘は概ねこうした展開となるでしょう。もちろん、F-35Bの索敵能力は敵水上戦闘部隊にとっても最大の脅威ですから、陸上基地や航空母艦からの戦闘機により我が方のF-35B無力化を図る事も考えられます。しかしF-35Bは哨戒機ではなく第五世代戦闘機である為、AMRAAM空対空ミサイルにより対抗する事も可能です。

 LRASMとVL-JSMという長射程の対艦ミサイルを搭載した際、汎用護衛艦の対艦ミサイルへセンサーノード機としてSH-60Kとその改良型を用いる護衛隊と、F-35Bを運用可能である、ひゅうが型、いずも型の全通飛行甲板型護衛艦を有する護衛隊とでは対艦ミサイル戦闘を主体的に展開する能力に非常な格差が生じます、前者は最大射程では撃てない。

 むらさめ型、たかなみ型、あきづき型、あさひ型、勿論上記条件は水上戦闘に限ったものです。ですから、F-35Bを欠いた場合に無力化と問われれば、P-1哨戒機の支援を受けられる海域では話は別ですし、そもそも水上戦闘以外の平時における警戒任務や人道支援任務と海賊対処任務に災害派遣任務には、ここまでの極限の能力を要求される事はありません。

 しかし、我が国周辺情勢を考えた場合、本格的な対水上戦闘が防衛出動において想定するならば、対艦ミサイル戦闘を展開する際、最大限の離隔距離を以て臨まなければ非常に困難な結果が我が国シーレーンへ及ぶ事もまた現実です。一方、従来の護衛艦よりも必要な乗員は多いヘリコプタ搭載護衛艦ですが、建造費はイージス艦よりも安価に建造できます。

 海上自衛隊自身も防空を第一に航空母艦を必要としているわけではないでしょう。航空母艦と云えば艦隊防空、という考えはイージス艦の配備と共に大きく転換しました。これは海上自衛隊だけではなくアメリカ海軍にも当てはまり、射程165kmのフェニックス空対空ミサイルを6目標に同時発射できた世界最高の艦隊防空戦闘機F-14トムキャットが良い例でしょう。

 アメリカ海軍ではイージス艦の大量建造と共に艦隊防空任務はF-14戦闘機からイージス艦へ移管、まだまだ耐用年数を伸ばし得たF-14は引退しました。海上自衛隊も戦闘機が必要と考えるならば、先に陸上基地から運用する戦闘機部隊を養成し、その防空掩護下で艦隊を運用すればよい、少なくとも20世紀一杯、護衛艦隊はそれほど本土から遠くへ行く想定ではありませんでした。

 ドイツ海軍は冷戦時代にトーネード攻撃機を運用し対艦戦闘に充てていました、トーネード攻撃機も一定の空対空戦闘能力があり、限られたドイツ海軍水上戦闘艦部隊の上空掩護も可能です。海上自衛隊も過去に高速対潜機としてF-4ファントムの検討を行っていますが、実現させていません。逆に言えば艦隊防空戦闘機の需要はこの程度だったといえます。

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【新年-防衛論集】“新しい八八艦隊構想”,防衛大綱F-35B導入決定と将来水上戦闘の変容(1)

2019-01-02 20:18:47 | 北大路機関特別企画
■護衛艦はるな除籍から十年
 皆様、重ねまして明けましておめでとうございます。新年特別企画としまして北大路機関は本日から“新年-防衛論集”を掲載してゆきます。

 はるな除籍、舞鶴基地にて初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、が自衛艦旗を返納してから今年で丁度10年となります新防衛大綱へF-35B取得が示された事で、改めて護衛艦隊へヘリコプター搭載護衛艦の増勢を行う提言を新年という事で改めて。はるな就役が1973年という事で海上自衛隊は洋上における航空部隊運用では年々実績を積み重ねてきました。

 護衛艦隊には四個護衛隊群が、横須賀基地、佐世保基地、舞鶴基地、呉基地へ配置されています。護衛隊群は護衛艦8隻より成り、護衛艦4隻から成る護衛隊を2個により群が編成されています。一つの護衛隊はヘリコプター搭載護衛艦中心、一つはイージス艦中心に。現在イージス艦等防空艦は8隻、そしてヘリコプター搭載護衛艦は4隻配備されています。

 かが就役と新防衛大綱、大綱には護衛艦へF-35搭載の方向性が示されました。2019年新年特別企画として毎年八月八日に特集を組みます“新しい八八艦隊”という護衛艦隊改編提案を改めて提示します。2019年という新しい年が護衛艦はるな除籍10周年を示すと共に初の全通飛行甲板型護衛艦として建造された護衛艦ひゅうが就役10周年を示します。

 新しい八八艦隊、これは現在護衛艦隊隷下に置かれている四個護衛隊群、これを構成する八個護衛隊について、全てヘリコプター搭載護衛艦を配備し、四隻のヘリコプター搭載護衛艦を八隻体制へ増強し、汎用護衛艦数隻とミサイル護衛艦で構成される護衛隊が確実にヘリコプター搭載護衛艦の哨戒機や哨戒ヘリコプター支援を受けられる体制の提案です。

 イージス艦8隻、ヘリコプター搭載護衛艦8隻、八八艦隊。八八艦隊とは旧海軍が大正時代に構想した高速戦艦八隻と巡洋戦艦八隻を基幹とする巨大海軍構想です。軍縮条約により実現しませんでしたが、長門型戦艦と同等の戦艦を毎年2隻建造するという当時の我が国経済力の限界を超えた構想で、実現したらば日米開戦は無かったでしょう、経済破綻で。

 88艦隊として海上自衛隊は、1980年代に護衛隊群の編制として護衛艦8隻と哨戒ヘリコプター8機からなる現実的な構想を着手、ヘリコプター搭載護衛艦を直轄艦として、艦隊防空に当るミサイル護衛艦2隻の護衛隊、汎用護衛艦2隻の護衛隊、汎用護衛艦3隻の護衛隊、これらを以て編成する構想は1996年にイージス艦みょうこう就役を以て完成しました。

 帝国海軍の八八艦隊構想のような大袈裟な防衛計画は必要ありません、しかし、新しい八八艦隊構想は、基本的にヘリコプター搭載護衛艦を4隻増強する、というものでありながら、昨年12月、つまり先月、閣議決定されました新防衛大綱に護衛艦へのF-35B搭載能力の付与という新事業により、極めて大きな意味を持つ事となります。そして必要でもある。

 かが竣工により海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦は護衛艦隊隷下四個護衛隊群全てに一隻配備されている定数の四隻全てが従来のヘリコプター巡洋艦型から全通飛行甲板型となりまして、全通飛行甲板型護衛艦の時代となりました。しかし、海上自衛隊護衛隊群は二個護衛隊群から編成されており、全てにヘリコプター搭載護衛艦が配備される訳ではない。

 ヘリコプター搭載護衛艦の増勢を行い現在の4隻体制から8隻体制へ事実上倍増させる。勿論、人員不足に悩む海上自衛隊にとり、一隻で護衛艦あさぎり型の定員よりも倍の乗員を必要とするヘリコプター搭載護衛艦を4隻増強する事は簡単ではありません、補給整備や基地機能の拡充を考えれば人員だけでも自衛隊全体で800名近い増員が必要でしょう。

 SH-60J/K哨戒ヘリコプターであれば、護衛艦隊を構成する汎用護衛艦にも全て各1機が艦載機として搭載されています。元々SH-60J開発当時は対潜ヘリコプターと呼称されており、主任務は対潜哨戒にありましたが、副次的に護衛艦のマストに搭載の各センサー延長線上に対艦ミサイルの目標索敵や通信中継という任務があり、これをセンサーノード機という。

 近い将来、現在進行形で進む艦載ミサイルの世界的な長射程化を前に、現在のヘリコプターを用いたセンサーノード機任務には回転翼航空機という巡航速度と航続距離に物理的上限が存在する区分では対応が困難となるのではないか。“新しい八八艦隊”を提案する背景にはミサイル長射程化時代に現在の護衛隊群編成と艦隊運用に限界があると考える為です。

 長射程対艦ミサイル、ハープーンミサイル等の後継装備は現在かなり長射程化が見込まれています。1980年代から自由主義世界に広く輸出されたハープーン対艦ミサイルは射程200km程度でしたが、流石に配備開始から40年前後というハープーンシリーズに近代化改修や改良型開発に限界が見え始めています。そこで後継候補の一つにLRASM等がある。

 LRASMはロッキードマーティンがアメリカ国防高等研究計画局と共に開発を進める将来の対艦ミサイルで、発射筒からの投射以外にMk.41VLSからの発射が可能です。Mk.41VLSは世界の標準的な垂直発射装置で、海上自衛隊でもイージス艦と護衛艦むさらめ型以降の汎用護衛艦に採用されています。LRASMの特色はその射程で実に800kmに達します。

 VL-JSMはノルウェーコングスベルグ社製の将来対艦ミサイルで、射程は300km以上、原型となるJSMミサイルはF-35戦闘機の兵装庫収納型ミサイルとしても開発されており、いずれにせよハープーンミサイルの射程を大幅に凌駕します。すると、センサーノード機にはこの長距離射程に応えるだけの索敵能力が求められ、ヘリコプターの限界が見えます。

 世界的な対艦ミサイルの長射程化、と理由を説明しましたが、これはアメリカ海軍とその友好国に限った事ではありません。中国製YJ-18対艦ミサイルは射程540kmとされ2020年代までにYJ-83を置き換えます。ロシア製SS-N-27/3M54E1カリブル対艦ミサイルはシリア内戦にて巡航ミサイル型が実戦投入されていますが、その射程は300km以上という。

 カリブルについて300km以上、という射程はその上限が明確に示されていません。これはロシアが輸出したカリブルが射程300kmに留まった為で、中距離核戦力全廃条約等の履行と共にその最大射程を意図的に公表していない為です。そこで世界はロシア軍のカリブル巡航ミサイルも射程300kmと見積もっていたのですが、シリア内戦により性能の一端が。

 SS-N-27/ 3M54E1ではなくシリア内戦にロシア軍が投入したものは対地型の3M14TEですが、カスピ海のコルベットから発射されたカリブルはイラン上空を経由しシリア領内の攻撃目標へ命中、その距離は2500km近く隔てていたのです。ロシアはソ連時代から長く大型で長射程の巡航ミサイルを重視していますが、この長射程は予想外の高性能でした。

 LRASMとVL-JSMがハープーンミサイルの後継という割には射程が大きく延伸している背景に、中国海軍のYJ-18とロシア海軍のSS-N-27/3M54E1カリブルの長射程に従来のミサイルではアウトレンジされ一方的に攻撃を受け続ける懸念がある為です。この為にセンサーノード機には更に長い戦闘行動半径が求められるのですが、もう一つ新しい問題も。この点については次回議論しましょう。

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