北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】光明院,禅寺の伽藍面と称される慧日山東福寺二十五の塔頭寺院にあってここは静かなのです

2022-06-22 20:00:01 | 写真
■京に夏がやってくる
 光明院に久しぶりの拝観へ歩み進めましたならば面持ちが変っていて驚きました。庭園の美しさはそのままなのですが中は前衛的に。

 東福寺、京都駅を一駅のところに東福寺駅がありまして、まあ京都駅といえば東本願寺が目の前に、新幹線ホームからは東寺、こう京都を代表する寺院に囲まれているところなのですけれども、一駅隣に、その御山の名を冠した寺院がしずかな広がりを見せています。

 慧日山東福寺、その創建は嘉禎2年こと西暦1236年に造営をはじめまして実に19年、建長7年こと西暦1255年に落成を成し遂げました寺院です。もともとここには藤原氏の氏寺が広まっていましたが、その氏寺はいまは小さく、しかし確固と東福寺駅前に佇んでいる。

 摂政九條道家、東福寺の山号は時の摂政九條道家が命名したもので、南都奈良にあって最大の規模を誇る寺院である東大寺と、最大の優美さを誇る興福寺、この二つの寺院から文字を用いまして、禅宗の寺院が京都最大の寺院となる事を願い冠せられた、といいます。

 夏がやってくる、いや京都に夏がやってきた、というべきでしょうか。蒸し暑い、熱さというものには色々とあるのですが、特に京都は気温もさることながら蒸し暑く、そして京都を探訪される方は寺社仏閣巡りをされる方多く、こうした場所は基本冷房がありません。

 光明院、東福寺の塔頭にあって少し南の方にありまして、紅葉の季節などに東福寺の通天橋が京都駅のコンコース並に混雑する頃合いにあっても、ふと拝観へ探訪しますと不思議と静寂さが保たれていまして、静けさを欲するときには歩み進める寺院の一つなのです。

 庵主さんに拝観料を納めて、とまあ日常の作法で拝観に臨もうとしますとなにかこう静かだ、いや静かということは求めているところなのですが、拝観の受付が静かというのは不思議なものでして、見れば竹筒が、大きな竹筒が三本立てられており、ここに収めるもの。

 東福寺も感染対策なのだ、こう痛感させられたところです。ポストコロナなんて言葉が曖昧にも時折耳に目にするところですが、しかしコロナ対策で2019年までは通年拝観していた寺院が門扉を固く閉ざし、2020年2021年を経て2022年を迎えてしまった御山も多い。

 JR東海の東海道新幹線ポスターにも選ばれたという庭園の情景、御本尊に手を合せて拝みました後に、涼しさをはこんでくれます庭園の、その広い縁に、ちょっとお行儀のわるい、それでも楽な座り方にてゆったりを眺める事としました、人も少ないので自由に過ごそう。

 庭園の静けさは、しかしそのまま保たされています。先日法隆寺がクラウドファンディングによりその維持費用の捻出を広く募った事に驚くとともに、しかしその報道では初日にほぼ費用を集める事が出来たという朗報が伝えられていたところですが、実際これは響く。

 光明院の庭園は躑躅がところどころに植えられた、波心の庭というものなのですが、こうしたものの維持費はやはりもととなるのは拝観料、つまりこの庭園を撮影する際に収めました竹筒へのお金がもととなっています、そして繰り返しますが、ここは静かなのです。

 禅宗庭園故に雑踏というものは相反するものですので静けさというものは勿論個人的には歓迎なのですが、庭師さんはじめこの庭園の維持には相応の費用が掛かっている事は間違いありません、すると大丈夫なのかなあ、この情景はどのようにして維持されるのか、と。

 なんとかなるさ、という楽観論で眺めるには現状はそう甘いものではないようですし、しかしもう駄目だ京都は滅亡だあ、というほどに悲観するほどでもない、ただただ、これは太平洋戦争以降としては初めての、厳しい状況になっていることは確かなのかもしれない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシアへのリトアニアの禁制品禁輸措置-カリーニングラードEU欧州連合のロシア制裁が引き起こす次の緊張

2022-06-22 07:01:49 | 国際・政治
■臨時情報-バルト海情勢
 核兵器禁止条約初の締約国会議がウィーンにて開幕されましたのと同じころ、ロシアバルチック艦隊司令部の置かれるカリーニングラードを中心に危機が醸成されている。

 ロシア軍ウクライナ侵攻に伴うEU欧州連合の制裁措置が、ウクライナに撃づいてロシア軍が侵攻する蓋然性が高いとされた地域に緊張を増大させています。ロシア大統領府のぺスコフ報道官は6月20日の記者会見において、ロシア飛び地であるカリーニングラードへ向かう貨物列車の一部を路線が通るリトアニアが通過拒否した問題を強く批判しました。

 リトアニア政府は6月18日現地時間0000時を以て、EU欧州連合禁制品を積載した貨物列車のカリーニングラード搬入を認めないとの通知をロシア政府へ行いました。注意すべき点は旅客列車の運行は維持されている点ですが、EU禁止している物資には建築資材やセメントが含まれ、貨物列車手続き等煩雑化します。ただ、海上航路は封鎖されていません。

 ぺスコフ報道官はリトアニア政府の貨物列車によるEU禁制品輸送禁止を受け、リトアニア国民に痛みを与える報復措置を行うと警告しました。これに対し、リトアニアのシモニテ首相は、カリーニングラードを封鎖している訳ではないと反論し全ての国際条約に違反している国からリトアニアが条約に違反したと非難を受けるとは皮肉だ、と発言しました。

 ロシア政府のリトアニアによる貨物列車制限を受けての事実上の報復措置検討ですが、重大な意味があります、それはリトアニアは元々、NATOがロシア軍侵攻の蓋然性が高い地域として、カリーニングラードとロシアの衛星国であるベラルーシに挟まれた地域にあり、その幅は100km、スヴァルキギャップとしてロシア軍の動向を警戒している地域です。

 カリーニングラードにはロシア第二の都市であるサンクトペテルブルクがあり、この都市の人口だけで540万、そしてロシアはNATOに囲まれている訳ではありませんが、カリーニングラードについては、バルト三国とポーランドのNATO加盟により囲まれているという状況にあり、ここにロシア軍が侵攻した場合は駐留NATO軍との戦闘開始を意味します。

 リトアニアによるカリーニングラードへのEU近世物資輸送禁止経済制裁ですが、ロシアが過剰反応を起こす懸念があります、それは二つの歴史によるもの。先ず一つはカリーニングラードにあるロシア第二の都市サンクトペテルブルクが、プーチン大統領の出生地である事、指導者の出生地は第二次大戦中のスターリングラードのような政治問題となる。

 サンクトペテルブルクはもう一つ、第二次大戦中のレニングラード包囲という苦い経験があります、繰り返しますがリトアニアは今回封鎖はしていません、しかし、第二次大戦中にレニングラードがドイツ軍に包囲され数十万の餓死者を出したという歴史があり、EU制裁にて過去の歴史を抉られる事で過剰反応を招く可能性がある、こうした認識も必要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】重装甲戦闘車に120mm砲積むリンクス120装甲機動砲とMLRSのER-GMLRS-AW精密誘導型

2022-06-21 20:21:37 | インポート
■特報:世界の防衛,最新論点
 戦車と火砲にミサイルという冷戦型の重戦力がウクライナ戦争により依然として地上戦を左右する事を突き付けられている昨今です。

 ドイツのラインメタル社はリンクス120装甲機動砲を発表しました、同社が開発したリンクス41装甲戦闘車の派生型です。リンクス41はラインメタル社がプライベートベンチャーにより開発した次世代の装甲戦闘車で、近接戦闘において大量の人員を輸送する装甲戦闘車に高い防御力を付与させたもの、その分基本重量は34t、最大重量は50tとなります。

 リンクス120装甲機動砲は、同社が世界に供給しているラインメタル120mm滑腔砲の改良型を搭載し砲塔にはレオパルド2A5を思い起こさせる楔形装甲を採用、レオパルド2主力戦車と共通化させているDM-11多目的榴弾を射撃可能で陣地攻撃や対装甲車両に対応します。車体重量や懸架装置の関係からかAPFSDS弾の運用能力有無は明言されていません。

 リンクス41装甲戦闘車はドイツ連邦軍では先行して開発されたプーマ装甲戦闘車が採用され連邦軍採用には至りませんでしたが、ハンガリー軍が採用しており、オーストラリアでも採用が有力視されています。リンクス120は一定程度の対戦車戦闘能力を有し、例えばロシアのアルマータシリーズのような装甲車両体系に発展させる事も可能かもしれません。
■ストライカーにジャベリン
 日本も国産のRWSを開発したのだからこうした派生型を01式軽対戦車誘導弾などと行わなければ。

 アメリカ陸軍は第4歩兵師団第2ストライカー旅団戦闘団のストライカー装輪装甲車にジャベリンミサイル搭載を実施しました。ストライカー装輪装甲車は12.7mm重機関銃を搭載したRWS遠隔操作銃搭を搭載していますが、従来のRWSでは重機関銃を搭載するのみで、戦車と遭遇した際にはミサイルを手に対戦車兵を下車戦闘させる必要がありました。

 CROWSジャベリン遠隔操作システムは、ストライカー装輪装甲車に搭載されているコングスベルク社製RWSとジャベリンミサイルを一体化させたもので、高度な暗視能力を持つRWSを通じてジャベリンを照準可能となり、1500mの距離で対戦車戦闘が可能です。第4歩兵師団第2ストライカー旅団戦闘団はコロラド州フォートカーソンに駐屯しています。
■ポーランドのエイブラムス
 ポーランドの隣国ウクライナでは戦車の不足が痛感されている中でエイブラムス戦車が遂に欧州輸出実現です。

 ポーランド政府はアメリカよりM-1A2SEP-V3主力戦車250両の輸出を正式許可を受けた。重量73.6tの巨大な戦車は60億ドルの商談だ。これは近年に高まるロシア軍脅威を受け、防衛力強化を進めると共にアメリカ製戦車導入による防衛力強化も見込む。ポーランドはNATO加盟国、北部でロシアの飛び地カリーニングラードと陸上国境が接しています。

 M-1A2SEP-V3主力戦車250両の導入要請は、同時にM-88A2戦車回収車26両、M-1110戦車橋17両、そしてM-830A1-HEAT弾13920発と新型のM-1147先進MP弾6960発、M-865訓練弾9168発なども要請しています。敵戦車の装甲を貫徹させるAPFSDS弾は要求されていませんが、M-1A2SEP-V3主砲はポーランドのレオパルド2戦車と同設計です。

 戦車国産能力を持つポーランド軍はポーランド製PT-91戦車232両、そして冷戦時代に導入したソ連製T-72戦車382両、ドイツより中古取得したレオパルド2A4やレオパルド2A5など249両を保有していますが、T-72戦車の旧式化が深刻です。ポーランドは独自にPT-16主力戦車を開発していますが、実績と同盟関係からM-1A2SEP-V3が選ばれたのでしょう。
■ハリコフでT-64近代化改修
 開戦に間に合ったのは南鐐なのだろう。

 ウクライナ陸軍はロシア侵攻直前、ハリコフ装甲製造公社にてT-64戦車近代化型T-64BV戦車の評価試験を開始した。T-64戦車は複合装甲や自動装填装置など革新的な技術を多数盛り込んだものの先進過ぎた点が稼働率や信頼性に影響した事で知られる。しかしハリコフ戦車工場にて量産されていた事からソ連崩壊後独立したウクライナでは主力戦車である。

 T-64BV戦車は、ソ連時代のT-64戦車と比較し暗視装置を一新、車体位置ナビゲーションシステムを追加搭載し通信機材もNATO規格の新型へ換装しており、対戦車火器対策へ樹脂製追加装甲し稼働率に影響を及ぼしていた燃料系統等も更新している。ウクライナ軍は先行して100両以上を前型のT-64BM仕様に改造しているが、BVは更なる改良型である。
■ハンガリーのギドランMRAP
数を揃える装甲車の重要性という印象だ。

 ハンガリー軍はトルコ製ギドラン耐爆車両40両の取得と100両のライセンス生産を行う、これは3月21日にハンガリーのマロス国防次官が発表したもので、40両は既に引き渡されていて、ライセンス生産については今後行うとのこと。このギドラン耐爆車両はNurolMakina社が開発したもので、製造費用を抑えた一方各種派生型を開発しています。

 ギドラン耐爆車両は四輪駆動、兵員輸送車を基本型としていて指揮通信車や対地雷簡易爆発物処理車輛に通信車とCBRN偵察車と自走対戦車ミサイル型や自走近距離防空車輛、レーダー車輛や長距離偵察車輛に電子戦車輛など、この種の提示は単に積載できるか詰めるものを列挙しているだけのものが多いのですが、多種多様な任務に対応するとしています。
■UAE,ホーク改良へ
 ホークミサイルは生産終了していますがミサイルそのものが大型である為に様々な改良が可能となっている。

 アラブ首長国連邦軍はホークミサイルなど地対空ミサイルに関する近代化改修と予備部品契約でアメリカとの間に6500万ドル規模の有償軍事供与契約を結んだとのこと。関連装備はホークミサイルに加えてペトリオット地対空ミサイルと弾道ミサイル迎撃用のTHAAD最終段階高高度迎撃ミサイルがふくまれていて、アメリカ国務省の認可待ち。

 HAWK,ホーミングオールウェイキラーことホークミサイルは初期の地対空ミサイルは運用開始から半世紀城が経ていますが、ミサイル本体が大型である事から様々な電子機材の追加搭載が可能です、しかし運動性能など旧式である事も事実で各国では代替装備への置き換えが進みます。一方、動きの鈍い長距離ドローン攻撃等へは有効なのかもしれません。
■レーザーウォールシステム
 機関砲やミサイルと違いレーザーは電源さえ確保出来ていれば連続射撃の冗長性が高いものなのです。

 イスラエルはアイアンドームミサイル防衛システムの後継としてレーザーウォールミサイル迎撃システムを今後一年間で開発する、これはイスラエルのベネット首相が2月1日に記者会見の場において表明しました。レーザーウォールとはその名の通り、高出力のレーザー砲によりロケット弾等の攻撃を迎撃するという先進的な防衛システムを示します。

 アイアンドームミサイル防衛システムはイスラム過激派が多用するカッサムロケットなどの同時飽和攻撃に対抗して射程15kmのミサイルを20連発の迎撃ミサイル発射装置3基をに搭載し、同時多数のロケット弾攻撃をミサイルのドームにより人口密集地への落下を阻止するものですが、一発当たり費用が9万ドル、連射の際の負担が指摘されていました。

 レーザーウォールミサイル迎撃システム、レーザーによる巡航ミサイルや砲弾の迎撃は世界各国で一定の技術的成果が挙げられていますが、電気代だけで対応出来る為、一回の照射に数百ドル程度の支出で対応できるとしています。各国では技術実証から実用化まで進む例は中々無く、レーザーウォールが実現した場合はイスラエルが世界初となるでしょう。
■フランス,HK416調達
 自衛隊もMINIMIのようにHK-416をライセンス生産する選択肢はあったのかもしれない。

 フランス陸軍は2022年取得のHK-416F小銃10000丁を受領したとのこと。フランス軍は1979年に採用されたFA-MAS小銃の後継としてドイツ設計のHK-416小銃を独自仕様HK-416Fとして正式採用しており、2017年から2028年までの長期間に渡り9万3080丁のHK-416Fが配備される計画である。なお、FA-MASは40万丁が製造されていた。

 HK-416F小銃はフランス軍の整理再編を受け9万3080丁という調達数に収斂している。計画では3万8505丁を標準型とし5万4575丁をカービンモデルとして調達、標準型については40mm擲弾筒を装着するとのこと。H&K社との契約金額は1億6800万ユーロでありドル換算では1億7700万米ドル、一丁当たりは1902ドル、23万円ほどとなっている。

 HK-416小銃はドイツのH&K社がコルト社のM-4A1カービン改良事業として開発したもので、砂塵や漏水に脆弱性の在ったAR-15方式の装填機構をAR-18と同系統としており、命中精度の高さからアメリカ海兵隊では重銃身型をM-27ISR分隊支援火器として採用している、難点は取得費用の高さであるが近年は量産効果により取得費用も低下している。
■フィンランド,G-MLRS
 自衛隊はMLRSをどんどんと削減しているがウクライナ戦争でそろそろ転換しないとまた新品を大金積んで購入することに。

 フィンランド軍はMLRSの精密誘導型ER-GMLRS-AW導入計画を発表しました、これは同国のカイコネン国防相が2月10日に発表したもので、既に2016年に導入しているMLRS用のGPS誘導弾薬M-31がありますが、今回導入するのはその射程延伸型、従来のM-31ロケット弾は射程は80kmですが今回導入の改良型ER-GMLRSは135kmとなる。

 フィンランド軍がMLRSを採用したのは2006年ですが、ER-GMLRS-AW導入計画はフィンランド軍のMLRS長期運用家角の一環としており、改良型弾薬の導入によりMLRSを2050年代まで運用継続する構想とのこと。ER-GMLRS-AWはロッキードマーティン社が製造しており、アメリカ国務省が許可すれば2025年にもアメリカから納入される計画です。
■台湾,ペトリオット改良
 台湾は大量の短距離弾道弾で狙われている為に防空を重視していますが准中距離弾道弾の増加は九州南西諸島でも余所事ではない。

 中華民国台湾はペトリオットミサイルシステムの能力向上へアメリカと1億ドル規模の契約を締結しました。これはPAC-3システムの更新とミサイル本体の保管期限後年間延長に関する本体整備、システム管理など、IESPペトリオット国際エンジニアリングサービスプログラムとして各国に採用されているペトリオットミサイルの能力維持支援一環です。

 ペトリオットミサイルシステムの能力向上は中国とアメリカとの係争問題を思い起こさせますが、アメリカの1982年台湾関係法に基づくもので、当時のアメリカレーガン政権は、台湾への武器売却へ大陸中国と協議しない事を明示しています。台湾は多数の中国短距離弾道ミサイル脅威に曝されており、ペトリオットミサイルは重要な防空装備となっている。
■ブッシュマスターにNSM
 NSMについて痛感するのはシステムをかなり小型化しているという点で自衛隊のSSMも今後分散運用を行うならば二発程度を高機動車から運用する検討も必要か。

 オーストラリアのタレスオーストラリア社はブッシュマスター耐爆車両にNSMミサイルを搭載します。これはコングスベルクディフェンスオーストラリア社とともに進めるオーストラリア軍のLAND4100PHASE2として進められている地対艦ミサイルもので、コングスベルク社が開発した海軍ストライクミサイルNSMを装甲車に搭載するというもの。

 ブッシュマスター耐爆車両は陸上自衛隊にも配備されている10名乗りの装甲車両で、タレスオーストラリア社は操縦席を除く後部部分へNSMミサイル発射器2基を搭載する方式、NSM発射器は各400kgであり、充分搭載可能です。NSMは射程350kmといい、装甲車に搭載し、発射装置を分散配置する事で有事の際の生存性を高める狙いがあるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ戦争の長期化様相濃く停滞するウクライナ空軍再建-ロシアの長期戦体制を前に今後の大きな課題

2022-06-21 07:01:37 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 開戦直後の状況を考えれば今回の心配はかなりの楽観論といえるのかもしれませんが。

 ウクライナ軍は開戦後しばらく、ロシア軍に対抗する為の空軍力を要請していました、具体的にはウクライナ空軍が運用しているMiG-29戦闘機やSu-25攻撃機の供与で、特に航空優勢確保に必要なMiG-29は緊急に必要としており、時間を要しましたが第三国のMiG-29が提供されたといわれます。ただ、NATOにはもうこれ以上、戦闘機は出せない。

 ジャギュア攻撃機やアルファジェット軽攻撃機が現役であれば、もう少し事情は変わったのでしょうか。いや、具体的にはNATOにはF-35にEF-2000タイフーン,F-16とミラージュ2000にラファールといった戦闘機は多数が運用されています、しかし、ウクライナ空軍が運用できる機体となりますと、これは大きく事情が変ります、機種転換が必要な故に。

 アルファジェット軽攻撃機であれば練習機と機体設計が共通です、丁度自衛隊のT-4練習機とよく比較された機体なのですが、自衛空対空戦闘能力と共に練習機転用の攻撃機としては比較的高い対地攻撃能力を有していて、冷戦時代にドイツ連邦軍などは重要な近接航空支援用機として重宝していました、イギリスのホーク練習機も同様の運用が可能な機体だ。

 ジャギュア攻撃機、これもT-2練習機開発の際には似ていると指摘されましたが、ジャギュアは草地など応急滑走路から運用可能で超音速飛行能力を有しており、中距離空対空ミサイルにより遠方の戦闘機と戦う視程外交戦能力は有していませんが、短射程空対空ミサイルの運用能力や、空対艦ミサイルの運用能力など、一段上の攻撃機として運用可能です。

 しかし、冷戦後はNATO各国が練習機を戦闘に転用する程の追い込まれた状況は想定する必要なくなったとして、運用を終了しているのですね。無論、ウクライナ空軍の要員でも、練習機転用の攻撃機ならば、いちから訓練しても多少短期間で操縦できるようになるとはいっても、戦闘機操縦要員は第二次大戦中の日本の予科練のように簡単にはまいりません。

 危惧するのは、ウクライナ戦争は長期化の様相を見せている、いや当初の数日間でという事を考えれば間もなく四カ月を迎える現段階で充分長期化と云われるでしょうが、ロシアは日欧米制裁に対応し経済再編を続けており、エネルギーと食糧を自給できるロシアは年単位で一年二年戦い得る、すると、ウクライナの空軍力は何れ問題となると考えるのです。

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【防衛情報】レオパルド2A7V完成とACV両用戦闘車新情報,SB-1複合ヘリコプター試作機やエポカ無人砲塔

2022-06-20 20:02:50 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 ロシア軍ウクライナ侵攻を受け各国では陸上防衛の再建が課題となりましたが今回は陸上防衛装備に関する11の話題を。まず90式戦車と形状は似ているが遥かに性能を追い上げようとするドイツの話題から。

 ドイツ連邦軍は最初のレオパルド2A7V主力戦車を受領しました、受領したレオパルド2A7V戦車は5両で、配備されるのは第9装甲旅団で、第1装甲師団隷下にあるとともに平時には装甲教導旅団としてニーダーザクセン州のムンスター装甲学校隷下となっていますが、同時に連邦軍EK介入戦力として有事には緊急展開部隊としての役割も担っています。

 レオパルド2A7V戦車はレオパルド2A7の近代化改修型で、C4Iデータリンクシステムを改良するとともにエンジン停止時にもデータリンクシステムを稼働させるためのAPU補助動力装置、そして砂漠などの地域への派遣を見込んで車内エアコンディショナーを追加搭載しています、連邦軍ではレオパルド2A7V戦車を2023年までに104両改良する計画です。
■SB-1デファイアント
 UH-60ブラックホークヘリコプターの時代というものもそろそろ後継機が模索されているようですが自衛隊はUH-1の後継機がまだ412という時代ですので置き去りにされているような。

 アメリカ陸軍向けへ開発されているSB-1デファイアント複合ヘリコプター試作機は初期の評価試験を開始しました。SB-1デファイアントはロッキードマーティン社とシコルスキー社及びボーイング社の企業連合が開発する二重反転ローター方式を採用した複合ヘリコプターで、従来の観測ヘリコプターより遥かに速い巡航速度を有する点に特色があります。

 FLRAA長距離強襲航空機、アメリカ陸軍では従来のOH-58観測ヘリコプターなどの航空機では将来の戦闘において生存性を確保できないとしてヘリコプターの速度を大幅に向上させる計画を進めています。そして偵察任務とともに第一線への小規模なヘリボーン強襲任務、必要に応じて対戦車ミサイル等を搭載し、強襲任務に充てる事も想定した航空機だ。

 SB-1デファイアントは、革新的な航空機ではある一方、機体規模はUH-60ブラックホークヘリコプターと同程度に抑えており、一方で巡航速度は236ノットを記録しています。今回の評価試験では60度の角度でのバンクターンや急制動といったヘリコプター機動が試験され、これによりMV-22オスプレイのような可動翼機には無い飛行特性を有しています。
■ACVの海兵隊製造契約
 装輪装甲車の巨大化は今に始まった事ではないのですがそれでもあのAAV-7よりも車体が大きいのですから大丈夫なのかと思ってしまう、それくらいなければ洋上を航行できないのでしょうがね。

 アメリカ海兵隊はACV水陸両用戦闘車第二期生産33両についてBAE社と1億6900万ドルの正式契約を結びました。ACV水陸両用戦闘車両はイタリアのイヴェコ社の開発したスーパーAV装輪装甲車を海兵隊仕様としたもので、全長7.9mに重量は最大24tの12名乗り、海兵隊はACVを装軌式AAV-7両用強襲車輛の部分的な後継として位置付けています。

 BAE社はバージニア州スタッフォードのBAE向上において生産及び予備部品供給を実施していて、2020年に先行生産としてACVを36両、そして2021年にもACVを36両受注しており、今回契約した基本輸送型とともに派生型としまして、ACV-C指揮通信車と30mm機関砲塔搭載で偵察及び火力支援型のACV-30の試作作業も同時に進めているところです。

 ACV水陸両用戦闘車は装輪装甲車であり、AAV-7両用強襲車のような沿岸部のサンゴ礁踏破など、厳しい地形での運用を想定していません。そして水上浮航速度も決して高くはないものの、アメリカ海兵隊ではAAV-7の運用が上陸作戦としてではなく汎用装甲車両として多用されており、敢えて上陸作戦能力よりも広い汎用性を重視した装備となっています。
■BMP-3に57mm機関砲
 この報道はロシア軍のウクライナ侵攻より前ですので現在の経済制裁と戦訓蓄積で果たして火力だけの装甲戦闘車はどう評価されるのでしょう。

 ロシア軍は57mm型のエポカ無人砲塔搭載BMP-3装甲戦闘車派生型B-19戦闘車両を発表しました。これはニジニノヴゴロド州にて2021年12月に実施されたザーパト2021演習において展示されたもので、BMP-3装甲戦闘車の近代化改修型という位置づけです。これは全面的な改修ではなく量産が遅れるクルガネツ25装甲戦闘車までの繋ぎともされる。

 LSHO-57機関砲、エポカ無人砲塔は57mm高射機関砲を地上型として転用した新世代の大口径機関砲LSHO-57を搭載しており、加えて9M113コロネット対戦車ミサイル発射装置を備えています。これによりB-19は対戦車戦闘能力を持つと共に、コロネットにはサーモバリック弾頭型があり、陣地攻撃や市街地戦闘などで使い分ける事が可能となるもよう。

 BMP-3装甲戦闘車は元々火力支援用の100mm低圧砲と対装甲用の30mm機関砲を備えていますが、57mm機関砲は火力支援にも対装甲戦闘にも十分威力を有していると共に、TOW対戦車ミサイルやスパイクER対戦車ミサイルをアウトレンジ攻撃可能となっている。BMP-3装甲戦闘車は製造が2022年内で完了するが、当面は近代化で勢力が維持される。
■進化するカールグスタフ
 スマート照準器を装備しますと小銃でさえ驚異的な超距離や遠方の小型無人機を叩き落とせるようになる。

 スウェーデンのサーブ社はカールグスタフ84mm無反動砲にAFCD-TI/Senop高度火器管制暗視装置搭載型を発表しました。カールグスタフ84mm無反動砲は携帯可能な大砲としてスウェーデン軍は勿論、アメリカ陸軍や陸上自衛隊など世界中で運用されていますが、その照準装置は光学式で、戦車等移動目標への命中には練度を必要とする点が難点でした。

 AFCD-TI/Senop高度火器管制暗視装置は重量1.5kg、レーザー測距装置と目標識別能力により戦車等の移動目標へは未来位置を予測し偏差を射手に伝え正確な遠距離射撃を可能とする他、暗視装置により昼夜に渡る戦闘に対応するほか、地域制圧に際しても見越し角を射手に補正表示させ、従来の84mm無反動砲よりも遠距離を、正確に火力支援が可能です。
■韓国のMPUGVロボット
 日本は一般乗用車の無人運転技術で難渋していますが韓国の様にまず軍用の戦場と云うぶつけても文句はあまり来ないが破壊されても運転手が生命に影響しない分野で技術蓄積する選択肢は必要とおもう。

 韓国軍にMPUGV無人多目的車両が現代ロテムより納入された。MPUGV無人多目的車両はノーパンクタイヤ六輪の装輪型で電気駆動式、インホイールモーターを採用している。韓国軍が歩兵斥候任務や前哨陣地防御戦闘、負傷者後方搬送や前線輸送任務の一部をロボット化する構想の下で進められたもので、無人自律運用と遠隔操作が可能となっている。

 MPUGV無人多目的車両は4km先までの遠隔操作を想定し昼夜型TVカメラを搭載、長距離機動では輸送車を用いる。車体そのものの速度は30km/h、車体には200kgの貨物を積載可能であるほか、監視装置には7.62mm機銃などの遠隔操作銃搭を兼ねる。この性能ならば長い国境非武装地帯の機動監視はもちろん、戦車部隊に随伴し斥候も可能であろう。
■ギリシャM-1117中古取得
 M-1117装甲警備車はまあいうなれば軽装甲機動車をキャブオーバー型にしたような使いやすい警備用装甲車です。

 ギリシャ軍はアメリカ軍余剰装備のM-1117装甲警備車44両を受領しました。ギリシャ軍は限られた予算での防衛力整備へアメリカ軍余剰車両1200両の導入計画があり、最初の納入車両は在独米軍第21戦域支援軍団の保有車両が供与されています。残る車両はカリフォルニア州のシエラ陸軍補給処より輸送され、その輸送費用は全てギリシャが負担します。

 M-1117装甲警備車は陸軍憲兵隊用の警備用装甲車で四輪駆動、主な用途は基地や空港及び交通要所等の警備を念頭に開発されており、装甲ハンヴィーなどでは能力不足となるゲリラ攻撃に対処すべく軽装甲車であるV-150コマンドーを拡大改良した装備で全備重量13.4t、乗員1名と憲兵3名が乗車可能であるとともに12.7mm機関銃塔等を搭載しています。
■スリング120mm自走迫撃砲
 自衛隊では対戦車ミサイルや迫撃砲は車上から撃たずに降ろして射撃していますがそろそろ陣地変換に求められる時間短縮の需要に対応出来なくなっている印象が。

 イスラエルのエルビットシステム社は画期的なスリング120mm軽量自走迫撃砲システムを発表しました。現在もっとも機動力を有する重迫撃砲はフランスのトムソン社が開発した120mmRT重迫撃砲で砲架を車輪とすることで機動力を確保しています、しかしスリング軽自走迫撃砲は小型車の一部を迫撃砲とする事で素早い陣地変換と射撃を可能とした。

 Sling120mmMSPスリング軽自走迫撃砲はピックアップトラックや軽野戦車輛の後部に搭載可能、車体と一体化させており、ヘリコプターによる空輸が可能、機動時は砲身を背負い式で搭載、射撃時は砲床板ごと着地させ停車から30秒乃至60秒で射撃準備を完了、射程は7kmで毎分16発の射撃が可能,射界は後方に掛け110度を操砲可能となっています。
■ACV海上訓練を再開
 ACVの話題ですがアメリカの場合はAAV-7の海没事故が在りましたから慎重になるのは仕方ないですよね。

 アメリカ海兵隊はACV水陸両用戦闘車の海上訓練を再開しました。これは2022年1月8日に海兵隊第13MEU海兵遠征群が訓練映像を発表したものです。これまで一時的に海上訓練が中止されていましたが、その要因として海上曳航装置に関する問題が確認され、海上において動力喪失した場合に安全に曳航を受けられない欠陥が判明したためとのこと。

 ACV水陸両用戦闘車はAAV-7両用強襲車の後継車両として位置付けられており、AAV-7は全没事故を発生させたこともありました。ACVの問題は曳航した際に波浪で車体が海上で転覆する危険が在ったといい、今回の訓練再開はこの問題が是正された事を意味します。ACVは既に日米共同訓練へも参加しており、また各種派生型の開発も進められています。
■トルコZMA-15装甲車
 あの砲塔で安定するならば日本も偵察警戒車に75mm砲を搭載出来そうな勢いですが。

 トルコのFNSS社はM-113-FMC装甲車の近代化改修ZMA-15一号車を発表しました。トルコは1989年から2003年までの間にアメリカのM-113装甲車を2000両以上ライセンス生産しており、その大半をFMC仕様という中空装甲増加装甲装着と機銃用防盾追加型として生産しており、一部の車体には25mm機関砲塔を追加し簡易装甲戦闘車としています。

 ZMA-15改修は2019年12月にトルコ陸軍が決定した近代化改修計画で、トルコのアセルサン社が独自開発した25mm機関砲搭載のNEFER無人砲塔を搭載、レーザー検知装置や乗車戦闘用の車体側面近距離暗視装置等が追加されました。野心的な計画ですが、M-113の車体に対しNEFER無人砲塔はコミカルなほどに大型であり、今後の展開は関心事です。
■インドK-9自走砲増強へ
 ロシア製兵器依存度の高いインドではK-9自走砲への価格も性能もという好評からK-9派生の軽戦車を希望しているといい、日本から見れば防衛産業の生き残り方を考えさせられるようです。

 インド陸軍は中印国境地域での高い機動実績から韓国製K-9自走榴弾砲の増強を決定しました。K-9は2012年からロシア製2S19自走榴弾砲と競合を経て採用されており、特にインド高山地域での1000kmの機動試験では2S19は完走する事が出来ずK-9に決定、52口径155mm榴弾砲はインド製砲弾にも対応し、その長射程も評価されているとことです。

 K-9バジュラとして導入した韓国製自走榴弾砲は100両を取得、火器管制装置等50%をインド軍仕様としているとし、2021年3月から4月にかけてヒマラヤ山脈に繋がる峻険な中印国境地域においてインド軍の想定を上回る良好な機動実績を発揮しています。新たに取得するK-9は200両とされ、これにより10個砲兵連隊へK-9を配備するとのことです。

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ロシア太平洋艦隊16隻が日本周辺で特異な行動-海上自衛隊が警戒監視,その意図とは-極東地域での緊張

2022-06-20 07:02:00 | 防衛・安全保障
■臨時情報-極東ロシア軍動向
 ウクライナでの戦闘において無差別砲撃を加えるロシア軍ですが、一方で防衛省発表によれば極東地域においても気になる動きがありました。

 ロシア海軍の行動が活性化しています、野島崎沖の太平洋上にロシア海軍艦艇7隻が集結、これは先に津軽海峡を航行した艦隊が再集結をおこなったものとみられています。コルベットと駆逐艦、最大の艦艇は近代化改修を完了させたウダロイ級駆逐艦と従来型であり、今回は太平洋艦隊旗艦であるミサイル巡洋艦ワリャーグの行動は確認されていません。

 6月15日には、ウダロイⅠ型大型対潜艦の艦番号543と548、シュテグレチⅡ型フリゲイト艦番号337とシュテグレチ級フリゲイト艦番号333及び335と339、マルシャルネデリン級情報収集艦の7隻が襟裳岬南東280kmの海域を航行、そのまま17日には犬吠埼南東180kmの海域まで南下し、護衛艦こんごう、ゆうだち、が警戒監視任務に当たりました。

 6月17日にはコルベットを旗艦とし、ミサイル艇6隻を中心とした9隻の艦隊が宗谷岬北方40kmの海域を行動している様子が八戸のP-3Cにより確認、グリシャⅤ型コルベットの艦番号390、タランタルⅢ型ミサイル艇の艦番号916と921、946と971及び978と991、アルタイ級補給艦とオビ級病院船からなり、ミサイル艇わかたか、がその警戒に当たっています。

 艦隊の規模としては、ソ連時代の太平洋艦隊年次演習と比較した場合でもかなり小規模です、当時の巡洋艦が並び原潜が多数展開する訓練とは比較になりません。ただ、シュテグレチ級コルベットにはカリブル巡航ミサイル運用能力があり、ロシアのプチン大統領はウクライナ侵攻に反対する各国を核で恫喝、時期が時機だけに注視せざるを得ない状況が。

 デンマーク海峡においてもロシア艦隊の行動は活性化している、今回注視すべきは日本近海だけではなく欧州方面のロシア艦艇行動も活性化している点で、黒海艦隊の行動はウクライナ戦争に関連する行動ですが、NATO諸国の周辺海域でも、特にデンマークでは二度にわたる領海侵犯も発生しています、それも日本周辺の行動と同時期に並行して、です。

 太平洋艦隊とバルチック艦隊、この行動が同時期に活性化した理由は一概には判断できませんが、可能性としてウクライナ戦争への派遣部隊増強を背景に陸軍や空挺軍部隊の引き抜きが予想以上に拡大しており、引き抜いた陸軍のポテンシャルを補うために海軍の行動を活性化させている、今回のロシア海軍の行動にはこうした背景が想定できるでしょう。

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【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【08】吠えるファントム機動飛行を見上げるイーグル列機(2012-10-20)

2022-06-19 20:00:23 | 航空自衛隊 装備名鑑
■筑波山とF-4ファントム
 戦闘機は見上げるのも非日常ですが歴史や設計に関心を持ちますと過去の写真も輝いて見えてくるものです。

 筑波山を借景に離陸するファントム、進路筑波山へ、という土浦や霞ケ浦に予科練が在った時代には遠景に見える筑波山に向けて練習機を飛ばしたという。百里基地もたどれば海軍百里ヶ原飛行場なのですが、筑波山と戦闘機という取り合わせは妙にこころしみます。

 空母艦載機として設計されたファントム、ファントムもE型は空軍仕様となっていますので艦載機というのは原型のことなのだと留意は必要なのですけれども、筑波山と空母艦載機という取り合わせも、若鷲たちの戦後までの苦闘を含め、何か感じ入るものがあります。

 ファントム、昨年2021年にとうとう航空自衛隊からは退役しまして、いやギリシャ空軍と韓国空軍に若干数残っていると撮影へ海を渡った方もいるとは聞きますが、それにしても基本設計の優秀さ所以とはいえ、よくぞ古い設計の機体が2020年代まで耐えた、と思う。

 自衛隊がファントムを採用した際には競合機種としてF-111戦闘爆撃機や、あとはミラージュF-1にBAeライトニング等が候補となりましたが、F-111は空中戦が出来ませんしミラージュF-1は本命超音速VTOL機開発失敗の妥協案、実質F-4で決まっていたよう思う。

 F-4戦闘機は1950年代の戦闘機ですが、設計としては合理的で、海軍の空母艦載機として設計されつつ空軍へ採用されるかを競合させた当時、空軍が推進した全自動戦闘機というべきF-106と選定した結果、無理に一名の操縦士で操縦させるF-106には限界があった。

 F-106戦闘機が同時のコンピュータの技術でワンマンオペレーションを実現しようと苦闘したのに対し、F-4は一人が無理ならば二人で、とレーダー管制士官を操縦士の後ろに乗せるという複座方式を採用し、結果的にF-106を凌駕する性能を発揮することができました。

 イーグルの時代へ。このファントムに続いて航空自衛隊はF-15イーグルを選定します、競合機種としてF-14トムキャットが検討され、かなり良い線に行ったといわれますが取得費用と運用費用の面でF-14は対象から脱落したともいう、そしてイーグルの時代が来ます。

 F-15,この戦闘機を2020年代の視点から回顧しますと、ステルス性は無いが爆撃機並に積める、ということで、戦闘機業界のピックアップトラックとしてアメリカはF-15EXをイーグルⅡとして新型機扱いで採用、対してF-14は2006年に完全退役しているのですね。

 F-15の原点は第二次世界大戦中にアメリカ陸軍航空隊で大活躍したP-51ムスタングにあるといわれます。P-51戦闘機はスピットファイアやゼロ戦ほど小回りは利きませんでしたし、ドルニエや疾風のような大口径機関砲を積むわけでもありません、しかし強かった。

 ムスタングは航続距離が3000km以上あり戦闘行動半径は1400kmと、ゼロ戦の航続距離3400kmに、なにしろゼロ戦は航続距離と戦闘行動半径に徹した戦闘機、すなわち爆撃機に随伴でき、単独でも敵対空域へ進出し制空権を奪ってくるという運用が可能な水準でした。

 P-51ムスタング、エンジンはピッカードV1650-9で出力2200hp、頑丈な機体を自由自在に繰る出力を有していました。そしてなにより洗練された品質管理とともに信頼性を誇り、戦闘機を評価する機動力や行動半径に打撃力や稼働率と操縦性など五項目があるとすれば。

 戦闘機は全てで最強ではないが、複数項目であらゆる同世代機を圧倒できる性能を有していたという。一方、P-51は優れた汎用性を有し、欧州ではロケット弾を搭載し対地攻撃機としても大活躍し、例えば、戦車戦では強力なドイツ軍戦車に致命的な威力を発揮します。

 空軍万能論ではありませんが、戦闘機の戦闘爆撃機としての性能、これは何故か続くF-86セイバー戦闘機にも継承され、制空権確保よりは護衛戦闘機として、また発展型とされるF-100スーパーセイバーがより設計思想で鮮明ですが対地攻撃攻撃能力が重視されます。

 このための低翼面荷重の設計が実は空中戦に大きな威力を発揮しますが副次的なものであり、アメリカ空軍は本土防空用の、ジーニ空対空核兵器を搭載するような、迎撃戦闘機以外の機体を対地攻撃機へと発展してゆき、これは同時に制空戦闘機の根本を揺さぶる事に。

 戦闘機の機動性という本来概念が忘れられるとは言い過ぎですが、筆頭の要求から徐々に多用途という言葉が取って代わるようになる。F-100スーパーセイバー、続いてF-101ブードゥーやF-102デルタダガーとF-106デルタダートは迎撃専用機ですが、問題はこちら。

 F-105サンダーチーフなどは戦闘爆撃機とはいわれるものの戦闘の名を関することができるか疑問符が、ただ相応に空中戦で活躍はあるが、重い鈍重な戦闘機となっていました。極めつけはF-111アードバーグで、これは戦闘爆撃機とはいうものの、実態は別物です。

 F-111アードバーグ、可変翼と並列複座の操縦席を持つ巨大な戦闘爆撃機です。本来はB-52爆撃機など戦略爆撃機を運用する戦略空軍が爆撃機として採用するほどに爆撃性能が重視された機体となります。これで良いのか、戦闘機部隊のもつ危機感は当然といえましょう。

 ロバートマクナマラ。F-111の生みの親にフォード自動車社長を務め、その経営合理化手腕を当時のケネディ大統領に見いだされ国防長官となった政治家がいます。マクナマラ国防長官は、合理化視点から海軍と空軍が別々の戦闘機を運用している点が無駄に見えてゆく。

 海軍と空軍の戦闘機、この機種の統合を図ることで国防費の最適化をはかるようにします。実際、第二次大戦中であれば小型のF8Fベアキャットと大柄のP-51ムスタングを統合する案などはでなかったのでしょうが、空母艦載機というものはじょおに大型化してゆく。

 アメリカの空母はミッドウェー級、フォレスタル級、原子力空母エンタープライズ、と艦載機を運用できる空母そのものが大型化しています。しかし、艦隊防空を第一とする戦闘機と、相手国上空に乗り込んで迎撃機をすべて打ち落とす制空戦闘機とでは、用途が違う。

 艦隊防空と制空戦闘、ゴールキーパーとフォワードほどに任務が異なり、無理に無理を重ねた結果、十分なミサイルと巨大なレーダー搭載能力を兼ね備えた、巨大なF-111が開発されることとなりました。海軍はこれでは巨大すぎて空母に載らないとして難色を示す。

 空母を仮に大型化しても空母航空団を収容できなくなるとして大きすぎる艦載機に狭くなる空母格納庫を心配し、空軍は大きすぎて鈍重であり戦闘機か疑わしい、と用途を失うようになります。もっとも、戦闘機ではなく爆撃機としては特に高性能であるのだけれども。

 F-111の設計は、しかし当時アメリカに爆撃機万能論があり、その背景にソビエト連邦との東西冷戦下、第一撃で数千メガトンの核兵器をぶつけ合うべく準備し、その一環としてB-52爆撃機が飛行群単位で三六五日二十四時間水爆を搭載し空中待機する時代の反映でした。

 こうした中で、空軍にはSAC戦略空軍とTAC戦術空軍があり、爆撃機万能論の一翼を担う性能があれば、戦闘機でも爆撃機の予算を用いる事が出来た、そんな事情がありました。自由の国アメリカでも、いやアメリカだからこその官僚主義というものがあったのですね。

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【京都発幕間旅情】近鉄が結ぶ斎王のみち2600系ラッピング電車と大阪名古屋結ぶ特急ひのとり80000系

2022-06-19 18:22:30 | コラム
■斎王のみち!近鉄が結ぶ
 日常で急行電車を待っていましていきなりとアニメのラッピング電車がやってきますと驚くものですよね。

 2600系電車の急行運用、最高速度は110km/hとなっていますが急行として活躍しています、急行は近鉄本線の場合、四両編成の片方が転換クロスシート車かLCカー、もう片方がロングシート車と云う事が多い、両方ともロングシートだと長時間乗る時はガッカリします。

 斎王のみちラッピング電車です、明和町は地域アニメとして企画しているとのことで、この他に壇密さんを斎王に見立てた、地球防衛未亡人など特撮でも有名となられていますが、官能的な斎王の電車なども来月まで運行されているとのこと。みたい方は近鉄へいそいで。

 伊勢志摩ライナー、近鉄23000系特急電車は1994年に運用が開始されました近鉄特急でして、リニューアルにより、編成番号で奇数編成がレッド基調となりまして偶数編成はイエロー基調となっています、つまり赤いからこそ、この列車は奇数編成となっています。

 23000系電車と1200系電車の行き違い、ただ、一度走行している編成でレッド編成とイエロー編成が線路上で行き違う瞬間をみてみたいなあ、なんてことを考えてみるのですが。いっそ乗ってみていき違う場所を車窓で視てから後日そこに、とも思いつつ、実行は、ね。

 ひのとり。いきなりやってきましたのでぶれてしまいました、大阪難波と近鉄名古屋を結ぶ近鉄の最新鋭特急です、アーバンライナーの時も感じたのですが、これこそが特急列車だよ、特別急行なのだなあ、と感じる様な、その路線の王者の風格を感じさせるもの。

 80000系電車、その運用開始は2020年3月14日ということですので、デビューとCOVID-19日本国内感染拡大が重なってしまった構図です、しかしそれでも車内は混雑している、近鉄特急の名古屋と大阪を結ぶ際のポテンシャルを感じさせるものなのですよね。

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原発事故に国の責任なし-福島第一原子力発電所事故避難者集団訴訟,ウクライナ戦争で危惧されるもう一つの"想定外"

2022-06-19 07:00:13 | 国際・政治
■臨時情報-福島原発訴訟
 原子力は微妙な問題です、石油依存が先の戦争の遠因であるとして導入された際は"平和の火"とされましたが、福島第一原発事故、そして昨今は軍事目標ともなっている。

 福島第一原子力発電所事故避難者集団訴訟において、6月17日、最高裁判所は“原発事故の国の責任”について“原発事故で国の責任認めず”という判決を下しました。これは、国の設置した地震調査研究推進本部が2002年に公表した“長期評価”において、9年後の巨大津波を予見できたか、仮に行政指導を行っていた場合、事故を防げたかが焦点でした。

 最高裁は、この点について、2002年の“長期評価”における巨大津波の危険性に対して、最高裁判所第2小法廷の菅野博之裁判長は、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震による津波は、“津波の規模”及び“津波の方向”が異なっていたとし、東京電力には責任はあるが国には責任は無い、としています。ただ4名の判事の内、1名は結論に反対しています。

 長期評価、東京電力は当時の想定として最大で5.7mの津波を想定し万全の備えを敷いていました、つまり津波が5.7mであれば耐えられるという意味です。しかし、長期評価に基づき示された2008年試算では15.7mの津波が想定されています。裁判は、この15.7mの津波対策を講じるよう国が東京電力を指導していたならば、防ぐ事は出来たかが争点という。

 想定外であったので国の行政指導の怠慢という責任は無い。こうした判決が示されたのですが、実はこの問題、原子力行政に大きな影響を及ぼす懸念があるのです。それは、現時点で事故が発生した場合の国の責任と電力会社のみの責任となる分水嶺が不明確であり、電力会社の所掌範囲外の事故についても、その責任を負わされる可能性を残したのです。

 チェルノブイリ原発占拠事件。さて、福島第一原発事故と比較される事の多い、1986年のチェルノブイリ原発事故を引き起こしました原子力施設ですが、2022年のロシア軍ウクライナ侵攻に際し、ロシア軍戦車部隊の攻撃を受け占拠される事件が発生、各国の防衛当局者に対し、炉心を破壊されれば広範囲が汚染される施設の軍事的脆弱性を突き付けました。

 想定外であった。電力会社は電子力施設警備を重視しており、不審者や数名の猟銃等で武装した過激分子では立ち入る事は出来ません、福井県の様に重武装の機動隊が警備している施設には特殊部隊数個小隊でも占拠は難しいでしょう、また、ゲリラコマンドー対処能力整備の一環として、自衛隊も自衛隊法上の治安出動命令があれば警備出動が可能です。

 しかし、巡航ミサイル攻撃を受けた場合はどうなのか。警察の原子力警備隊はMP-5やM-1500狙撃銃等を装備していますが、巡航ミサイルは撃墜できません、また自衛隊の重要施設防護も近くにイージス艦でもいるならば別ですが、原子力施設防衛の専従地対空ミサイル部隊は置かれていません、そして電力会社も法律上、地対空ミサイルは持てません。

 長期評価、これは災害を念頭に示されたものですが、今回の最高裁判断は、“想定外であれば国の責任は無い”という点だけを明確としてしまいました。しかし、放射性物質が拡散した結果に対しては、既に東京電力が責任を負っています。すると、東京電力にも想定外の、ウクライナ戦争類似の事態が日本を襲った場合でも、国は責任が無い事となる判決だ。

 夏の電力不足、震災後増加した新電力を支える調整電力として、原子力発電の再稼働は喫緊の課題です。ただ代替案はある、計画停電です、この代替案は電力が無いのだから仕方無いと約款にもある。しかし、事故には一切国は責任を負わないという姿勢だけを突き付けられた電力会社は、供給よりも万一の安全を考え停電を選ばざるをえなくなるのです。

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空母福建-中国が003型航空母艦進水式で命名,日本海軍が建造の空母"信濃"を七七年ぶりに上回る大型艦

2022-06-18 20:15:33 | 先端軍事テクノロジー
■検証-中国空母福建
 自衛隊は護衛艦ひゅうが型はじめ全通飛行甲板型護衛艦を揃えてきましたが昨日中国が進水式を挙行した大型艦は紛れもない航空母艦でした。

 日本が空母信濃を建造してから77年、昨日6月17日、中国が003型航空母艦一番艦の進水式を挙行、艦名を空母福建と命名しました。この003型航空母艦、今後は福建級航空母艦と称するものですが、満載排水量は80000tあり、これは日本海軍が第二次世界大戦中に建造した信濃の満載排水量718900tを凌駕し、アジア最大の空母となった事を示します。

 空母福建は江南造船において2020年ごろから衛星写真にてその存在が確認され、周辺対象物と比較しても全長は300mを優に超え、これまで中国が取得した遼寧と大連という2隻の航空母艦よりも大型化していると認識、ただ2022年3月頃と考えられた進水式は、中国の厳格なCOVID-19コロナ対策により遅れているとされていましたが、遂に実現しました。

 全長は320mで全幅78m、注目すべき点はカタパルトとして電磁式カタパルトを搭載、これは大型の艦載機を発信させる為にアメリカやフランスは蒸気カタパルトを用いますが、高圧蒸気は腐食の要因となり整備間隔が短く、アメリカも最新のジェラルドフォード級から電磁カタパルトへ転換しており、中国もアメリカのすぐ後ろまで技術で猛追しています。

 写真は自衛隊のF-35ですが、中国が福建級航空母艦を建造した背景、恐らく第五世代戦闘機を搭載する為のものです。中国海軍は瀋陽航空機製造公社のステルス戦闘機J-31に早くから注目していました、このJ-31戦闘機というのは中国初のステルス機開発に際しJ-20戦闘機に敗れ制式化の機会を逸した為、瀋陽航空機製造が独自に輸出用として2012年ごろから航空展に出展していました。

 J-31,しかし特色としてJ-20よりも小型であり、海軍は空母艦載機型の開発を決定、2021年10月29日に空母艦載機型を初飛行させています。J-31戦闘機は全長17.3mと全幅11.5mで最大離陸重量28tとなっている。J-20が全長21.2mに全幅13.1mと最大離陸重量37tですので、J-31は小型化に成功しており、空母艦載機として搭載に目処がついたといえる。

 第五世代機で空母艦載機であるJ-31,外見がF-35に類似していることから、不正アクセスにより技術情報を得たとの推測もあるようですが、エンジンについては中国は猛烈な予算投入により戦闘機用エンジンの技術開発を進めているものの流石にまだ米英には及ばず、出力に限界があり、充分な装備を搭載するには、空母大型化が必須だったと考えられます。

 日本にとっての脅威度は。対した事は無いと断言するには聊か無責任であるように思います、こう言いますのも中国海軍はこの003型航空母艦を計画し、建造開始から進水式までを5年間、日本で云うところの中期防衛力整備計画一期分の期間で実現しており、これは言い換えれば今後十年間で更に増強される事を示しています、何隻建造されるか不明だ。

 脅威度という視点から考えますと、最初の空母遼寧が再就役した頃とは根本的に事情が違います、遼寧をウクライナから受領し修理し再就役させた時代とは異なり、055型防空駆逐艦という満載排水量1万tクラスの艦隊防空艦が建造されていますし、商級攻撃型原潜の数が揃い、特に商級原潜は巡航ミサイル運用能力を強化した改良型建造が進められています。

 空母部隊として考えた場合には、艦隊防空艦の数も質もかなり強化されており、またアメリカ海軍の空母打撃群を参考としたような、支援に充てる攻撃型原潜の強化も進んでいます。福建は三隻目の空母、先行する二隻の空母と共に作戦稼働と作戦待機と定期整備というローテーションも組めるようなりました、これまでとは脅威度ははるかに違うのです。

 中国の空母部隊増強、日本の防衛から考えた倍ですが、実任務を実施した場合の脅威度と共に平時のプレゼンスオペレーションを実施された場合のポテンシャルという部分で大きく違います、実任務といえば、例えば日本の南西諸島への侵攻という危惧ですが、中国本土からのミサイル爆撃機や戦闘機と弾道ミサイルに加えてさらに一つ空母がくわわった。

 プレゼンスオペレーション、しかし前述の実任務という脅威よりも平時に空母複数を展開させる運用の方が、国民世論に対する圧力は大きくなります、例えば防衛空白地帯付近を空母が遊弋した場合は。小笠原諸島などは日本の防衛空白地帯で、小笠原諸島は東京都であり練馬の第1師団管区となっていますが、最寄の部隊は御殿場板妻の第34普通科連隊だ。

 小笠原諸島近海に、ヴェトナム戦争時代のヤンキーステーションのような空母数隻が張り付く状況を再現されますと、日本は広さにして本州と同じ地域の防衛という負担に迫られる事となります。福建を中心に編成される機動部隊の能力を考えれば無視するわけにもいかず、我が国では冷戦後の1996年防衛大綱改定以来の、防衛政策変更が迫られるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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