北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F/A-18&F-35対潜哨戒機転用アメリカ海軍研究とボーイング社F/A-18E/F生産ライン2025年閉鎖決定

2023-05-23 20:01:01 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は一寸驚きですが温故知新と云いますか昔の方式が再検討されている話題を中心に。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いられないか、冷戦時代にアメリカ海軍や海上自衛隊が構想した研究を2020年代に再度アメリカ海軍と海兵隊において再検討が始まっているようです。この研究はアメリカ海軍のコリンフォックス中佐とトレバーフィリップスレバイン中佐、アメリカ海兵隊のウォーカーミルズ大尉らが連名で共同研究を進めているものです。

 “Use Emerging Technology for ASW”新技術による対潜戦闘、と銘打った研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機を用いるというもので、これは現在対潜哨戒に用いられているP-8A哨戒機では今後西太平洋海域において想定される敵対戦闘機が展開する競合空域において、敵戦闘機の発射する長射程空対空ミサイルを前に生き残れない懸念があるため。

 MQ-9無人機へソノブイと中継装置を搭載し、無人機主体の対潜戦闘を展開する研究は既に進められていますが、今回の研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機にソノブイと中継装置を搭載し、短時間でソノブイバリヤーを展開、またその最中に航空攻撃を受けた際には空対空戦闘を展開し撃退する、という対潜対空同時任務を想定しているようです。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いる研究は、冷戦時代に海上自衛隊が研究した“F-4ファントムによる対潜戦闘”という概念と重なるものがあります。これは当時運用していたP-2哨戒機やS-2哨戒機では当時顕在化していたソ連原子力潜水艦の機動力に対応できないという課題があり、超音速飛行能力を持つファントムを対潜哨戒に用い速度で対抗するもの。

 ファントムに赤外線探知装置と磁気探知装置、そしてロケット弾を搭載する、この研究は第四次防衛力整備計画検討段階に出された数多の対潜能力構築案の一つで、実現はしていません。ただ、潜水艦に搭載するサブロック対潜ミサイルなど、浮上中の潜水艦を魚雷よりも早い装備により先行前に無力化するという発想であり、これと重なることとなります。

 A-6イントルーダー攻撃機、アメリカ海軍もS-2哨戒機ではソ連潜水艦の機動力に対抗できないという視点からジェット機の運用が研究され、この結果生まれたのが速力の大きなS-3バイキング艦上哨戒機です。S-3が既に退役した今、空母艦載機であるF/A-18Eに対潜能力を持たせるのには、短期間に固定翼ジェット哨戒機を空母に配備できる利点もある。

 アメリカのボーイング社はF/A-18戦闘機製造ラインを2025年に閉鎖する決定を発表しました。今後新たな追加発注があった場合に限り2027年まで製造を延長するとしています。ボーイング社では今後、新たな航空機のフルレート生産が開始されるのに合わせ、製造ラインを確保しなければならない状況がありF/A-18の時代が終焉を迎えるという構図だ。

 F/A-18戦闘機製造ラインは、T-7Aレッドホーク高等練習機、MQ-25スティングレイ艦上無人機、F-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機などに製造が転換することとなり、スーパーホーネットの生産は終了するものの、基本設計でははるかに古いF-15イーグルの改良型であるF-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機の製造が継続されるのはなにか感慨深いものがあります。

 ボーイング社によれば新規製造は終了するものの既存のF/A-18E/F戦闘攻撃機とEA-18G電子攻撃機の近代化改修は継続されるとのこと。この生産終了はドイツ空軍のF/A-18E戦闘攻撃機決定が撤回され、F-35戦闘機へ転換したことが終了を速めた可能性もあるでしょう。またこれによりF/A-18のさらなる改良型の開発も今後行われないこととなります。

 航空自衛隊が2018年に検討していたEA-18G電子攻撃機導入検討はボーイング社のF/A-18シリーズ2025年製造ライン閉鎖により事実上不可能となります。EA-18G電子攻撃機導入検討というのは政府部内の検討と航空自衛隊部内での電子戦専用機導入を求める声に対応したものですが、検討段階にとどまり導入検討段階までは進みませんでした。

 電子攻撃機導入検討という段階であれば、概算要求に旧式化したF-15戦闘機を電子攻撃機へ改造する電子戦ポッドを開発する検討は為されていますが、初期のF-15戦闘機は1981年より導入が開始され既に運用開始40年となっています。一方で、日本としてはEA-18Gと共にアメリカ海軍がF/A-18を対潜運用に充てる研究にも注目すべきかもしれません。

 荒唐無稽な案ではありますが、P-1哨戒機を今後中国軍の長射程空対空ミサイル脅威が及ぶ沖縄付近の戦場に投入するには、空挺空ミサイルを撃墜するレーザー砲を追加するか、空対空戦闘能力を持つ哨戒機が必要となります、すると航空自衛隊のEA-18Gと海上自衛隊のF/A-18Fを90機程度日本でライセンス生産してはどうか、とも考えてしまうのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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G7広島サミット閉幕-核軍縮は後継装備開発等進まぬ結果と平和維持軍等出口戦略無きロシアウクライナ戦争

2023-05-23 07:00:03 | 国際・政治
■臨時情報-G7広島サミット
 G7広島サミットはゼレンスキー大統領出席と核軍縮の討議が禁忌ではないことを実績として残した点が大きな一歩でした。

 G7サミット、ロシア制裁強化と制裁抜け道排除、なによりも制裁堅持においてG7はまとまる事が出来ました。ただ、もう一歩進んで“停戦が実現した場合の平和維持”への取り組みが議題とならなかった事は残念でした。停戦した場合でも、その停戦がロシアに再侵攻を準備させる期間に利用される事が在ってはなりません、平和維持軍駐留が必要となる。

 ゼレンスキー大統領が出席したことで、当事者を交えて主要国が討議する貴重な機会であったはずです。G7ではアメリカ大統領選挙が迫る中で具体的な姿勢を定められない問題があり、そもそもアメリカが部隊派遣などについて消極的だという問題は理解できますが、21世紀一杯、兵力引き離しのPKO部隊を駐留させ、二度と繰り返させない施策は必要だ。
■核軍縮よりも核陳腐化を
 核兵器を減らすのは簡単です、極論使えば減るという視点で。しかしそれ以外の選択肢を考えなければならないならば後継装備開発による陳腐化という視点を日本こそが提唱すべきでしょう。

 核兵器の後継兵器についてを議論する事の方が核廃絶への大きな道程を進めると考えます、勿論、SF要素を含んだ反陽子兵器のような、実現した場合は水爆よりも破壊力が大きな兵器を開発する方向性に向かった場合は、単位脅威が増大するだけですが、核兵器以前の戦略兵器であった戦艦が、事実上廃絶された経緯を考えれば、陳腐化が核廃絶への近道です。

 神の杖、ガンダムの概念の生みの親であるハインラインの“月は無慈悲な夜の女王”を髣髴とさせる、都市を壊滅させる威力は無いが敵国指導者の指揮中枢を外科手術的に無力化する装備体系のようなものは、ある意味政治的な武器である核兵器を陳腐化させ得ます。大量破壊兵器以外で核兵器を陳腐化させる装備開発は、G7で議題とすべき命題とおもう。
■ウクライナ
 記者会見において日本のマスコミレベルの限界を思いしったという、やはりぶらさがり記者だけではなく世界を舞台に独自取材できる記者を育てる気概が必要だ。

 世論の中でも少数派ではあっても存在するのは、ウクライナが降伏すれば戦争は終わる、という暴論です。この人たちの中では、米軍占領下の沖縄に余程いい思い出があるのか、若しくは旧日本軍が発表した占領下の中国の人々の幸せな生活というプロパガンダを信じているのでしょう、ただわたしの視点から見れば占領下人権が蹂躙される中に幸せはない。

 不戦、を掲げたいことは判るのですが、占領下でロシアが占領地をロシア本土へ併合すれば占領地の人々が徴兵の対象となります、するとかつての同胞へ銃を向ける事を強制される事が広義の不戦に含まれるのか、そんな仮定論では議論しないと反論されるかもしれませんが、仮定ではなく事実です。不戦平和論を掲げる方は少し歴史だけでも学ぶべきだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】レオパルド1置換えるチェンタウロ2,ATLTHボラン超軽量榴弾砲とアルマⅡ装輪装甲車

2023-05-22 20:23:52 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今回は陸軍関係の11論点を集めてみましたが偵察用装甲車の話題やミサイル共同生産など我が国防衛には参考となる点があるようです。

 ブラジル陸軍はレオパルド1主力戦車の後継としてチェンタウロ2戦車駆逐車を選定しました。ブラジル陸軍は広大な国土を防衛するべく従来の戦車の後継として装輪装甲車である装甲機動砲の導入を計画しており、各国の戦車駆逐車を選定、今回採用されたイタリアのほかにアメリカと中国から装備が提供され、その評価試験を実施していました。

 アメリカのジェネラルダイナミクスランドシステムズ社からはLAV-700AG装甲機動砲、そして中国のノリンコ社からはノリンコST-1-AB戦車駆逐車あ提示されており、評価試験ではチェンタウロ2が首位、続いてLAV-700AGが次点であり、その後にノリンコST-1-ABという評価となりました。チェンタウロは特に不整地突破能力が評価されているとのこと。

 チェンタウロ2は装輪戦車という名称で知られたチェンタウロ1戦車駆逐車の派生型であり車体を大型化させたフレシア装輪装甲戦闘車をもとに、105mm砲を搭載していたチェンタウロ1の拡大型として120mm砲を搭載したもので、ブラジル陸軍では当面98両を調達する方針ですが、オプション契約として最大201両まで追加調達も検討されています。
■チェンタウロ2
 ブラジル陸軍はイヴェコ製装甲車のライセンス生産などイタリア設計の装甲車をかなり採用しているのですよね。

 ブラジル司法はブラジル陸軍のチェンタウロ戦車駆逐車導入に対し計画停止を命じました。陸軍は旧式化したEE-9装甲偵察車の後継としてチェンタウロ2戦車駆逐車98両を9億4600万ドルにて取得する方針を示し、当初は12月初旬にもイタリアのイヴェコ社とのあいだで正式契約を予定していましたが、市民運動により提訴されたかたちです。

 連邦地方裁判所では公共サービスの低下が進む中で今回の決定はブラジル陸軍装甲車の5%を置き換えるだけのものであり切迫性は低いと判断しました。しかしブラジル陸軍はチェンタウロが置き換えるのは偵察装甲車の25%であると反論しています。一方で現在このEE-9は偵察装甲車から歩兵火力支援装甲車へ改良が進められているさなかでもあります。
■LANIUS徘徊弾薬
 AI自動管制は行わないそうですが大きさを見るとこれを一発一発操作するというのは逆に不自然にも。

 イスラエルのエルビットシステムズ社は対人用徘徊式弾薬LANIUSを発表しました。これは小型クワッドドローンを用いたもので、従来の徘徊式弾薬は比較的高い高度を巡回飛行、つまり徘徊して戦車や地対空ミサイルなどの弾薬をさがし続け、発見すると攻撃するのですが、LANIUSは遙かに低い人間の視線にちかい高度を徘徊する能力を持つとのこと。

 LANIUSは徘徊飛行時間7分と短いものの72km/hで飛翔し重量は1.25kgとしており炸薬は150g、徘徊する手榴弾といった印象の装備です。AI識別能力を付与した場合は多数同時運用することで無差別攻撃対人兵器として運用される危惧はありますが、エルビットシステムズ社によれば、対人攻撃はオペレータの直接命令により行うと発表されています。
■PARS-Ⅳ-S-Ops
 日本でいえば96式装輪装甲車を特殊作戦支援に使うようなものですがリビア介入などアフリカ地域での作戦が増えているトルコには必要な装備なのかもしれません。

 トルコ陸軍はFNSS社により国産開発されたPARS-Ⅳ-S-Ops特殊作戦装甲車を受領しました。この装輪装甲車は特殊部隊の長距離偵察任務支援用に開発されていますが歩兵部隊でも十分運用に耐える六輪式の装輪装甲車です。車体は全長6.6mで戦闘重量は16.1tで増加装甲可能、全幅は2.7m、キャタピラー社製500hpディーゼルエンジンを搭載しています。

 PARS-Ⅳ-Opsは最高速度100km/hで10km/hの水上浮航性能も有していて、特筆すべきは歩兵部隊用のPARS装甲車と比較し特殊部隊仕様のOpsは車体上部がオープントップ構造とした上で装甲天蓋構造を採用、様々な物量の搭載などに対応しています、他方PARSシリーズは25mm機関砲塔が搭載可能ですが、Ops型はRWS遠隔操作銃塔のみ搭載可能だ。
■ペトリオット共同生産
 ペトリオットと云えば先日ウクライナに供与されたものがキエフ防空任務でロシアの極超音速ミサイルキンジャールを撃墜して話題になりました。

 ドイツのMBDAドイッチュランド社はペトリオットミサイルの共同生産を計画しています、これはアメリカのレイセオン社が生産し供給しているペトリオットミサイルについて、現在のロシア軍ウクライナ侵攻という状況に際して充分なミサイル備蓄を行うにはレイセオン社だけの生産が限界となっている現状を受けての量産強化措置とされるもの。

 ペトリオットミサイルはドイツ連邦軍にも配備されており、当面は2048年までの運用サポート計画をたてています。なおMBDAドイッチュラント社はレイセオン社のドイツにおける提携企業という位置づけであり、関連資材整備ですでに協力関係にあります。今回共同生産が計画されているのはGEN-Tペトリオット誘導強化型ミサイルが挙げられています。
■ATLTHボラン
 ここまでトルコの話題が続きますとトルコ特集として別枠で紹介した方が良かったのでしょうかね。

 トルコ陸軍は最新のATLTHボラン超軽量榴弾砲の受領を開始しました。MKEエンジニア社が開発した新世代の榴弾砲で口径は105mm、輸送機はもちろんヘリコプターでの空輸を念頭としており、105mm榴弾砲でありながら重量は1.72tでしかありません。砲身は30口径、新技術のU字型可変反動制御システムと砲口制退器により反動を相殺するという。

 ATLTHボラン超軽量榴弾砲は射程17km、これは155mm超軽量榴弾砲としてイギリスが供給しているM-777の30kmよりは大幅に短いものの、榴弾砲に匹敵する大火力として世界で運用されているフランスの120RT重迫撃砲の射程13kmを凌駕しています。今回トルコ軍に納入されたのは7門で空挺部隊や特殊部隊が空挺作戦や浸透作戦などに活用します。
■ミストラルミサイル
 陸上自衛隊の93式近距離地対空誘導弾システムも需要はあるのかもしれない。

 クロアチア軍はフランスとの間でミストラル軽地対空ミサイルの導入を決定しました。この導入計画は7200万ユーロ、当時のレートでは7584万ドル規模の調達計画となります。この導入の背景には2022年3月、ツポレフTu-141無人偵察機がクロアチアへ領空侵犯し、首都ザグレブ市内に墜落した際、クロアチア軍防空能力の問題が認識されたためとされる。

 ミストラル軽地対空ミサイルはいわゆる携帯地対空ミサイルに区分されますが発射架を用い運用するとともに、中型トラックなどに搭載し管制装置とともに運用するミストラルATLAS-RC近距離防空システム、中型トラックに連装発射装置を搭載するミストラルATLASなどの派生型が開発されており、地上のほか小型艦艇などでも運用されています。
■スカイネックス
 自衛隊のドローン対策っていうのは最良案を突き詰めて考えると87式自走高射機関砲の改良型砲塔を生産して16式機動戦闘車の車体に載せる事ではないかと思う。

 ドイツのラインメタル社はスカイネックス防空システムの1億8200万ユーロ規模の国際契約を発表しました。国際契約について、どの国へ輸出するかは明言されていませんが、二カ国に対して輸出されることとなっています。スカイネックス防空システムは独立式の機関砲防空システムであり、スイスエリコン社のL-90高射機関砲の流れにあります。

 スカイネックスは35mm機関砲とAHEAD自己鍛造弾からなる防空システムであり、従来のL-90機関砲では焼夷徹甲弾と敏感な弾底信管を組み合わせることで航空目標に対応していましたが、AHEAD弾薬は発射の時点で時限信管を用い、目標へ硬質タングステン弾片を調整散布するというもので、ウクライナでは無人機や巡航ミサイルに威力を発揮した。

 HXトラック、今回スカイネックスとともに1200万ユーロ規模のHXトラックの契約も結ばれており、ラインメタル社ではトラック車載式で火器管制装置を含めた自己完結型の自走高射機関砲として整備されることとなるようです。射程は4000mで3000mの高度まで対応、この高度は沿空域を飛行する無人機を無力化する上で重要な防空能力となります。
■APKWS精密誘導弾
 このミサイルをAH-1Sに搭載したならばどうだったろうか。

 イギリスのBAEシステムズ社はAPKWS精密誘導ロケット弾の小型ドローンへの有効性に関して実証実験を実施しました。APKWS精密誘導ロケットは戦闘ヘリコプターから観測ヘリコプターに多用途ヘリコプターまで幅広く統裁されている70mm口径のハイドラ70ロケット弾に装着しミサイル化する簡易ミサイルキットであり、安価という点が有名です。

 APKWS精密誘導ロケット弾による小型ドローンへの攻撃実験は標的としてクラス2ドローン、12kgから25kg程度の小型ドローンが180km/hで高速飛行する状況で実施し命中させています。安価なドローンは簡単に撃墜できるものの、迎撃手段の費用対効果の悪さが問題視されており、APKWSは従来の地対空ミサイルより遥かに安価に取得が出来ます。

 ハイドラ70ロケット弾は自衛隊でもAH-1S対戦車ヘリコプター等に搭載され、地域制圧から観測ヘリコプターによる攻撃ヘリコプターへの目標指示など多用途に用いられる装備です。しかし近年は破壊力よりも命中精度を求める非戦闘員への不随被害局限という要求があり、他方推進装置などの信頼性の高さから新しい運用が模索されているところでした。
■MGS装輪自走砲
 インド軍の想定戦場は北方の中印国境やパキスタンとの山間部なのだけれども39口径砲の方が使いやすくないのかと思う。

 インド国防省は52口径砲を搭載したMGS装輪自走砲の評価試験を開始しました。インド陸軍は近年、韓国からのK-9自走榴弾砲を大量装備するとともに独自の装輪自走砲を開発しており、山間部での運用を想定した四輪トラック派生型の39口径155mm榴弾砲搭載型などを開発しています、しかし今回開発されたMGS装輪自走砲はそれより遙かに大きい。

 バラットアースモバースリミテッド社が開発した自訴榴弾砲は大型の八輪車体に52口径155mm榴弾砲と砲員及び弾薬などを搭載しています、この車体部分は装甲車体構造を採用する計画で、試作車は普通鋼板を採用しているものの量産車両では防弾鋼板と複合材により乗員を防護する計画とされています、そして平野部とともに山間部での運用を目指す。

 MGS装輪自走砲の主砲は射程48kmを期しているほか、効力射3発を30秒で射撃し、3分間の射撃では12発を射撃するといい、車体はチェコのタトラ社製で80km/hの機動力を発揮するとのこと。全備重量は30tでこのうち砲架部分の重量は15t、車体弾庫には24発の砲弾を収容する。インド軍ではまたシャクティ砲兵データリンクシステムを開発中です。
■アルマⅡ装輪装甲車
 トルコは通常サイズの装輪装甲車を特殊作戦用として長距離スカウト任務に投入している装輪装甲車天国です。

 トルコのオトカ社は新型のアルマⅡ大型装輪装甲車を発表しました、オトカ社自身は装甲車と発表しているのですが、特筆すべきはその車体が装輪装甲車ながら40tもある、ということでしょう。もちろん標準重量が40tというわけではありません、増加装甲により40tまでの戦闘重量に耐える、ということなのですが、それでも非常に大型の装甲車となる。

 アルマⅡ大型装輪装甲車は八輪式の装輪装甲車で、車体には720hpという、第二世代戦車並みの強力なエンジンを搭載しています。そしてモジュールシステムに採用により様々な武装搭載に対応しているとのことで、120mm砲の搭載も可能としています。大型の車体は大量の輸送能力と、そして装輪装甲車としては高い防御力の付与をしめしています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-京都北大路大宮,大徳寺前の大宮商店街で静かに楽しむ珈琲の香り

2023-05-22 07:00:52 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 舞鶴地方総監部の置かれる京都、その京都府の府庁所在地である京都市には数多くの喫茶店が並び日常に清涼感を与えてくれます。

 北大路から大宮通を上りまして、この界隈は勝手に大徳寺の門前町の様に考えているのですけれども、北大路機関にはその草創期の会合に諜報した、重宝した街角です。しかし駄菓子屋がイタリアンに鞍替えしたり、書店はなくなったり変化は多い街並みでもある。

 喫茶、静けさというものが大切なように思う、それは店主さんには長居に少々申し訳ないと思いつつも読書が捗るときがありますし、またほかにお客さんがいない時にはPOMERAを取り出しましてぱちぱちとエッセイをしたためたり、記事を書いたりもする、珈琲と。

 山居さん、大宮通に面しました、ここは焙煎工房の珈琲の香りがくすぐるように面映ゆく、実は熱いものが苦手なのだけれども、ここばかりは冷やすのではなく馥郁とした香りを愉しむために、胃を考えては、アメリカン、も考えつつ普通に濃茶のような珈琲を頂く。

 香りは大事だ、そしてここは苦手な煙草のひどいものもない。閑話休題なのだけれどもCOVID-19の時代、喫煙者とはリモートで対話することが多くなり、これは結果的にわたし自身、煙草への耐性は低くなったというか頭痛に繋がるほど煙草が苦手になった。

 調度品の落ち着いた佇まいが、実は喫茶店の肝要さなのだよなあ、とは思う。美味しいものを愉しむというよりも、珈琲と過ごす時間を愉しむのが、喫茶店なのかな、と思う、いや実はあまーいナントカフラペチーノとかを出すカフェーも大好きなのですけれども、ね。

 スコーン、トウモロコシのスコーンにたっぷりのメイプルシロップを掛けまして、最初はさくさくの歯触りと、時とともに染み込んで甘味がしっとりとする移ろいを愉しみながら嗜む。読書と珈琲、執筆と珈琲、香りの珈琲、その合間に時折スコーンを挟むのは良い。

 喫茶店に焙煎所を併設しますと、そのふくよかな香りでいくらでも過ごせるような気分になります、それも混雑していない、それこそ日常の幕間のようなお客のいない凪の時間帯となりますとなおさらで、それを歓迎する様な書架の蔵書が豊かな時間の過ごし方をさそう。

 考えればアイスコーヒーは氷塊の溶けるとともに味わいが変わりますが、珈琲そのものも熱すぎればその分の香りは強く漂い、そしてさめるとともに不思議な甘みを砂糖が無くとも醸し出す、大徳寺参道、という訳ではないけれども並行して並ぶ大宮通のひととき。

 大徳寺は、散策すると不思議な情感を讃えている、季節の移ろいとともにたまに庭園を拝観してもよい、ちょっと撮影できないところが多いけれども。十数年前に観光バス駐車場を整備し桜を切ったのは残念でしたが賑やかすぎない時折に、ふと大宮通を巡ってほしい。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【11】ヘリコプター搭載護衛艦くらま・ひゅうが(2012-10-08)

2023-05-21 20:11:44 | 海上自衛隊 催事
■専守防衛変容とその背景
 観艦式の写真を紹介すると共にアーカイブを作成しタンカーと護衛艦や都市部と護衛艦という写真をまとめているのですが。

 日本の安全保障体制、戦後レジームからの脱却を掲げた安倍総理大臣時代は、結局憲法改正まで到達する事はできませんでしたが、結局のところ戦後秩序というもの、東西冷戦と二つの超大国という関係性の中にあって唯一日本国憲法は担保されていたといえます。

 アメリカの同盟国としての日本ですが、冷戦時代に在ってはフィンランドのような重武装中立という選択肢をとっていたならば、日本の中立性というものはもう少し変わったのかもしれない、フィンランドと日本は同じ枢軸国であったのですから。しかし実際は。

 第二次世界大戦における決定的な敗戦から、重武装の武装中立国家を目指す、という選択肢はそもそも中た訳ですし、国土が広く人口の少ないフィンランドに対して、四方を海に囲まれる日本はエネルギー源一つとって中立政策を行える程自給自足の目処はありません。

 エネルギー問題は、そもそも日本が第二次世界大戦において南方へ進駐した最大の要因でもある訳で、結局、殻に閉じこもるかたちでの重武装中立ではなく、シーレーンに依存する国際公序とともに生きてゆくほかなかった、という条件下での平和憲法が出来上がる。

 転換期を迎えている事は理解しているのですが、一方で安全保障環境の転換期とともに、今の日本国憲法が成立つ前提を維持する為の努力が、見方を変えれば憲法に抵触する、政治の領域を超える段階まで進んでしまっているようで、解釈改憲の範疇を超えていないか。

 2012年の観艦式、これこそ平和国家の専守防衛を経済大国が具現化した姿、といいえたのですが。防衛力を2012年の水準、これは、くらま現役に戻せとかF-4ファントムを再生しろというわけではなく、防衛力と防衛力整備指針の内容そのものが変容していまして。

 反撃能力のような射程の長い装備の大量整備とか、MLRSを全廃するという政治決定や戦闘ヘリコプターを廃止するという指針が示され、専守防衛型の防衛力をそのまま廃止して、そのリソースで反撃能力を整備しようとする今の指針は、大丈夫なのかと危惧するのです。

 2012年と2023年では周辺情勢の緊迫化も進んでいるために、装備の種類ではなく数で、と但し書きをつける必要はあるのですけれども、まず、装備の数を2012年の段階、対戦車ヘリコプター、多用途ヘリコプターも戦車も火砲も戻してみてはどうか、と思うのですね。

 専守防衛の装備が充分あって、そこで初めて有事に際して、限定戦争を仕掛けられた場合には専守防衛の防衛力を駆使して撃退しつつ、相手が全面戦争に打って出ようとする状況を反撃能力という抑止力が、牽制する形で相手が全面戦争という選択肢を封じる、という。

 前よりは潜水艦は多くなった、けれども哨戒機も掃海艇も削減された、そして全体として余裕がなくなっている。専守防衛が事足りて初めて反撃能力を考えるべきであり、そして反撃能力ではなく元々的基地攻撃能力という呼称を用いていたのだから、なにかちがう。

 もっぱら相手本土を、壊滅的打撃に用いる装備ではないのだけれども保有するならば、所謂防衛戦闘における逆襲部隊と混同させるような名称を用いるべきではないのでは、とも思うのです。政治は理解しているのか、国民は理解しているのか、金額だけ見ていないか。

 戦車凄いとか護衛艦かっこいい、という段階の関心事でも、長く見ていますと防衛力というものの在り方はおぼろげでも見えてくるものですので、予算が増える、という話を聞きますと、どうしてもこう考えるのです。関心を持てば調べる公開情報はいくらでもある。

 反撃能力、一方で将来の台湾海峡有事における日本の立ち位置、中立という事はみじんも考えることができない実情に立ち至れば、相応の覚悟というものが求められます。中立が難しいのは第一に在日米軍基地が攻撃されるということ、特に日米共用基地が、です。

 佐世保基地や鹿屋航空基地に新田原基地と共用施設が多いために確実に自衛隊も攻撃されるためです、不随被害も出るでしょうし、沖縄本島などはかなり基地周辺の着弾だけではなく、浮流機雷の漂着による船舶被害や人的被害を見込まなければならないかもしれない。

 そして、台湾海峡有事においてそもそも警戒しなければならないのは、東南アジアと日本を結ぶ海上交通路を台湾の喪失は、太平洋戦争における沖縄の失陥と同じ結果をもたらし、シーレーンという視点で完全に孤立してしまうのではないか、という危惧があります。

 日本国家は最早以前のような自由主義陣営として、つまり個人の自由と価値観を個人の尊厳により決定するという立ち位置で居続けることは出来なくなる、こうした認識が必要です。それもありではないか、と思われる方は、そういった生活に慣れていないからです。

 考えてみてください、あなたのスマートフォンのなかみを検閲されるのを手始めに、自宅も公共の場所であり、令状のない創作、自宅とは国家のものであり個人の行動はすべて国家が統制する、そしてどう思おうが幸せであるとして政治を支持しなければならない。

 大陸の手法では、それができない人間を不適格者として再教育させる、再教育の施設は日本の今の刑務所とよく似ているが、自発的に入っているといい、どのようなことを思おうと地震の意志で入り満足しているという言葉しか外部には許されない社会となる構図だ。

 COVID-19の中国における対策を見ていますと、個人の尊厳に対して政治が無制限の公共の福祉のためのあらゆる措置を付託された国家権力が暴走した場合の不自然さは見えています、いや、逆にこれがあるからこそ、個人の尊厳、財産などではなく生命が問われる。

 台湾などは安全保障と防衛への危機感をあらわにしている。結果的に、東南アジアとのシーレーンを遮断され、太平洋への権威主義への防波堤となっていた台湾が基地となれば、太平洋上での中東からの石油シーレーンさえも脅かされることとなる、ということです。

 つまり中立でいるには、核兵器でも保有して本当の意味で中国の軍事圧力にモノを言える国となるのか、軍事圧力とは核攻撃の恫喝も含めてですよ、もしくは覚悟を決めてアメリカとともに台湾有事を起こさせないための圧力、実力で戦争をさせない覚悟が必要という。

 権威主義国家の政権はある日突然倒れる、これは民主主義国家の政権が選挙により後退するものとは正反対のものなのですが、これ故に例えば実際に戦争というものが始まった場合、権威主義国家は簡単に引く事ができません、それはロシアウクライナ戦争を見る通り。

 覚悟を以て戦争の始まりを防ぐ事が出来れば、始らない戦争で緊張関係を維持することは冷戦の様で厳しい国際関係が続く事を意味しますが、戦争が始まってしまい出口戦略を権威主義国家へ用意する事よりも遥かに容易いといいますか、被害者がすくなくなります。

 歴史を見ますと回避できる危機を譲歩という形で丸く収めようとして結果的に大戦争となったのが第二次世界大戦です、これを繰り返してはなりませんが回避できる危機を力押しで封じ込めようとして起ったのが第一次世界大戦、こちらも繰り返してはならないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】葵祭,下鴨神社へ向かう行列-京都三大祭を迎える2019年と2023年とでかわったこと

2023-05-21 18:11:50 | 日記
■葵祭を,撮る
 祭事行列の撮影はやはり自衛隊行事の観閲行進の撮影とは違うものなのですね。市街パレードではここまで長距離を移動しませんし戦車も来ません。

 葵祭、実は新しいカメラ機材の性能を試してみたい、という理由もありまして、一寸無理して時間を捻出したのです。それは、EOS-M5ミラーレスカメラ、従来のEOS-M3ミラーレスカメラを補完する新しい装備として導入したのです、EOS-R10はもう少し先に。

 EOS-M5,良いカメラなのはスペックからは判るのだけれども、なにしろミラーレス機種に良い思い出は無い、店頭で試すだけではわかりにくく、特に使い慣れたEOS-7Dとは根本から操作方法が違い、何処をどうもったら誤作動が起こるのか、これを使って熟知したい。

 M3とM5,まずボタン操作の位置がかなり変わっているので、習慣の様に指を動かしますと恐らく失敗する、しかし、誤操作がどういうときにおこるのかは使てみないと判りません、誤操作が起る背景が分っていれば、操作時に注意する事でそもそも起らないのですからね。

 ダイヤルスイッチ、結局のところいしきせずにカメラを保持しようとして押してしまう事が多き、気づけばM3ではISO感度が12800に誤操作で切り替わって写真を台無しにすることが在った、そしてMFにカメラを保持しようとしてもった際かえてしまう事も。

 電源の位置がM3とM5では違うのだけれども、M5の切替レバー方式はEOS7Dと同じ位置なのだと解釈していた、けれども、EOS7Dは電源を入れたままでもシャッターボタンに指を掛けなければ自動で電源が落ちて、しかしシャッターを押す事で即座に撮影できる。

 M5は電子光学ファインダーの接眼検知装置に不用意に触れる事で電源が復帰してしまい、これが電池の電力を大量消費する事に気付いた。使ってみないと判らない事がある、使い勝手は数値化できないだけに、慣れる為には場数を踏まなければならないのですね。

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ウクライナ情勢-ロシア軍の不可解な旧ソ連製ロケット廃棄関連施設攻撃と軍事目標へのミサイル攻撃開始

2023-05-21 07:00:51 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 G7広島サミットへのウクライナゼレンスキー大統領出席という大きな出来事が本日はじまるのですが、先ずはウクライナ情勢から。

 ロシア軍は今月に入り、ソ連時代の施設を中心に長距離ミサイル攻撃を加えています、具体的にはソ連崩壊後のウクライナ域内に配置されたソ連製大陸間弾道弾などを廃棄する“1992年ブダペスト合意”に基づく処理施設などがミサイル攻撃を受けています。その意図するところは不明ですが、軍用施設ではないものの大規模な爆発が発生しています。

 ミサイル攻撃は5月1日と5月13日に発生しています。5月1日には東部のドニプロペトロウシク州パブログラードに所在する旧ソ連ミサイル固体燃料保管施設、もう一つ5月13日には西部フメリニツキー州のテルノビリに所在するロケット廃棄場です。ロシア国内ではウクライナ軍兵器集積場を破壊したとする意見がありますが、確認されていません。

 旧ソ連ミサイル廃棄施設に対する相次ぐ攻撃は何らかの意図が考えられます、一つは“ロシア側は本気でウクライナに大量破壊兵器があると信じている”、もう一つは“大規模な爆発を引き起こし偽情報を流す”、または“軍が大統領に報告する見栄えの良い標的を狙った”というものです。なお、ウクライナ軍によるこれら物資の軍事転用は確認されていません。

 イギリス戦争研究所は5月14日の報告書において最近のロシア軍ミサイル攻撃について“戦略目標を明確に確定した”と皮肉交じりに分析しています。具体的には、2022年2月から2023年3月にかけて、発電所やアパートに美術館や学校など、よくわからない目標に対して高価な巡航ミサイルを用いた攻撃を行っていました。これが変わりつつある。

 ロシア軍は新しい軍事目標として兵器工場や軍用物資集積所など軍事目標に対する攻撃を開始し、ウクライナの戦争遂行能力を削ぐ行動に出ています。ただイギリス戦争研究所はもちろん、世界中の有識者にとり解明できない謎は、ウクライナ軍を攻撃せずに何を攻撃していたのか、という不可解さです。本来は最初に攻撃すべき目標なのですから、ね。

 ロシアウクライナ戦争について、ロシア軍は地上軍に大きな損耗を強いられ、黒海艦隊にもかなりの損害が及んでいますが、航空宇宙軍の航空機は大半が無傷です。ただ、長距離巡航ミサイルについては2022年2月から一年間で大半を射耗しており、追加生産が完了したものを備蓄しこの一週間は使用数が急激に増えた、今後の空軍攻勢については未知数となっている。

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NATOはウクライナを如何に迎え入れるか【1】NATO外相会談経てストルテンベルクNATO事務総長発言

2023-05-20 20:03:14 | 国際・政治
■これが欧州の総意か?
 ゼレンスキー大統領訪日と共に広島で開催中のG7主要七カ国首脳会議がウクライナを議題としてます。

 NATOはウクライナ戦争後のウクライナ安全保障にどのようにアプローチするのか。NATOのストルテンベルク事務総長は、4月5日に行われたNATO外相会合に際し、その記者会見の場でNATO全体の立場としたうえでウクライナについて現時点での加盟申請受付については言及せず、将来的にNATOへ加盟させる可能性について示唆しました。

 ウクライナが仮に2022年の時点でNATOに加盟していた場合、ロシアのウクライナ侵攻によりNATO条約第五条が発動し、第三次世界大戦が勃発していたところでした。具体的には加盟国一国への攻撃がNATO全体への攻撃とされる条文があり、NATOは自動的に参戦します、また加盟していたならば即応戦闘群が駐留していた可能性も高いのです。

 全面戦争、特に今回の事態はフォークランド戦争やアメリカ同時多発テロのような限定戦争ではなく緒戦の段階で首都キエフを狙う全面戦争となっています。この場合、NATOの欧州連合軍最高司令部は、どの程度策源地攻撃を見込むかは別として、即応戦闘群支援にアメリカ、イギリスやフランスとドイツイタリア軍を増強展開していたのは必至でした。

 抑止力の観点からは、第三次世界大戦も辞さない厳しい姿勢で相手の侵略を抑止する、政治的選択肢から外したうえで外交交渉という選択肢を強いるという理解があるのですが、一方で相手がこれを軽視したうえで開戦となっていた場合は、戦場でロシア軍とアメリカ軍が戦闘となっていた確実な状況があり、これは現在以上に厳しい状況だったでしょう。

 ストルテンベルク事務総長の発言は、現在のロシア軍侵攻が仮にひと段落したと仮定したうえで、おそらく現在の朝鮮半島南北軍事境界線のような状況、大量の兵力が対峙する状況を予見したうえで、NATOに加盟させ、再度戦闘が再発しない状況、NATOによる抑止力を行使したい、と認識があるのかもしれません。これは欧州の立場なのかもしれない。

 欧州の立場というものは幾つかの段階に分けて考えるべきですが、一つは“ウクライナ支援疲れ”というもの。つまり“次にロシア軍が戦力を立て直してウクライナへ侵攻した際に2022年と同じ規模のウクライナ支援を行う余地がない”という認識に依拠し、今度は戦争が起きないようにNATOがロシア軍に備え強力な抑止力を提示する、というものです。

 ウクライナのNATO加盟可能性示唆、ストルテンベルク事務総長の発言は“いつまでに”という期限を区切ったものではなく、その上で“ウクライナが独立国であり民主主義国である必要”を合わせて提示しています。これはロシア占領下のウクライナが亡命政権などを樹立しても加盟申請ができないことを意味しているのでしょう。しかしそれだけなのか。

 フランスは第二次世界大戦中にドゴール亡命政権がフランスの国家継承を宣言し、連合国に参加しています。ストルテンベルク事務総長の発言は、ウクライナが今後劣勢となった場合を想定、これは東部バフムト攻防戦でさえ苦戦するロシア軍には想像が難しいのですが、頑張ってキエフ攻略に進み、この場合に亡命政権ができても加盟不能、という認識か。

 亡命政権という視点はもう少し突飛すぎるかもしれませんが、民主主義制度の定着をストルテンベルク事務総長が明示した背景にはもう一つ、現在のウクライナでは汚職の問題があり、コメディアン出身のゼレンスキー大統領も汚職撲滅を掲げしがらみのないことを理由に支持を集めている、言い換えれば現在の制度ではまだ汚職が残っている、とも。

 民主主義制度の定着、その定義に汚職対策を含めているのであれば、即座にはウクライナがNATOに加盟できない理由であり、特に現在は戦時内閣を組織し議会制を停止した体制での戦闘を行っている、戦時国家状態であることから、現在の戦闘をひと段落しロシアとの停戦交渉を妥結させたうえで国内改革を行うまで加盟申請はできない、とも受け取れる。

 モラトリアム的ではあるけれども、本音としては今の段階で介入した場合、NATOのF-35はモスクワ上空を乱舞することで一気にウクライナ戦争の方をつけることができるものの、それは全面核戦争の懸念に直結するゆえにNATOとしてはウクライナ加盟を現段階で行わせることは出来ない、その為に理由付けを行い加盟申請を実質拒否している、構図か。

 集団安全保障機構であるNATO,そしてもう一つはウクライナ政府が堅持し国民の支持を集めるクリミア奪還と東部二州占領地奪還の問題です、NATO加盟各国の懸念には仮に停戦した場合で上記地域がロシア占領下のままの場合、ウクライナがこの地域の奪還を行うことを懸念し、その為にNATOに加盟させ行動を制限させる意図があるのかもしれません。

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【京都幕間旅情】葵祭,青空の京都は新緑溢れる五月の鴨川をわたり下鴨神社へ向かう京都三大祭歴史行列

2023-05-20 14:41:09 | 日記
■上皇猊下も天覧
 晴れてよかったという言葉を改めてかみしめるのです。

 葵祭、行ってきました。例年五月のこの季節は忙しくなってしまい、まあ毎年観ようと思えばみられるし、ねえ。と悠長に構えていましたらやってきたのは歴史行列ではなくCOVID-19の災厄、そう、もう丸々三年間、葵祭の行列そのものが無かったという。

 上皇猊下と上皇后陛下が天覧されるという葵祭、考えてみれば凄いことなのだなあ、令和時代を迎えられて良かったと感慨深いのですが、それと同じくらい感慨深いのは、果たして撮影する事は出来るのか。撮影場所も大切なのですが、先ず現地へ行けるのか、と。

 月曜日は忙しいホントに忙しい、残念だ、かなしい、せめて火曜日ならナア。こう思っていたところに不幸中の幸いと云いますか、月曜日が雨天となり、火曜日に順延となりました。火曜日も忙しい、残念だなあ、というよりも順延が決まったので猛烈にお仕事した。

 火曜日は午後からなんとか時間を確保できたのだけれども、引き継ぎを早めに終われば行列の開始には間に合わないけれども、正午近くになんとか行けるかもしれない、すると1030時に京都御所を出発するところは間に合わないけれども、葵橋のあたりまでは行けるか。

 河原町今出川のあたりならば、間に合いそうか。大規模な交通規制が敷かれる京都市内ですが、脇道は確実にぬけられる幾つかの経路が有りますので、移動経路を慎重に考える。すると、行けたのだけれども府警さんが、立ち止まって撮影しないようよびかけている。

 行列を視られただけでも良かったと考えまして、わたしも行列のように、立ち止まらずに歩きながら撮影、と。望遠レンズで圧縮効果を狙うのも良いかもしれませんが、しかし歩きながらでもなかなか良い絵になるものなのですね。それにしても晴れてよかったです。

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G7広島サミット開幕-ゼレンスキーウクライナ大統領訪日G7サミット出席と単独"広島ビジョン"核軍縮の課題

2023-05-20 07:00:12 | 国際・政治
■臨時情報-G7広島サミット
 バイデン大統領が一時米国債務上限問題により来日が危ぶまれた際にはG7サミットの前途を憂慮しましたが、杞憂でした。

 ゼレンスキーウクライナ大統領が、G7広島サミットへ出席するべく訪日します。驚きました、いや今回のG7サミットは前回の伊勢志摩サミットよりも遥かに厳しい警戒態勢が敷かれ、これは何かあるのではないかという声をお聞きしたのですが、当方は昨年の安倍元総理暗殺事件を受けての警備強化だろう、と踏んでいたのです。しかし、そうではなかった。

 ゼレンスキー大統領は本日土曜日に日本へ到着し、日曜日に演説するという。戦時下の大統領訪日は過去に例がなく、この為に不測の事態が在ってはならないということでの警備強化といえるでしょう。核兵器廃絶や気候変動対策と金融危機という問題はありますが、ウクライナ戦争が拡大し核戦争となっては気候変動対策さえできない、サミットの主題だ。
■防衛装備供与の覚悟を
 日本はウクライナ支援に武器を含まない事で中立を保とうとしていますが、肝心なロシアがこの日本の姿勢を中立と評価していない点は忘れるべきではない。

 日本はそろそろ腹を決める時ではないか、具体的には一個中隊でも90式戦車を供与するとか、ウクライナ本土防空に一発でも必要なホーク地対空ミサイルなどの供与の決断です。90式戦車、まだ本州では第9戦車大隊や第10戦車大隊に第13戦車中隊と、ひとつ前の74式戦車は残っているところですが、北海道ではいよいよ90式戦車の退役が始りました。

 90式戦車、ウクライナへ供与しても使うのは当面の間だけですので、用途廃止した車両を解体せず、整備した上でウクライナ軍へ引き渡せばよい、増強小隊の5両でも中隊所用の13両でも、自衛隊で用途廃止した車両は更に税金を掛けて解体します、それくらいならば、日本はロシアから中立国と見做されていないのですし、装備を供与して良いのではないか。
■単独声明“広島ビジョン”
 核兵器国が核兵器を維持している背景には核抑止力の均衡というものもあり厳しい立場であることも多少留意すべきなのでしょうが。

 核軍縮について、岸田総理大臣は単独声明“広島ビジョン”をまとめました。これは核兵器国を含めての合意形成が事実上不可能である点を踏まえてのものでしょう。ただ、“広島ビジョン”は単に核軍縮を題目的に掲げるのではなく、“不透明な核武装”を排して透明性を確保することにより、先ず核軍拡の停止を盛り込む、実利的な施策が含まれるという。

 不透明な核武装、これは米ロに関しては保有核兵器が戦略兵器制限条約などにより明確化されていますし、イギリスはポラリス交換協定により弾頭の数が管理され、フランスも明示している、しかし中国は核弾頭数を200発以上と発表した後に明確な数字は伏せており、少なくとも1000発弱、数年内に大台を超えるとされています、この透明化ならば、G7の合意も得られるのかもしれません。

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