北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和五年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2023.05.20-2023.05.21)

2023-05-19 20:00:35 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 京都に上皇猊下と上皇后陛下が巡幸され今年の葵祭は特別な気分で迎えられましたが広島にはゼレンスキー大統領がG7サミットへ出席される、そんな今週末の行事紹介です。

 第3師団創設62周年千僧駐屯地創設72周年記念行事、伊丹市千僧に司令部を置き京阪神紀州地域を防衛警備管区として受け持つ第3師団の創設記念行事です。わたしは昔からこんなものかな、と思っていたのですがいろいろみていますと全国の師団行事の中ではかなり手狭な式典会場において式典から観閲行進に訓練展示まで一通りの行事を執り行います。

 千僧駐屯地祭、式典会場がかなり手狭なのですが、入れる限り目一杯入場者が集まりまして、これには師団広報も驚くほどなのですが、観閲行進を真正面から見る事が出来る撮影位置や、訓練展示は榴弾砲や戦車等、空包射撃普通科部隊の突撃などを意外と近い場所から見る事が出来まして、戦車に代わって配備された16式機動戦闘車等が注目でしょう。

 地域配備師団、正確には地域配備師団も機動運用へ充てられる事は2022年に決定したのですが、第3師団は今年3月に師団改編を受け、第3戦車大隊と第3偵察隊は廃止、かわって第3偵察戦闘大隊が新編されています。そして伝統的とさえいえた74式戦車は師団から2個中隊とも姿をけし、かわって16式機動戦闘車が配備、空包射撃の迫力も受け継ぐ。

 第7師団創設68周年東千歳駐屯地創設69周年記念行事、師団祭もここまで違うのだ、と驚かされるものですが第3師団祭と同じ日に北海道千歳市では東千歳駐屯地祭が行われます、千僧駐屯地から阪急伊丹駅までは30分かかりませんが、東千歳駐屯地は正門から式典会場まで徒歩で30分近く掛かるという、同じ師団駐屯地でもこれほど広さがちがう。

 機甲師団、こう師団司令部には大書されている通り、第7師団は戦車連隊を中心とした機甲師団という編成であり、有事の際には特にロシア軍などの重戦力の着上陸に際して、道北の第2師団、道東の第5旅団、道央道南の第11旅団が防衛線を構築し釘づけとしている状況に機動打撃力を発揮し、大量の戦車を集中投入し一気に叩き潰すのが師団のやくわり。

 東千歳駐屯地祭は、実弾射撃こそ行いませんが訓練展示に参加する戦車の数は、あの富士総合火力演習よりも大きく、90式戦車や10式戦車とともに89式装甲戦闘車や73式装甲車と99式自走榴弾砲に87式自走高射機関砲が自由自在に走り回る様子は、これくらいの装備が有ればロシア軍が侵攻してきても押し返せるのかな、という力強さが伝わります。

 横田基地日米友好祭2023、土曜日と日曜日に開催されます。在日米軍司令部の置かれる日米同盟の中心というべき基地であり、またアメリカの西太平洋戦略において、横浜瑞穂埠頭と相模原総合補給処とともに横田基地を結ぶ三角形は、朝鮮半島情勢や台湾海峡情勢に際し、地域安定化へ兵站支援という形で強烈に戦線を支える戦略的要衝となっています。

 エアフォースワン、今年の目玉は、といいますか昨年の横田基地日米友好祭でもバイデン大統領が搭乗したエアフォースワンが日米友好祭の真っただ中に来日しまして、これは凄い事になった、と驚かされたもので、わたしもいけばよかったなあと悔しい思いをしましたが、今年もG7広島サミットに関連して、その雄姿を見る事が出来るかもしれません。

 横田基地、入場に際しては国籍証明ができる身分証明書が必要となります、抽出検査の場合もありますが油断して持っていないと冗談抜きで入る事ができませんのでご注意ください、繰返しますが在日米軍司令部が置かれる基地、そしてゲートは航空自衛隊航空総隊司令部も置かれる横田基地を守るべく厳しい検査などが行われる事を、御留意下さい。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・5月21日:第7師団創設68周年東千歳駐屯地創設69周年記念行事
・5月20日・5月21日:横田基地日米友好祭2023
・5月21日:第3師団創設62周年千僧駐屯地創設72周年記念行事

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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スーダン政情不安:アメリカ海兵隊の失敗-26MEUと強襲揚陸艦非戦闘員保護訓練中なるも展開出来ず

2023-05-19 07:00:27 | 国際・政治
■臨時情報-スーダン情勢
 31隻の揚陸艦では世界規模の即応体制を維持する上では不足しているという。

 アメリカ海兵隊とアメリカ議会は水陸両用作戦艦艇31隻体制の可否について対立関係にあるもよう。これは4月に発生したスーダン政変に関するアメリカ市民退避へ、非戦闘員の紛争地から救出する任務に適した海兵隊がスーダンへ展開可能な部隊が存在せず、アメリカが実施できたのは無人偵察機による退避経路の監視任務だけであった背景がある。

 第26海兵遠征群、実はスーダンでの緊張が高まる中、アメリカ海兵隊は同時期にノースカロライナ州ルジューヌにおいてMEUによる非戦闘員救出訓練を実施、この訓練には強襲揚陸艦バターンが参加していたことから、もし強襲揚陸艦バターンとともにこの26MEUがスーダン近海へ展開していたならば、非戦闘員退避支援に十分な能力があったという。

 バターンは、しかし26MEUが展開しなかった背景には、26MEUはローテーション待機に向けての練成課程にあり、作戦遂行能力がなかったためと説明されています。MEUの展開には多数の両用艦艇が必要である一方、現在アメリカ海軍が保有する両用艦艇は31隻であり、アメリカ海兵隊は31隻が必要最低限を下回る規模であり、増強を求めています。

 連邦議会は、逆に水陸両用作戦能力は現在でも過剰であるという立場から2024年には更に31隻の両用艦艇を削減する方針を示し、実際にスーダンでのアメリカ市民退避支援任務に艦艇が足りない状況を無視しているとし、海兵隊は反発しているのです。そしてスーダンのアメリカ市民はハルツームから国境まで1000㎞を自力で移動することを求められた。

 トルコシリア地震、海兵隊の水陸両用艦艇不足が指摘されたのは今年に限って見てもスーダン政情不安に加え、2月6日にトルコ南部とシリア北部を震源として発生した巨大地震、死者数は5万6000名以上と日本の東日本大震災の三倍近い死者数を数えた巨大地震に対して、投入できるMEUがなく、トモダチ作戦のような支援を展開できなかった事例が。

 31隻の艦艇、アメリカ議会では6月にも現在の水陸両用艦艇を31隻以下に削減するかを決定する方針であり、これは同時に揚陸艦を建造するインガルス造船所の縮小をも左右し、一度削減された場合、元の規模に戻す際に非常な長期間を要する可能性があります。自国民救出さえできなかった現状を議会がどう考えるのか、その決定は間もなくとなります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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T-38は何故墜落したのか?【3】寛容であれ-アメリカ空軍の事故再発防止策,萎縮よりも闊達な交流と配慮

2023-05-18 20:23:33 | 国際・政治
■航空用語と英語で操縦
 言語の壁はあるという現実とともに如何に乗り越えるかをアメリカは、学生がもっと勉強しろではなく教官が寛容であれという姿勢を示した点が印象的でした。

 日米同盟を強化するには英語力が必要だけれども、結局のところ部内英語課程の枠には限度があり、全部隊が英語力を共同運用化可能としているNATOのような水準に高める事は現実的に不可能であるし、なによりも日本の義務教育は非英語圏での高等教育を志向したものではないし、また、それだけの英語力がある人材を自衛隊に集めるのは難しい。

 難しいは努力の問題、こう反論されるかもしれ無けれども、例えば幹部候補課程の選抜試験へ英語比重を高める、若しくは一般教養の問題をすべて英語表記することにより、逆にそれ以外の素養のある受験者を振るい落とすことで簡単には達成できるかもしれない、けれども語学素養偏重の募集を行えば外国語学部出身者に人材は偏重することも否めません。

 国防語学研究所英語語学センターの英語課程履修者で単位不認定による退学事例はほぼ無いという事ですが、その先の操縦課程では78%しか修了できないという。そしてもう一つ、2013年から2023年までアメリカ空軍関連の航空機事故による死亡者は80名ですが、このうち外国人の占める割合は6%で、空軍はこの語学と事故の関係を特に留意している。

 国防語学研究所英語語学センターの英語教育について、もう一つ指摘されているのは語学力と無関係の意思疎通能力が求められるということです。国防語学研究所英語語学センターでは高度な英語が教育される、それは各国士官が留学するため、リーダシップ論や戦術論など、基本的な英会話に重ねての応用会話により指揮官を育てる点が重視される。

 アルファズールー語という、これは少数民族言語などではなくAをアルファBをブラボーCをチャーリーという無線通信単語です、航空機の操縦では音声だけであり再確認が航空戦闘などの状供養では難しいこと、無線機のキー信号や略称による通信を行い、訛りなどによる意思疎通の失敗を避けることが航空無線では重視されます、会話力ではない。

 航空機事故を検証しますと、例えば日米以外のアジア圏では目上への尊重文化により、副操縦士が操縦士の誤操作に気づきそれとなく伝えたものの、それとなくでは間に合わず墜落した事故がありました、要するに操縦士!いまのは誤操作です!と副操縦士が警告すべきところを恥をかかせることでの人間関係や人事査定を恐れ、結果墜落したという。

 米国留学課程は100か国から受け入れるために、アメリカ空軍は文化的な違いに留意しているようですが、教官と学生の関係、学生はわからないことを何度でも遠慮なく聞けばよい、というアメリカ式の文化そのものが世界標準ではなく、学生が尋ねなければ教官は学生に疑問はないと思い込む、学生は何度も聞くことを恥ずかしがる、という過程もある。

 六か月ではなく語学課程は一年間必要なのではないか。事故調査報告書はこのように是正勧告しています。ただ、国防語学研究所英語語学センターだけの問題ではなく是正の難しさもあるようです。具体的には、語学課程を一年とした場合、留学が全体で大幅に伸び、NATOからの留学生の倍近い期間を要することとなります。また現場の教育も検討される。

 現場での教育とは、国防語学研究所英語語学センターの英語教育課程を修了した後に教育を担当した教官はここで任務完了となり、その後の教育課程には参画しない、という事への問題視です。つまり、非英語圏の英語課程修了者が、どのような語学的な悩みを有しているかを、先ず操縦課程に進んだのちの最初の一か月で語学教官を現場へ派遣するという。

 コックピット内の操縦訓練の様子をすべて録画して検証する、手間はかかる方式ですが教官操縦士が学生操縦士の、コックピットにおけるコミュニケーション能力をどの程度有しているか、こうしたものを映像により記録し検証する方法なども検討されているとのこと。また、語学教育にアルファズールー語など操縦用語を含むべきとも指摘されました。

 教育効果のフィードバックが目的とされていますが、特に語学にストレスを感じた場合でも、操縦課程に進んだ先には語学を再履修する余暇はなく、そのままストレスをため込むことになるということです。また操縦教官は語学上の問題を精査する専門家ではなく意思疎通の問題を抱えたまま、おおきなボタンのかけ違いに気づかずさらに高度な訓練へ。

 空軍は当面の解決策として、寛容になる、という姿勢が重要であると報告書はまとめられています。アメリカ空軍の士官が例えば日本や韓国とアラブの飛行学校にアメリカでは絶対に行わない特殊な飛行方法を学ぶために留学することを想像する、アメリカへ学びに来る彼らはその難しさに直面しているのだ、という視点が重要であるとしています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢:首都キエフ防空戦激化!相次ぐロシア軍ミサイル攻撃とペトリオットミサイルの戦い

2023-05-18 07:00:21 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナの首都防空戦は激しいミサイル戦でありミサイル迎撃戦となっています。それはミサイル防衛を突き付けられる日本にとり重要な関心事だ。

 5月16日、京都市内が葵祭でにぎわう最中にロシア軍はキエフへ大規模なミサイル攻撃を実施したとのこと。ウクライナ国防省の発表によれば撃ちこまれたミサイルは18発で、内6発がキンジャール極超音速ミサイル、虎の子のカリブル巡航ミサイルも9発含まれ、残るものは短距離弾道弾と思われるとのこと。ウクライナ軍は全機撃墜を発表しました。

 キエフへのミサイル攻撃は一時低調でしたが、この数日間で再開され始めており、ロシア軍にミサイル製造とともに一定程度の備蓄が出来た事を示すのかもしれません。心配なのは迎撃に当るペトリオットミサイルのミサイル備蓄です、アメリカに加えドイツでのライセンス生産が開始されましたが、ミサイルの生産供与競争が戦争の趨勢を決めるでしょう。
■ペトリオット損傷
 ウクライナ軍のペトリオットミサイルはロシア軍にとり最優先目標となっているようです。

 ペトリオットミサイルが16日の攻撃により損傷した、CNNやAFP通信などが一斉に報じました。CNN報道によればアメリカはペトリオットミサイルの損傷度合いを評価中で、全損には至っていないが、修理をウクライナ国内で防空砲兵部隊の列線整備範疇で可能であるのか、一旦ウクライナ国外に出して大規模な修理が必要であるか、調査中とのこと。

 キンジャール極超音速ミサイルがペトリオットミサイルシステム攻撃に用いられました、キンジャールとペトリオットミサイルの対決は一回戦ではペトリオットが勝利しましたが、二回戦も同様という訳にはいかなかった模様です。キエフ防空にはアメリカが供与した一基とドイツとオランダが共同で供与した一基のペトリオットシステムが当たっています。
■情報保全の戦い
 現代の軍隊において情報保全は大変なものでスマートフォン一つとって途轍もなく危険な武器ともなり得ます。

 ウクライナ国防省は自国民に対し、キエフ市内におけるミサイル戦の映像をSNSへ掲載する事は利敵行為であると非難しました、ウクライナでは戦闘部隊の概況等の情報を許可なく掲載する事は刑事罰に問われます。具体的には、16日のミサイル迎撃戦の様子が複数のSNSに掲載され、その背景などから防空砲兵部隊の展開場所が推測できるものを含む。

 報道管制、という表現ではありませんが、1991年湾岸戦争ではイスラエルのテルアビブ市内でCNNなどがイラク軍スカッド攻撃を連日報道し、イラク軍へ目標との誤差を知らせる事となった苦い経験があります。キンジャールミサイルがペトリオットを狙う際、ウクライナ当局はそのペトリオット部隊の位置がどこから暴露したか、警戒しているのでしょう。

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【京都幕間旅情】仁和寺-御室桜,歴史舞台つつむはやかった京都観桜季節の大団円を飾る遅咲き桜の満開

2023-05-17 20:23:15 | 写真
■仁和寺-中世は政治舞台
 これが四月初旬の写真というから驚きなのですが京都の桜特集は今回の仁和寺が大団円となります。

 仁和寺、ここは衣笠山を見上げる京都市右京区御室大内、山手に、しかし意外なほどの規模を以て広がる寺院となっています。この仁和寺とともに衣笠山の山麓一帯は、きぬかけの路という歴史文化地区を形成していまして、東へ向かえば金閣寺へといたるのです。

 仁和寺は、京都の桜尾大団円を飾る委員といえるかもしれません、それほどに遅咲きの桜でして、周りのソメイヨシノが青葉となっている時節にそろそろかと訪れますと三分咲きであったりする、遠目には散っているように見えてまだ咲いていないおもはゆさがある。

 衣笠山と仁和寺、そう仁和寺です。随分前の話ですので恐縮ですが、山陰線の高架を列車にて進む際、ふと壮大な寺院が電車の車内からも見えたものでして、いや規模として妙心寺、山陰線の隣接する妙心寺の方が大きいはずなのですが、驚かされたことがありました。

 妙心寺は高架から近く、しかし仁和寺はやや山手と標高のある立地に鎮座していますし、そして伽藍も五重塔含めて大きいものですから、周りに比較する建物もなく、一角が広く寺院の寺域となっていることもあり、なるほど大きく見えたのだなあ、と。実際大きい。

 真言宗御室派の総本山、仁和寺は元々は天台宗寺院でしたが、その草創期に真言宗寺院となり今日に至ります。しかしその歴史は、といいますと京都への平安遷都から百年を経た頃という、それはそれは長い歴史を連綿と受け継いでいる、日本史の源流にちかいところ。

 古都京都の文化財の構成資産として世界遺産に登録されている寺院の一つなのですが、しかし桜の季節と紅葉の季節を除けば拝観料は庭園を拝観する際のみでして、数多時代劇で有名な五重塔の真下まで毎日通う事さえできるという、実は開かれた寺院という。

 光孝天皇の勅願により創建されることとなりましたお寺、時は仁和2年こと西暦886年、しかし光孝天皇は寺院完成を見ることなく翌年崩御し、宇多天皇によって仁和4年こと西暦888年に落成、今日に至る連綿たる歴史を紡いでいる京都の寺院の一つなのです。

 御室桜、とともにさて2023年桜花の季節を最後に巡る事としましたのは、一寸別のところで調べている研究対象に若干、この仁和寺というところが出てきまして、ここで気分転換とするならば行く先には仁和寺でゆったりし、きぬかけの路でパフェだろう、となった。

 護憲、という言葉が京都では良く響くところですが、人口100万規模の都市に対する大学の数というものが影響しているのか、仏教思想と平和というものが偶然にしても現行憲法と重なる為かというのは難しいところですが、四条で河原町で京都駅前で良く耳にする。

 憲法が有るからこそ護憲という概念が生まれるのだけれども、しかし民権という概念が今の憲法の原型である大日本帝国憲法制定の1889年という時代、その前にはどのように扱われていたのだろう、そもそも武家諸法度以外の全国的な法体系とは、と考えてしまう。

 仁和寺に来て憲法かよ、と思われるかもしれませんが、まあ憲法そのものには関係ない所ではあるものの、Constitutionという概念、和訳すると憲法と構造にしかならないこの概念が徐々に形成される一翼を担った寺院の一つに仁和寺が含まれることもまた事実です。

 Constitutionの概念、人権と共に統治機構の在り方を示しているものが憲法なのですが、多分に日本の明治憲法制定過程は文明国の末席でも宵から到達する為の理想論とともに、しかし国文学と史学とを織り交ぜた日本独自の価値観を盛り込もうとしたことは当然だ。

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【京都幕間旅情】法金剛院,天皇の親しんだ庭園は右大臣清原夏野と中宮待賢門院藤原璋子の紡いだ浄土式庭園

2023-05-17 20:00:36 | 写真
■千年の庭園をめぐる
 千年を超える寺院というものはそれだけ表記される歴史以上に情緒というものをたたえているものなのです。

 法金剛院は平安遷都の頃の右大臣清原夏野邸宅、庭園は水木に溢れ天皇が幾度も行幸した邸宅をそのまま卿の没後に寺院としたことが起点であることは記しました。しかし当時の仏教もまた揺動期であり、宗派と信仰の寄る辺は変革がなければ必衰の時代でした。

 待賢門院藤原璋子、時代は平安朝末期の11世紀となりますが、法金剛院は歴史の彼方へ掠れ行こうと黄昏時を迎えつつある中、恰も水平線に陽炎の先の朝日のように中興を担う転機が訪れようとしていました、その人こそが時の中宮で皇后の待賢門院藤原璋子さん。

 鳥羽天皇皇后であらせられた待賢門院藤原璋子、NHK大河ドラマ新・平家物語、少し古い作品ですが久我美子さんが演じていまして再放送世代なのですが、美しかった。あの平田昭彦さんと結ばれた高貴な女優さん。実父は藤原公実ですが幼い頃に旅立たれている。

 白河法皇が天皇の時代に養父となりまして藤原璋子を育て、後に鳥羽天皇の皇后として迎えられた。白河天皇、そう白河天皇という名は日本の転換期の一人という、そして白河天皇は院政をはじめ白河法皇と上られましたが、同時代に平清盛や源頼朝が歩んでいた。

 平清盛や源頼朝、武家政治の時代の萌芽、というこちらのほうが時代の転換点でもあるよう思えるのですが、白河法皇の時代は日本における多極化の時代であり、一つはもちろん時代が示す武家政治が関連しているのですけれどももう一つは寺社勢力の再興という。

 石清水八幡宮、白河法皇が保安4年こと西暦1123年に石清水八幡宮へ、王法は如来の付属により国王興隆す、という告文を掲げていまして、つまり日本版の王権神授説のような、仏が国権を天皇に導いているという告文を示し、寺社勢力の取り込みを図っています。

 熊野詣や春日詣も盛んに行い、片や法勝寺や尊勝寺などの造営を盛んに行っています。院政は、天皇を守るためという題目ではありますが、例えば当時の熊野詣ではいまのように特急くろしお号で日帰りという訳にはいかず、二か月程度を要する一大行事でした。

 白河法皇は寺社勢力の取り込みを行い皇室の安定化を図るには、天皇へ権力を集中した場合には二か月間首都を空ける訳にはいかず、いわばこうした行政上の要求が、院政、という見方によっては二重権力時代を醸成したともいえる。待賢門はそんな時代のひと。

 天安寺、これまで法金剛院法金剛院と紹介していましたが、当時の山号は天安寺であり、これは9世紀中ごろに時の文徳天皇が定めたもの、待賢門さんは落飾に際しこのお寺に入られ、その際に名を今の法金剛院と改められたという、そして荒廃した寺院を再興へ。

 西御堂と九体阿弥陀堂、そして待賢門さんの御所を整備し、その上で浄土式庭園を整備した。庭園にある青女ノ滝はこの時に林賢というひとの技術で整備されたといい、人工滝としては日本最古のものであるとともに、いまも清冽な水の流れを奏で湛えています。

 浄土式庭園は、池泉回遊式庭園であるとともに、確かに周りに山陰線と丸太町通りは舗装されていますが、法金剛院の立地はいまと昔、そうかわらないという。待賢門さんは絶世の美女とされ、崇徳天皇や後白河天皇の実母である関係から当院へは天皇行幸も多い。

 円覚十万上人、さて現代にいたる法金剛院の歴史ですが弘安2年こと1279年に律宗寺院と改めまして開かれた寺院となり多くの人々共に今も歴史を紡いでいます。そして美しい桜と青女ノ滝の奥に花園西陵、法金剛院の直ぐ北に待賢門さんはいまも眠っています。

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ウクライナ情勢:イギリス政府のF-16ウクライナ配備計画とロシア領内セシャ空軍基地への無人機反撃

2023-05-17 07:00:15 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 F-35戦闘機のNATO配備とともに置換えの対象となっているのがF-16戦闘機なのですが。

 イギリス政府は5月15日、ウクライナに対するF-16戦闘機供与をパートナー国との間で検討していることを公式発表しました。具体的にはイギリスが今夏にもウクライナ空軍パイロットに対してF-16戦闘機の訓練支援を開始するとしています。ただ、イギリス空軍にはF-16戦闘機は配備されておらず、パートナー国の詳細は明らかにされていない。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間5月15日にドイツを電撃訪問し、ショルツ首相と首脳会談を実施、戦車などの支援を受けるとともに別の装備についても議論中と共同声明にて発言しました、同じ15日にゼレンスキー大統領はフランスに到着しマクロン大統領と首脳会談に臨み、改めてウクライナ空軍への戦闘機供与を主題としました。

 ロシア軍の侵攻を圧しとどめるウクライナ軍に対して最大の課題は空軍力の不足で、特にNATO各国の装備は航空優勢確保を念頭とした装備が多く、一方でロシア軍の空対地攻撃は低調ですが、ロシアは空軍力を温存しているため。他方、各国が訓練が必要な戦闘機供与に及び腰である背景は、これほど戦争が長期化すると思わなかった点もあるでしょう。
■セシャ空軍基地
 キエフを攻撃していた無人機基地が逆に無人機で逆襲されました。

 ウクライナ軍がロシア領内のセシャ空軍基地に対して5月3日、大規模な無人機攻撃を加えたと、戦況を解析するイギリス国防省が発表しました。セシャ空軍基地はウクライナ国境から150㎞ほど内陸の輸送機部隊基地であり、VTAロシア軍事空輸司令部の重要拠点であるとともに、キエフを攻撃するイラン製無人機の基地であると分析されています。

 ウクライナ軍の攻撃では少なくともAn-124輸送機1機が破壊されたとのこと。この輸送機はイランからの無人機輸入に重要な役割を担うとともに、製造はウクライナのアントノフが冷戦時代に製造、ただ整備はロシアのウリヤノフスクにおいて行われている。内陸部の基地攻撃は攻撃一辺倒のロシア軍に本土防衛の重要性を突き付けることとなるでしょう。

 一方、5月13日に相次いで発生したロシア軍機撃墜事案は、今のところ原因が不明で、少なくともヘリコプターと戦闘機の合計4機が撃墜されていますが、ウクライナ軍防空砲兵部隊ではなく、ロシア軍のミサイルによる誤射の可能性が出てきました。これは無人機攻撃を受け、ロシア軍防空砲兵部隊が過度に緊張している証左といえるのかもしれません。

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【防衛情報】イギリスNSMミサイル導入と26型フリゲイト建造,スウェーデンコスター級掃海艇2隻の延命

2023-05-16 20:23:57 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の情報を。

 イギリス海軍はハープーン対艦ミサイルの後継としてNSMミサイルの導入を決定しました。イギリス海軍では2023年にも終了するハープーンミサイル艦対地型の後継装備を模索しており、今回対地攻撃能力を有することが実証されているNSMミサイルを採用したかたち。ミサイルは射程185km、飛行モード次第で射程が350kmに達するとされています。

 NSMミサイルはネイバルストライクミサイル、ノルウェーのコングスベルク社が開発し、空対地型のJSMミサイルは高高度飛行モードにより最大射程が555kmに達するとされています。ノルウェー製ですが、アメリカ海軍がLCS沿海域戦闘艦やコンステレーション級フリゲイトに採用、ドイツやポーランドなどNATOで採用も広がる新世代の艦載装備です。

 NSMミサイルの特色として、ミサイル本体のステルス形状が挙げられます。これはミサイルの上面部分がステルス設計となっていて、上下は対称ではありません、この設計の意図はシースキミングという海面近くを飛行する際に上空からの発見を回避するステルス設計であり、またミサイルの迂回機動など発射位置を秘匿する飛行経路の任意設定も可能です。
■レナサトクリフヒグビー
 アーレイバーク級の建造が順調に進んでいるのですがここまで同じ型式の水上戦闘艦を継続的に建造するのは史上初めてです。

 アメリカ海軍は11月30日、イージス艦であるミサイル駆逐艦レナサトクリフヒグビーを受領しました。DDG123として建造されたレナサトクリフヒグビーはフライト2A、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦はバランスのとれた艦隊防空駆逐艦として設計されていますが、初期型のフライト1はヘリコプターを搭載出来ない点が難点として認識されています。

 レナサトクリフヒグビーのフライト2Aは艦載機2機を搭載する能力を有しています。しかしアーレイバーク級は現在より新しいフライト3へ建造が移行していて、レナサトクリフヒグビーは多数のイージス艦を建造した実績のあるインガルス造船所において最後に建造されたフライト2Aとなっています。同造船所は複数のフライトⅢが建造中となっています。
■三つの空母戦闘群
 ロシア軍ウクライナ侵攻以来NATOは紛争拡大抑止の為に定期的な空母部隊集合をおこなっています。これは今後北東アジア地域においても同様の動きが出てくるのかもしれません。

 NATOは11月23日、三つの空母戦闘群をイオニア海へ同時展開させるアペルト22-2作戦を実施しました。これはロシア軍のウクライナ侵攻が長期化するとともにロシア軍ミサイルがNATO加盟国周辺地域において飛行し着弾するという緊張が続いており、圧倒的な海軍力の優位性を誇示するべく地中海のイオニア海へ空母を多数同時展開させたものです。

 アペルト22-2作戦に参加したのは、アメリカのジョージHWブッシュ空母打撃群、フランスのシャルルドゴール空母戦闘群、そしてイタリアのカブール空母戦闘群となっています。なかでもイタリア海軍は10月にNATO即応部隊海軍演習マーレ22に主力部隊として参加した直後の空母カブールの参加であり、極度の緊張とともに即応体制を誇示しました。
■シャルルドゴールにE-2D
 航空自衛隊でもE-2Cを置き換える事となるE-2Dですが艦載機として小型である点は搭乗員には使い難いかもしれませんが運用の柔軟性は高まります。

 フランス海軍は空母シャルルドゴールに搭載するE-2D早期警戒機を初の実戦任務へ参加させました。これはNATOエアシールディング作戦として実施されている、ロシア軍ウクライナ侵攻に伴うNATOへのロシア軍攻撃警戒監視任務の一環として参加したもので、NATO加盟国は共同で陸上基地から早期警戒機や早期警戒管制機などを派遣しています。

 シャルルドゴールに搭載されたE-2D早期警戒機は11月26日、地中海上で飛行甲板から発艦、そのままルーマニア上空に展開し7時間にわたる警戒監視任務を実施したとのこと。フランス海軍は空母艦載機としてE-2C早期警戒機を運用してきましたが、2020年にE-2Dを後継機として取得すると決定、現在3機の調達契約を結び装備化を進めています。
■イギリスNSMミサイル搭載艦
 45型駆逐艦が日本に初の親善訪問を行ったのは十年以上前でしたか。

 イギリス海軍はNSM艦対艦ミサイルの搭載艦艇として23型フリゲイトと45型防空駆逐艦を明示しました。NSMミサイルはノルウェーのコングスベルク社において生産され、BAEシステムズ社とハブコック社を経てイギリス海軍の艦艇へ搭載されることとなります。NSMミサイルは環太平洋地域ではオーストラリアとカナダ、アメリカで採用されています。

 45型防空駆逐艦は現在イギリス海軍に配備されている唯一の駆逐艦で満載排水量は7350t、6隻が建造され運用中です。23型もイギリス唯一のフリゲイトで16隻が建造されたものの3隻が中古艦として海外供与され現在13隻が運用中、満載排水量は4300tとなっています。NSMミサイルは対地攻撃能力を有しており、艦隊の戦力投射能力を大きく高めます。
■海底パイプライン海底監視
 隣国が多数の深海調査船を持っている日本にとっても余所事ではないのですよね。

 イギリス国防省は海底パイプラインなどの海底監視能力強化を推進中です。これは2022年9月にバルト海で相次ぎ発生したノルドストリーム2海底ガスパイプライン攻撃事件をうけ、海底通信ケーブルなどの重要インフラを防衛する切迫した任務に対応するもので、深海無人機などの導入を既存の装備計画変更による資金により進めるという構想という。

 深海6000m程度までの海底監視能力を想定しており、まず最初の段階として2400万ポンド以内の費用で深海用無人機を調達、更に中古商船を改修し新しく多目的海洋観測艦を導入し海底パイプラインや海底通信ケーブルの監視に当てるとのこと。このために既存の2億5000万ポンドの建造計画を変更して、更に一隻を建造、能力構築予算に充てる計画です。
■グラスゴーの進水式
 もがみ型護衛艦をみますと素早く建造してしまった点が。

 イギリス海軍は26型フリゲイト一番艦グラスゴーの進水式を挙行しました。グラスゴーはスコットランドのロング湖畔にある造船所において建造が進められており、2017年に起工式を迎え2022年12月に進水式を挙行したかたち、このまま計画では2024年に海軍に引き渡され公試を行った後、2026年に海軍での運用が開始される計画となっています。

 26型フリゲイトは現在イギリス海軍に装備されている23型フリゲイトを置き換える計画ですが、1990年代に建造された23型フリゲイトに対してイギリス海軍の艦隊規模縮小とともに一隻あたりの任務増大を受け、満載排水量は5割増大した6000t規模、この派生型は、GCSグローバルコンバットシップとしてオーストラリアやカナダなどに配備されます。
■高速戦闘支援艦
 ダイドー級として低速だが安価な補給艦を揃えたのでいよいよ整備するのは高速補給艦へ。

 イギリス海軍が導入する空母戦闘群用高速戦闘支援艦について11月16日、スペインのナヴァンティア社案が採用されました。ナヴァンティア社は北アイルランドのハートランドウルフ社と共同で高速戦闘支援艦を建造するとしています。高速戦闘支援艦は全長216m、3隻を建造する計画で総費用は16億ポンド、2025年から建造を開始する計画です。

 海軍では2032年までに3隻を竣工させる計画という。ただ、どの程度をスペインで建造するのか、雇用流出防止の観点からイギリス国防省は今後交渉するとしています、こういうのもイギリスでは造船業の不振が深刻であり、ハートランドウルフについても2019年には閉鎖の危機から大規模ストライキが行われ、国内建造を求める産業界の要望があるのです。
■ニュージーランドP-8A
 対潜一辺倒のP-1とことなりP-8Aは色々な用途に使えますからね。

 ニュージーランド空軍はP-8A哨戒機初号機の引き渡し式を挙行しました。これは12月9日にシアトルのボーイング社工場において実施されたもので、ニュージーランド空軍が進める4機のP-8A哨戒機導入計画の鏑矢となるものです。ニュージーランド空軍では現在P-3K2哨戒機6機を運用していますが、長期間の運用で老朽化が深刻となっていました。

 P-8A哨戒機について、ニュージーランド空軍は現在P-3K2哨戒機を配備しているオハケア空軍基地への配備を計画しています。近年ニュージーランド軍は長年重視していた南氷洋の警戒監視とともに中国海軍の南太平洋地域での活動活性化を受け航空哨戒能力の強化をすすめています。ボーイング社によれば4年以内に残る3機を引き渡すとのことです。
■艦艇三割以上出航不能
 人員不足は日本でも挙げられるところですがニュージーランドの場合は水兵を無茶苦茶な任務に充てた結果がこれ。

 ニュージーランド海軍は深刻な人員不足により艦艇の三割以上が出航できない状況にある、国防軍のケビンショート元帥が厳しい状況を明らかにしました。この三割というのは9隻の哨戒艦のうち3隻が無期限でデボンポート海軍基地に係留されている状況ということであって、海軍労働環境の悪さから人員が海軍に応募しないことがその要因とされている。

 ウェリントン、オタゴ、ハウェアの3隻が無期限出航不能となっているとのことで、現在海軍は16.5%の定員割れに陥っているようです。労働環境の悪さとはCOVID-19拡大期に乗員の多くを検疫施設運営に転任させたものの、その多くの乗員が復職する事無く離職してしまい、その後に哨戒艦を運用する際、乗員を確保できないことが理由とされています。
■コスター級掃海艇延命
 スウェーデンを見ていると問題は老朽化というよりも掃海艇の建造能力が失われているところにありそうで、日本の将来を見ている。

 スウェーデン海軍は老朽化が進むコスター級掃海艇2隻の延命を決定しました、コスター級は現在5隻が運用されており、機雷掃討に加えて爆雷を搭載し沿岸部における対潜掃討任務にも対応しています。これら5隻は2010年までに延命工事が行われていますが、その改修もすでに10年以上を経ており、今回改めてさらなる延命改修が行われるとのこと。

 コスター級掃海艇はスウェーデンのサーブ社において建造、サーブ社は延命改修についてもオプション契約を提示しており、これを今回公使することとなりました、その金額は3億5000万スウェーデンクローネといい、これは米貨換算では3300万ドルに相当します。スウェーデン海軍はバルト海における機雷掃討能力の強化を理由として説明しました。

 機雷掃討能力について、2022年より課題となっているのはロシア軍ウクライナ侵攻に伴う欧州安全保障環境の激変ですが、バルト海にはロシアバルチック艦隊の基地があり、そしてもう一つ、ロシア海軍は帝政ロシア時代からソ連海軍時代を含めて機雷戦を重視しているという背景があります、機雷はもっとも費用対効果の高い兵器とも考えられています。
■ロバートスモールズ
 艦名は艦番号でおぼえるので艦名だけ変えられると本当に混乱するのです、艦番号からかえてみてはどうなのだろうか。

 アメリカ海軍はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦チャンセラーズビルをロバートスモールズに改称する決定を行いました。チャンセラーズビルは1989年に竣工したミサイル巡洋艦、計画では2026年に退役予定です。艦名を変更した背景にはいわゆる“黒人人命尊重運動”と関係、南北戦争で南軍に徴兵され脱走し連邦軍へ合流したアフリカ系兵士の名です。

 チャンセラーズヴィルの戦い、ミサイル巡洋艦チャンセラーズビルの名も実は南北戦争に由来するもので、1863年にヴァージニア州において南軍のリー将軍が北軍のフッカー将軍を破った戦いが由来です。古戦場の名はエセックス級空母に採用されタイコンデロガ級巡洋艦に受け継がれた名もありますが、チャンセラーズビルは初の命名となっています。


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ウクライナ情勢-ドイツ政府戦車等21億ユーロ追加支援とストームシャドウ発射,ロシア第4自動車化狙撃旅団司令部攻撃

2023-05-16 07:00:52 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍が本格的に二世代前のT-55を投入した報道を見ますと日本も三月に廃棄した74式戦車をウクライナに供与した場合で充分活躍できそうに思えるのです。

 ウクライナ軍事支援へドイツ政府は13日、戦車を含む合計21億ユーロ規模の追加軍事援助を発表しました。これには第二世代型のレオパルド1主力戦車30両、マルダー装甲戦闘車20両、ゲパルト自走高射機関砲15両、大型無人偵察機200機、射程25㎞のIRIS-T空対空ミサイル4基、装甲車両及び輸送車両200両、弾薬などが含まれるとのこと。

 ゲパルト自走高射機関砲は先月、ロシア側の発表により無人機攻撃を受けたとされ、公開された映像ではレーダーが停止した待機状態のゲパルトへ小型無人機が命中する様子が映されていました。ただウクライナ側は命中を認めつつ、破損個所を修繕し戦線へ復帰したとの事、ゲパルト自走高射機関砲は戦車に随伴するべく各所に装甲が施されています。
■ストームシャドウ
 ウクライナ軍は供与を受けた射程の長いストームシャドウ巡航ミサイルを早速投入した可能性があります。

 ルガンスクへのミサイル攻撃にはイギリスより供与されたストームシャドウミサイルが使用された可能性が高いとのこと、これは現地での撮影画像にストームシャドウ一部と形状が酷似した破片が確認されており、事実であればこれまで各国がウクライナへ供与した装備の中で最も射程の長いストームシャドウがいち早く実戦へ投入されたこととなる。

 ウクライナ軍は2014年以来親ロシア派占領下にあるルガンスクへのミサイル攻撃を維持しています。ルガンスクは人口40万規模の都市でロシアが2021年に一方的に本土へ併合したルガンスク州の州都です。ここへウクライナ軍がミサイルにより反撃した際、アメリカが供与したHIMARSでは射程外であることからその手段に様々な憶測が流れていました。
■第4自動車化狙撃旅団
 バフムト攻防戦は明らかにロシア軍の攻勢限界から戦況が一転し始めている。

 バフムト南西郊外においてロシア第4自動車化狙撃旅団の指揮所が攻撃を受け大きな損耗を被った、同旅団は第124旅団とも呼ばれ、ロシア国営タス通信によれば旅団長と副旅団長及び参謀長など数十名が戦死したとのこと。詳細は不明ながら旅団司令部が全滅したわけではなく、負傷し後送中に戦死したと伝えており、後方連絡線は保たれている。

 第4自動車化狙撃旅団、旅団長はヴァチェスラフマカロフ大佐と副旅団長にエフゲニーブロスコ中佐が補職されています、旅団司令部が攻撃を受けた状況は不明で可能性として、前線が突破され司令部まで到達された、若しくは前線指揮へ旅団司令部が全員前進した、または通信電波を標定され重要指揮所と見做され集中砲撃を受けた、などの可能性がある。

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【防衛情報】F-35最新情報-ポーランド向け初号機とチェコ軍の導入検討,AN/ASQ-239電子戦システム

2023-05-15 20:08:18 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はF-35最新情報を纏めました。

 ポーランド空軍が導入する最初のF-35戦闘機がロッキードマーティン社により組み立てが開始されました。これはジョージア州マリエッタのロッキードマーティン社F-35中央組立ラインにおいて開始されたもので、組み立てが開始された4月13日、ポーランドのモラヴィエツキ首相が工場を視察、組立てが開始されているF-35の工員を激励しました。

 CWA中央胴体部分が今回組立が開始された部分であり、胴体部分の25%に当たる部分となっています。F-35は第五世代、決して安価な戦闘機ではありませんが、2022年のロシア軍ウクライナ侵攻を受け、飛び地であるカリーニングラードやバルト海沿岸のサンクトペテルブルグからロシア軍の圧力を受けるポーランドはF-35導入を決意しています。

 F-35戦闘機、ポーランド軍が導入するのはTR-3世代機でありblock4と呼ばれるもの、最初の機体納入は2024年にも開始される見通しで、アメリカでの機種転換などを終えて2026年にフラスク基地へ配備開始が予定、2030年までに納入を完了する計画です。ポーランドは冷戦時代のMiG-29に代えF-16を導入しましたが、更に防衛力を強化する方針です。

 チェコ国防省は次期戦闘機としてアメリカ製F-35戦闘機を検討中です。この動きに関連して4月3日から四日間にわたりチェコ国防省代表団がアメリカを訪問、ワシントンDCとテキサス州フォートワースのロッキード社などを訪問しました。ただ、チェコの経済規模は大きくはなく、F-35を導入した場合の運用について課題が山積しているもよう。

 チェコ空軍の戦闘機は14機、スウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機を運用し支援戦闘機としてL-159高等練習機16機を軽戦闘機として運用中、この編成の背景には冷戦後のチェコスロバキアのチェコとスロバキアへの分割があり、両国は保有するMiG-29戦闘機を半分に分割し装備したことで運用が煩雑となり稼働率が著しく低下した事情があります。

 F-35戦闘機の導入をチェコが検討し始めたのはロシア軍ウクライナ侵攻を受けた2022年7月といい、しかし導入規模の大きさからすべてを有償軍事供与に頼るのではなく、一部でもチェコの軍需産業が生産に参画し国内雇用につなげたい方針です。計画では次期戦闘機は2023年10月までに機種選定を行うといい、様々な方式が検討されているもようです。

 イスラエル空軍はF-35をレッドフラッグ多国間演習へ初参加させました。レッドフラッグ多国間演習はアメリカ空軍が主催する最大規模の空軍演習であり、いわゆる空戦訓練や射撃訓練に留まらず、時々刻々と変化する状況想定に基づき参加各国が作戦を組み立て、各国が派遣した航空機と各国の法体系や交戦規則に基づき実働的な訓練をおこなうもの。

 アメリカ空軍のUSAFWC空軍戦争センターが主催し、仮設的部隊として第57航空団第414戦闘訓練飛行隊が参加、ネリス空軍基地で数か月おきに、またアラスカ州のアイエルソン空軍基地を年に四回実施しており、アメリカ空軍やNATOの同盟国はもちろん、北欧や中東諸国やインド、そしてシンガポールに韓国空軍、航空自衛隊も参加しています。

 レッドフラッグ23-2訓練はネリス空軍基地において実施されました。様々な想定と突発事態への対応能力を演練する視点からイスラエル空軍は1978年のレッドフラッグへ空軍部隊を参加させています。しかしF-35戦闘機を参加させるのは今回が初めてであり、一方イスラエル空軍は既にF-35を実戦に投入、こうした背景でも今回の参加は注目されました。

 イギリスのBAEシステムズ社はF-35戦闘機block4のAN/ASQ-239電子戦システムに関して4億9100万ドルの契約を結びました。今回の契約はAN/ASQ-239そのものの開発契約で、第17ロットからのF-35戦闘機に標準搭載されるとともに、既に製造されている1200機のF-35戦闘機へAN/ASQ-239も順次搭載されてゆく方針となっています。

 AN/ASQ-239電子戦システムは機材そのものとともにソフトウェアアップデートによる能力向上を重視しており、これにより確認した新しい電子的脅威にも即座に能力向上を行うことが可能であり、近年増大する超長距離地対空ミサイルなどからの防護、及び電子戦状況下での目標識別とF-35の生存性確保及び任務達成の両立を念頭として開発される。

 BAEシステムズ社はアメリカのニューハンプシャー州マンチェスターとニューハンプシャー州ナシュアに生産施設を有しています。AN/ASQ-239電子戦システムはBAE社が将来電子戦システムとして開発したStorm EW分散型戦闘装備体系の技術が応用されており、この技術はBAE社が日本やイタリアと開発する戦闘機にも好影響を及ぼすでしょう。

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