私の仕事場(オフィス)は東向きである。だから朝日が差し込むので夏は午前中は通りに面した東側のこのパソコンのあるところはとても暑い。この仕事場のなかで西側から東側に動いてくると明らかに温度勾配があるのがわかる。
西側はそれほど暑くはなくて風も通れば、涼しく感じるがちょうど真ん中くらいから熱さを感じてくる。温度計がないので、どれくらいの温度差があるかは定量的にはわからないが、5度くらいの差があるのではないだろうか。
よく熱学で直方体の物体を書いて左端が熱く、右端が冷たいという場面を想定した話を黒板に描いて説明するのだが、ちょっと状況は違うが、部屋の空気の温度勾配がこれほど顕著に感じられるのはめずらしい。
これは体験的な物理の場面としてこれほどのいい例は少なかろう。場所、場所によって室内の温度が変わっているとき、それを温度場という。
温度場はスカラー場の例としてよく引き合いに出されるが、普通あまり室内での温度差がない場合だとスカラー場といわれても部屋全体がほぼ一様の温度となって実感としての温度場という概念がそれほど感じとれないだろう。
因みに場とは場所、場所によって何かある数とかベクトルとかが決まるような場所の関数を物理では場(field)と呼んでいて、これは物理の重要な概念の一つとなっている。
その例としては電場とか磁場とかがある。これはある場所で電場ベクトルとか磁場のベクトルが決まるので、ベクトル場といわれる。