昨日友人の数学者Nさんのお宅を訪問した。短い時間だったが有益な話を聞くことができた。そのいくつかをここに簡単に紹介しておこう。
N先生語録
1)数学は誰にでも理解できるものです。もしわかろうとする意思を捨てなければ。もちろんわかるのに時間がかかるかもしれません。
2)数学では定理とか命題とかは大事かもしれませんが、例もとても大事です。もし定理とか命題とかがよくわかっていれば、そのような例を示すことができるからです。だから、逆に命題がわかっていると思われてもその例を示すことができなければ、わかっているとは思われないのです。
3)数学ではそのような例とか反例とかをたくさん考えて次第次第にイメージをつくっていき、命題とか定理とかをつくるのです。抽象的に何もないところから急に命題とか定理とか公式を導くのではありません。
4)複素解析に鏡像の定理というのがありますが、回路理論で鏡像の原理というのがあるでしょう。あれが複素解析の解析接続の鏡像の定理のいい例となっているのではないかと思います。
5)「解析接続の仕方の例を知りたいのですが」という私の質問に答えて。ガンマ関数についての解析接続が、複素解析の解析接続のいい例ですから、それを例えば「解析概論」ででも勉強されたらいいと思います。
1)-5)はいずれもN先生の見解で私の見解ではない。もっとも間違っている場合には聞いた私の理解不足とか誤解にもとづくものでN先生の責任ではない。いつかこういった関連のエッセイをN先生との共著でまとめてみたいと思っているが、いつものようになかなか時間が取れないのが悩みである。