私は素っ頓狂である。これは父親譲りであるから、元大学の同僚のうちで頭の働きの鋭いOさんなどは私をいつもからかうのを常にしていた。
もっともこのOさんはこのことを後で自分で私にこのことを告白されたので、多分私のもっている生来の性質を敏感に感じる方だなと感じたことがあった。
しかし、ご自分でちょっとあまり公正でないと反省をされていたのだろうが、もともと頭はするどく、感覚の鋭い人であるので、自然に自分の感覚が反応したのだろう。だが、このことで私はOさんを恨んだことはない。
むしろ後でだったにしろ、率直に告白されたことにこの人のある種の率直さを感じたくらいである。
私は5人兄弟の3番目だが、その素っ頓狂なのは私一人であり、他の兄弟4人はそんなことはない。小さいときからいつもそういうことを言われていた。
素っ頓狂とはどういうことかというと曰く言いがたいが、なんだか視野が狭いという感じなのである。これは物理的に視野が狭いということでもないし、比喩的に視野が狭いということでもない。だが、なんだか視野が狭いという感じなのである。
偉い先生を引き合いに出して悪いが、朝永先生の高弟のT教授が失礼ながら、私のいう素っ頓狂な方であった。これは曰く言いがたい。知識の問題でもないし、能力の問題でもない。だが、素っ頓狂な私が私の同類と定義するのはおこがましいのだが。