S. ラングの「解析入門」(岩波書店)のp.268の上の方に三角関数の半角公式が与えられている。そのすぐ下に
cos^{2} x-sin^{2} x=cos 2x (1)
cos^{2} x+sin^{2} x=1 (2)
の式が書かれている。これを見てラングが、私の知っている三角関数の半角公式と同じ導き方をしていることがわかった。
ラングの本ではもちろん上の2つの式(1), (2)を上下に並べて書いてはいないが、そのつもりであろう。
どうやって半角公式を導くか。
(1)と(2)を辺々足せば、2cos^{2} x=1+cos 2xが直ちに得られる。また、(2)から(1)を辺々引けば、2sin^{2} x=1-cso 2xが得られる。
これはそのままで半角公式であるといってもいいが、見かけ上もきちんとした半角公式にするにはxをx/2と置き換えてやればすむ。もちろん、最後に両辺を2で割る必要がある。
私はこの導き方を自分で見つけたわけではない。藤森良夫先生の続「解析の基礎」続(考え方社)で読んで知ったのはもう50数年前の高校生のころである。
もっともこういう風な導き方をexplicitに書いた本を藤森先生以外の本で見たことはない。(もちろん頭の中では明らかにこういう演算がされてはいるのだろうが)。
それで、1999年から3年にわたって、私が個人として発行した「電気電子工学科ミニマム」(愛媛大学)にはこの導き方を書いておいたが、誰もそのことに気がつかなかったかもしれない。
ラングの本は分かりやすい本と定評のある本であるが、藤森先生の半角の公式と同じ導き方にこの本で出会って懐かしかった。