今朝、朝日新聞を見ていたら、読書欄に「機械翻訳による迷訳?」とかいう記事があった。
アメリカ人の作家か誰かが書いたアインシュタインの伝記の下巻の13章に迷訳(新聞に出ていたのはなんともまったく意味の取れない日本文であった)が載っていたということで、その本の上巻を訳した松田卓也さんがその事情の推察だかをアマゾンに投書されたのだという。
記事には記者が、その本の出版社の編集部に聞いた話が書いてあって、翻訳の契約期限が迫っていたために出版社はやむなくある翻訳グループにその3つの章の翻訳を頼んだらしい。
ところが出来上がってきた翻訳がひどいということで、編集部で手を入れたらしいが、なぜか13章だけは十分に、または、まったく手が入れられずに校了となってしまい、迷訳がそのまま出てしまった。
しかたなく、出版社はその下巻を回収して、訂正されたものを先月に出版したとかいう。記者がその英文の原文をgoogleだかの翻訳システムにそのまま入力するとほぼ同じ文面の迷訳が出てくるということで、この翻訳グループが機械翻訳を使ったらしいということが判明したという。
このことが「けしからん」と、ここではいいいたいのではない。そうではなくて、この事情が痛いほど私にはわかるのである。
もう昨年のことになってしまったが、昨年2月中旬だったかに約2週間の期限で「再生医学」についての英文の日本語訳を引き受けたことがある。
そのときにどれだけの量の英文の量があるかを十分に確認をせずに仕事を引き受けてしまい、その後とても多量の英文の翻訳の必要があるということがわかって困ったことがあるからだ。しかたなく、その後さらに2週間の猶予をもらった。
(実は翻訳量だけからいうと4週間ですむような英文量ではなかった。実際にはその3倍か4倍の期間がかかるくらいの翻訳量だった。)
このときは私自身も含めて6名の方々の協力でなんとか切り抜けたのだが、そのときにメンバーの中のTさんから機械翻訳を使って少し早く仕事ができないかとの提案があり、少し試みたことがあった。
ところが、機械翻訳は却って翻訳者を戸惑わせるばかりだということで、結局は自分たちの力で翻訳をした。
期限を切られるとどうしてもこういうものに頼りたくなる。それに翻訳を発注した方は期限が守られないと多分支払額を値切るか、または払わないだろう。そうだとすれば、よくないことはわかっていてもそういう姑息な手段に頼らざるを得ない。
いやはや、それにしても身につまされる話である。