物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

自由を生きる

2012-04-16 13:04:36 | 本と雑誌

「自由を生きる」(東京新聞出版局、1999)は先年亡くなった数学者の森毅さんの自伝である。

森さんが亡くなった後で雑誌「数学教室」で銀林さんたちが回想を書いていた中でこの自伝の話は出てきたが、この本をもっていなかった。

(2014.8.26 付記:自分の本の中にこの書を見つけたが、それは新しくこの書を買い求めた後であった)

ところが、アマゾンコムの古本で価格1円とその他の経費250円とかで買ったので、本が届いた先週の木曜日の夜には金曜日の早朝の4時半まで眠い眼をこすりながら、おおよそを拾い読みした。その後土曜日に詳しく読んだ。

書いてある内容は目新しい内容はあまりなかったが、学校時代の同級生とか2,3年先輩または後輩とか人をたくさん知っており、彼らとのかかわりに触れているのはなかなか圧巻である。

それと数学の研究についての彼の考えたところとかが載っている。これは彼が研究論文をあまり書かなかったことの言い訳になっているのかもしれないが、興味深い。

しかし、巻の大半に若いときの気分が横溢していて、その後のところが駆け足のような気がした。

これは誰が自伝を書いてもそうなのだろうと思う。若いときの気分が大抵の人の自伝を支配している。

これはHeisenbergの自伝『部分と全体』(みすず書房)にしても、Dysonの自伝『宇宙をかき乱すべきか』(Disturbing the universe)(ダイアモンド社)にしてもそうなのではないか。

もちろん、老齢になっての話もこの本「自由を生きる」には出てくるのだが、やはり若いときの感覚を老年まで結局残しているという特徴がある。

それと本のタイトルが「自由に生きる」ではなく、「自由を生きる」とあるのが目を引く。森毅さんのときどきの写真が多くついているのが、やはりもう一つの特徴であり、文からだけではなく森さんの人柄を偲ばせてくれる。

私も一度だけ20年以上も以前に高知での数学教育協議会総会の夜に森さんと話をしたことがあるが、有名人の森さんには私などは得体の知れないone of themであったろうから、彼の記憶にも留まらなかったであろう。

(追記) 森さんの自伝を読んだからかどうかはわなからないが、四元数から線形代数が出てくる歴史的な経過に関心がいま出てきている。

四元数はHamiltonの発見であり、Hamiltonはこの発見が自分の人生最大の発見と捉えて、彼の人生の最後の20年をこの四元数関係の研究に費やしたという。

しかし、森さんだけでなく、四元数の価値は結局四元環から、ベクトル解析や線形代数へと導いた端緒を与えたことにあると考えられている。

あまり代数に詳しくない私には「環」はどうも居心地を悪くさせる概念だった。

昨夜Stillwellの「数学とあゆみ」下巻(朝倉書店)のコピーを読んでみたら、「体」の条件の中の乗法の逆元がないものを環というのだと知り、ようやく「体」から「環」という概念になじみがでてきた。