latexで原稿の入力をしていて、原稿を修正したはずだのにdviの方が変らないと思って不思議だ、不思議だと何回も同じことを繰り返したが、よくみたら、これは私の思い込みであってdviの原稿はlatexの原稿のそれを忠実に反映していたのだった。
自分の思った通りにdviが変更されないと思っていたが、自分の思ったようにはlatexの原稿を修正していなかったという経験ははじめてであった。人間は思い込みの強い動物である。いや、一般の方にはそういうことはないだろう。私が思い込みが強いと言いかえた方がよかろう。
昔、学生のころに自分でコンピュータのプログラムを書いてそれがなかなかコンピュータを通らず、「コンピュータを蹴飛ばしていうことを聞け」と思ったことが何回もあった。
実際にコンピュータを蹴飛ばしたことはもちろん一度もなかったが、そういうときにもちろん何回も自分のつくったプログラムを見直すのだが、どうも間違っているところが見つからず、上に述べたような気持ちが起きた。
だが、その後その誤りが発見されてみると悪いのは私の方で、コンピュータが間違っていたことなど一度もなかった。ちょっとコンピュータが融通を利かせてくれたらと思ったことは何回かあったけれども。
こういう経験をすると、高校時代に学んだ英語のことわざTo err is human, to forgive is divine(過ちをするのは人間、許すのは神様)が身にしみたものである。人間というのはなんと間違いを犯すものか。それも多様な、思いもつかぬような間違いをする。