物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

私設図書館

2013-02-11 13:40:34 | 日記・エッセイ・コラム

先週の木曜日にドイツ語のクラスでsich leisten(注)という語の例として、お金があったら、どうしたいかとR氏に問われた。クラスの全員に聞かれた問いだが、それぞれのメンバーがそれぞれ独自の答えをされた。

私にはいいアディアがなかったが、一番最後に質問をしてもらったので、少し考える時間をもらえた。それでお金があるのなら、自分の図書館をもちたいと答えた。

その後で医師の I 先生から同じような考えを渡辺昇一(元上智大学)さんがお持ちだとのメールをもらった。そして渡辺さんのある著書を紹介された。その本が本屋にあるかどうかはわからない。

I 先生によれば、渡辺さんの本に載っている写真によれば、渡辺さんの書斎はとても立派なものだという。多分渡辺さんは売れっ子の著者でもあったから、その蔵書もさぞ多いことだろう。

何冊ぐらいお前は本をもっているのかともメンバーの方から聞かれたので、2000冊くらいと答えたが、本当のところはわからない。もっとあるかもしれない。それでも3000冊ほどはないと思う。

実は私の購入した本だけではなく、子どもたちが学生時代に購入した本もいくらか混じっている。だから、本当のところは何冊本があるか、わかならない。それに亡くなった長兄がもっていた本もその全部ではないが、いくらかある。

それにいまではごく一部ではあるが、亡くなった父の蔵書だったものもある。妻にいつも嫌味を言われるので、古本屋に売ろうと思ってミカン箱3箱分くらいを売ったこともあるが、そこで引き取らないと言われた本もあり、そのまま玄関のスペースにミカン箱に入ったまま残されているものもある。

「ファインマンの物理学講義」(岩波書店)とかは引き取ってもらったが、あまり高くは引き取ってもらえなかった。「地球科学」の岩波講座は引き取ってもらったと思うが、「生物学」の岩波講座はそもそも引き取ってもらえなかった。

ところが、今朝の朝日新聞に「集合本棚」という構想についての記事が出ていた。これは私のいう私設図書館であろう。

私設図書館には、当然のことながら、本を置いておくスペースがまず必要である。そういうところがまず確保できるか。それとそれを維持する費用というものも結構必要である。会員制で会費で維持をしたらというようなアディアのようであるが、やはり会員が少なくとも100人くらいの数が居ないことには成り立たないであろう。

もし年に一万円の会費を払うとしても、そのような会費を老齢の年金生活者が払ってくれるだろうか。私なども入っていた学会などもだんだん整理をしていき、物理学会だけにしぼってしまった。この年会費だってなかなか払いかねているという現状である。

東京だといろんな人がいるから、こういう需要もあるかもしれないが、松山くらいの都市だとその会員だって募集をしたとしても人数は知れたものであろう。

元国立大学の E 大学の図書館だってその蔵書を置く書庫の場所がないということで、少なくとも複数もっていた図書はどんどん売却しているとも聞く。これが大学法人の図書館の実状である。

自治体の図書館に至っては、この事情はもっと厳しい。多分購入して閲覧に供していた雑誌なども数年間保管した後で売却または捨てることをしている。

これは I 市の市立図書館では、雑誌「朝日ジャーナル」を保管していなかったと聞いた。これは兄が創刊号から1,2冊の欠号があるもののほとんど、そのバックナンバーを持っていたので、寄付しようかと図書館に問い合わせてわかったことであった。

これは I 市だけの問題ではない。多分どこの自治体の図書館も同じようなものであろう。いつだったか、ある書籍を格安の値段で古本として購入したことがあったが、これは自治体の書籍の公印が押してあるところを修正液で消して見えなくしてあった。それでも光に透かしてみたら、東京都の中野区の区立図書館の蔵書だった。

昨年、県立図書館に行って、大学時代に私が公費で購入していたPhysical Review Lettersという雑誌と他の2,3の雑誌をもう大学ではもてないので、受け入れてもらえないかとお願いに行ったら、英語の雑誌は受け入れないと言われた。それにもう手狭でスペースがないということだった。

書籍を電子的な記録媒体にできないのかと尋ねたら、それができるのは国会図書館だけでまだ自治体の図書館はできないのだといわれた。

電子媒体にできたとしても、電子媒体にした書籍は一覧性がない。それで、冊子体の書籍とは自ずから違う。もちろん電子媒体の場合には検索機能が充実しているので、かえって便利な場合もある。

いずれにしてもとてもお金持ちの篤志家でもいなければ、実際には私設図書館など構想はあってもなかなか実現はしない。それにアメリカ等では事業で成功した人は財団をつくり、いくつかの事業とかに寄付をするのが普通だが、日本ではそういう慣例はあまりない。

また、そういう寄付をした人にさらに贈与税がかかったりする。せめて寄付に贈与税がかからず、無税にならなければ、安易に寄付もできない。

作家・司馬遼太郎氏の集めた資料とか、大宅壮一氏の集めた週刊誌や雑誌を集めた資料館というか図書館があり、コピーサービスもしてくれるとか聞いたが、なかなかそれでも大変であろう。

インターネットでなんでも見つかるかといえば、さすがにアインシュタインの全集はまだ編纂の途中だと思うが、出版された部分の全集はインターネットで無料で見れるようになっているらしい。しかし、他の学者、例えばHeisenbergなどはまだであろう。これは著作権の問題があるので、しかたがないのかもしれない。

(注) 私の持っている独和辞典では「思い切ってあるものを買う」とある。