『統計力学を学ぶ人のために』(オーム社)という本が出ている。
その本を数日前に購入したので、読み始めた。もっともまだ10ページくらいしか読んでいない。これは山口大学の講義のノートだそうである。
著者の芦田正巳さんも自分が熱力学とか統計力学の講義を担当するようになってこれらの科目を必死で勉強したという。
講義は自分がまずわからないと人にわからせることなどできない。もっとも自分がわかってもさらに人にわからせることができるかはまた別のことであるが。
原島鮮先生の『熱力学・統計力学』(培風館)などでもその道の専門家にはいい書なのではあろうが、素人の私などが読むといろいろ疑問が出て来てしかたがない。
統計力学の書として有名な久保亮五先生の『統計力学』(共立出版)など全く読めなかった。これは本が悪いのではなく、私の方がわるいのだろう。
実は『EMANの物理学』というサイトがあって、そこにやはり統計力学がある。
先日、その一部を一通り読んで、感心をしたのだが、それを印刷して読み返してみたら、どうも肝心のところで推論がどうも飛んでいるところがあるようである。それでもそれが役に立つサイトであることを否定するつもりはない。文章もすこし表現があいまいなところもある(注)。
それで芦田さんの本を読むことにしたのである。まだ読み始めだから感想を書けないが、多分満足できるだろう。
(注) もっともこのサイトを読んで知ったことで一番興味深かったのはPlanckがRayleigh-Jeansの仕事を知らなくて彼の内挿公式をつくったということであった。
私など朝永の『量子力学』 I (みすず書房)の影響かと思うが、Rayleigh-Jeansの公式とWienの公式をもとに彼の内挿公式をつくったと思い込んでいたからである。
もっともこれも私がわるいだけで、朝永『量子力学』のせいではあるまい。というのは朝永先生は序文ですでに歴史を組み替えてこの書を書いたと述べられている。
教育での歴史の組み換えとして有名なのはアインシュタインの特殊相対性理論である。
エーテルの存在を否定したマイケルソンとモーレイの実験を知らなくて特殊相対性理論をアインシュタインがつくったというのが歴史的事実らしい。しかし、相対論の教科書はマイケルソンとモーレイの実験をあたかもアインシュタインが知っていたかのような記述をするのが普通である。
それが教科書として怪しからんというつもりは全くない。