NHKの「日本人はなにをめざしてきたか」で武谷や湯川、はたまた鶴見や丸山真男が取り上げられると聞き、喜んでいる。
しかし、私にはちょっと解せぬこともある。数学教育で一時代を画した水道方式と遠山 啓がとりあげられることはあるのだろうか。
出版業界では遠山の書は多くが復刊されたり、再版されたり、文庫化されたりしている。
そして古本業界でも彼の書の古書はたくさん売られている。一方、武谷の書はあまり復刊されたり、再版されたり、文庫化されたりするものが少ない。
一つだけ「物理学入門」がちくま学芸文庫として最近出たが、それ以外はポピュラーなものはない。その学問の性質とか著作の性質とかもちがうのだが、どうしてこのような違いが出てくるのかというのが疑問に思っていることの一つである。
一方で、たぶんNHKの放送では「遠山と水道方式」は取り上げられないであろう。ということはNHKの考え方が一面的なのではないかと思っている。
吉本隆明全集が晶文社から出されるとかであり、それは慶賀の至りではあるが、武谷全集を出そうという出版社はあるのだろうか。さらに言えば羽仁五郎全集を出そうという出版社もない。