7月2日の夜、横浜在住の旧知の物理学者のKさんから、電話がかかってきた。7月5日の夜に放送があるので見てほしいという。
それが「日本人は何をめざしてきたか」ー知の巨人たちーというテレビ放送の第1回であった。
今回の直接のタイトルは「原子力 科学者は発言する」で特に物理学者の湯川秀樹と武谷三男をとりあげていた。
この二人が原爆から原発まで含めた原子力のときどきの問題点について警鐘を鳴らしてきたことはまちがいがないのだが、最近ではそのことを曲解するような書まで出ている。
一般的に肯定的な放送内容であったが、一部として原子力情報室の代表の一人山口幸夫さんがちょっと自分たちと武谷とは考え方がちがっていたという風な話が入っていた。
それは科学者も市民の一人であるとして、原子力の運動に携わるべきだという考え方と、あくまで反原爆とか反原発とかで重要なのは市民の運動だが、科学者はそれに正しくしっかりした助言をする立場にある、という考え方のちがいである。
この点で高木と武谷とは考え方が根本的にちがっていた。
これは高木の『市民科学者として生きる』(岩波新書)に武谷との論争のことが書かれている。時計か金槌かという論争として有名である。
武谷は時計を金づちとして使わない方がいいという考えであった。あえて誤解を恐れずにいうと高木は「自分は時計にもまた同時に金づちにもなりたい」ということであった。
もっとも科学の正しい使われ方を主張する人にとってもそうでない人にとってもなかなか現在の社会では厳しい状況であることは変わらない。
放送に出てきた、多くの物理学者は私の知っている方々であったが、年をとられているので、名前のサブタイトルがでなければ、ほとんどわからなかった。
藤本陽一、長崎正幸、小沼通二、澤田昭二、町田茂といった方々である。小沼さんと澤田さん以外は昔の凛々しい姿はもう見られず、さすがにお年だと思わせられた。
第2回は7月12日(土)午後11時からで「鶴見俊輔と思想の科学」というタイトルである。