『算数・数学活用辞典』(日本評論社)を著者の武藤先生から贈って頂いた。
なかなかしゃれた表紙である。算数の項ではひらがなを多く使って小学生でも読みやすいような工夫もされている。
大項目の活用辞典であるから、個々の用語を探したいときには索引を使えばよい。こういう書は著者の思想を色濃く反映しているだろう。
項目の英訳が必ずついているのはいい。同じ出版社の『算数・数学百科』も持っているが、こちらの方は項目の英語がない。それでなぜ英語をつけなかったのかなと疑問に思っていた。
最近の高校の数学で行列が教えられないのか、ベクトル以外の行列のテーマがないのが残念だが、その他の点では満足できる出来栄えである。
こういう辞典の場合に私がすぐに調べる事項がある。対数についてどうか書いているか。ちゃんと「対数は指数です」と書いてある、数少ない書である。
微分は積分の後に「導関数」の項で触れてある。多分最近の教育傾向にこの記述の形態はあっていると思う。高校数学までという制約のためだろうが、テイラー展開がないのは残念である。sin xのテイラー展開には触れているけれども。
円周率という語は簡単だが、英語では長々としてratio of circumference of circle to its diameterとなる。
余数と補数について一言。余数という語は知らなかった。最近では五-二進法が普及しているためであろうか。たして5となる数だという。補数はたして10となる数である。
補数の方は知っていたが、妻がタブレットで検索してくれたところでは補数はもっと一般的な用語らしく、たして桁が一つ上がる数と定義がされているという。この定義によると99と1とか、98と2とかも互いに補数である。
まあ、小学校の低学年では補数として現れるのは10の補数が最初であろうからOKであるが、ちょっと気になった。
武藤先生は数学史思想家であるから、その分野の薀蓄を知ることができて楽しい。
(付記)関数方程式の手法がいくつかのところで使われていて、目新しいが、これが高校生の理解の妨げにならねばいいが。他方、高校の先生等にとっては記述が新鮮に思えることだろう。