Le vent se lève !.....il faut tenter de vivre!(ル ヴァン ス レ―ヴ、イル フォ タンテ ド ヴィヴル)(風立ちぬ。いざ生きめやも)とは最近の宮崎駿のアニメ「風立ちぬ」でも引用されていた文句である(カタカナはフランス語に慣れていない人のためだから、フランス語を知っている人は読みとばしてほしい)。
これはひょっとしたら、秋の季節にふさわしいのかもしれないが、どうしたことか、この文句が最近思い出された。どうしてなのかはわからない。tenterという動詞の意味を知らなかった。今はじめて仏和辞書を引いてみると、「試みる、(人の)気をそそる」というような意味だとある。はじめて知った。これは多分詩の一部であるのかもしれない。
私が中学生のころだから、1953,4年のことだと思うが、作家の堀辰雄が亡くなった。その堀辰雄の代表作が『風立ちぬ』という小説だったのだが、いままで読んだことがない。国語の先生だったO先生は堀辰雄の小説は読んだことはそれまでなかったのだが、その機会に読んだと話してくれた。内容はあまり話してくれなかったと思う。
そして、後年になってフランス語を学ぶようになって、この本のタイトル「風立ちぬ」がフランス語のLe vent se leveからきていることを知った。se lever(ス ルヴェ)は普通には「起きる」という意味である。Je me leve tot ce matin(ジュ ム レ―ヴ トー ス マタン) だったら、「今朝は早く起きる」ということである。se leverには4番目か5番目に「(風、波が)立つ」という意味が辞書に載っている。しかし、こういう意味は初歩の段階では学ばないから、用法としてはすこしばかり高尚かもしれない。
アニメの「風立ちぬ」にもどると、もうよくは覚えていないのだが、戦闘機のゼロ戦を開発した若い技術者と結核にかかって療養している、若い女性との恋物語と航空機の開発とが、からまった内容のアニメであった。堀辰雄の「風立ちぬ」も軽井沢かどこかの保養地で結核療養をしている若い男女の話らしいから、似たようなストーリであろう。
ちなみにいえば、ventilation(換気)とかventilator(換気装置)の意味はフランス語のvent(風)を知っていると、理解がしやすいし、覚えやすい。こういう英語の単語は他にもある。
(2018.5.4付記) 上に書いた文章はなにも参照しないで書きましたが、気になったので、いまインターネットを検索してみました。
以下は40 ans a Paris(パリで40年)とかいうブログのからのコピーです。ヴァレリの詩の1節が出ていたので、無断コピーしました。il faut tenter de vivre!は「生きなければ」という意思表示でしょう。「生きようと試みなければ」というのは直訳ですが、意味を日本語として表す訳としてはいいと思います。(aoyama)
Le vent se lève !.....il faut tenter de vivre!
L'air immense ouvre et referme mon livre,
La vague en poudre ose jaillir des rocs!
Envolez-vous , pages tout éblouies!
Rompez, vagues! Rompez d'eau réjouies
Ce toit tranquille ou picoraient des focs!
風が起き上がる!、、、生きようと試みなければ!
広大な空気が私の本を開いたり閉じたり
波は粉になり岩へほとばしる
飛びさって行け!光に眩むページよ
砕けろ、波よ!砕けて喜びに溢れる水で
三角帆がついばんでいた穏やかな屋根を!