物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

わたしをはなさないで3

2018-05-03 16:13:43 | 日記

昨日の、「わたしをはなさないで2」ですべてがいうことは尽きていた。最後まで読んだが、結局おもしろそうな話はもう拾い読みで見ていた。

タイトルの、「わたしをはなさないで」という言葉は小説の中に出てくる、歌のカセット中にある曲のタイトルとか歌詞であった。この曲を聴きながら、キャシーが赤ちゃんの人形と思っている、枕を抱いて踊っているというところに出てくるし、そこがマダムとのはじめての出会いの箇所でもある。そしてそのマダムと最後のほうでもまた会うことになる。

私キャシーは小説の終りまで生きているが、トミーとルーシーは臓器提供の使命を終えて亡くなる。ルーシが先に亡くなり、トミーはかなり最後まで生きているが、キャシーは彼らの介護人を務めるが、最後にはトミーがやりきれなくて(?)キャシーを自分の介護人からはずしてしまう。

よくできた小説だと言いたいのだが、どうも私にはよくわからない。これはもちろんある種のサイエンスフィクションであろうが、そういう時代が来たとしてもだれも臓器提供を受ける人たちのことは切実な話題とならない。

クローンとしての役目を淡々と果たしていくという話でその人たちの葛藤はあるが、一般の利益を受ける側の話とかそういうのは臓器提供を受ける側のエゴイズムだとかという議論はない。むしろヘ―ルシャムという彼らが育った教育施設はその範囲内ではあるが、理想的に教育しようとしていたいった教育する側のえらく限られた範囲内でのある種の自己満足は語られる。世の中のそういう類似の施設にはもっと理想的な教育とはなっていないところだらけだという。

そしてそのことが自己満足だとか、人間としての道徳の退廃だとかの議論も出てこない。


Le vent se leve

2018-05-03 11:25:01 | 日記

Le vent se lève !.....il faut tenter de vivre!(ル ヴァン ス レ―ヴ、イル フォ タンテ ド ヴィヴル)(風立ちぬ。いざ生きめやも)とは最近の宮崎駿のアニメ「風立ちぬ」でも引用されていた文句である(カタカナはフランス語に慣れていない人のためだから、フランス語を知っている人は読みとばしてほしい)。

これはひょっとしたら、秋の季節にふさわしいのかもしれないが、どうしたことか、この文句が最近思い出された。どうしてなのかはわからない。tenterという動詞の意味を知らなかった。今はじめて仏和辞書を引いてみると、「試みる、(人の)気をそそる」というような意味だとある。はじめて知った。これは多分詩の一部であるのかもしれない。

私が中学生のころだから、1953,4年のことだと思うが、作家の堀辰雄が亡くなった。その堀辰雄の代表作が『風立ちぬ』という小説だったのだが、いままで読んだことがない。国語の先生だったO先生は堀辰雄の小説は読んだことはそれまでなかったのだが、その機会に読んだと話してくれた。内容はあまり話してくれなかったと思う。

そして、後年になってフランス語を学ぶようになって、この本のタイトル「風立ちぬ」がフランス語のLe vent se leveからきていることを知った。se lever(ス ルヴェ)は普通には「起きる」という意味である。Je me leve tot ce matin(ジュ ム レ―ヴ トー ス マタン) だったら、「今朝は早く起きる」ということである。se leverには4番目か5番目に「(風、波が)立つ」という意味が辞書に載っている。しかし、こういう意味は初歩の段階では学ばないから、用法としてはすこしばかり高尚かもしれない。

アニメの「風立ちぬ」にもどると、もうよくは覚えていないのだが、戦闘機のゼロ戦を開発した若い技術者と結核にかかって療養している、若い女性との恋物語と航空機の開発とが、からまった内容のアニメであった。堀辰雄の「風立ちぬ」も軽井沢かどこかの保養地で結核療養をしている若い男女の話らしいから、似たようなストーリであろう。

ちなみにいえば、ventilation(換気)とかventilator(換気装置)の意味はフランス語のvent(風)を知っていると、理解がしやすいし、覚えやすい。こういう英語の単語は他にもある。

(2018.5.4付記)  上に書いた文章はなにも参照しないで書きましたが、気になったので、いまインターネットを検索してみました。

以下は40 ans a Paris(パリで40年)とかいうブログのからのコピーです。ヴァレリの詩の1節が出ていたので、無断コピーしました。il faut tenter de vivre!は「生きなければ」という意思表示でしょう。「生きようと試みなければ」というのは直訳ですが、意味を日本語として表す訳としてはいいと思います。(aoyama)

Le vent se lève !.....il faut tenter de vivre!
L'air immense ouvre et referme mon livre,
La vague en poudre ose jaillir des rocs!
Envolez-vous , pages tout éblouies!
Rompez, vagues! Rompez d'eau réjouies
Ce toit tranquille ou picoraient des focs!

風が起き上がる!、、、生きようと試みなければ!
広大な空気が私の本を開いたり閉じたり

波は粉になり岩へほとばしる
飛びさって行け!光に眩むページよ
砕けろ、波よ!砕けて喜びに溢れる水で
三角帆がついばんでいた穏やかな屋根を!