先日、『「正比例」の数学 』(東京図書)のことを書いたが、第3章 「行列式:特殊な多項式」のところを除いて最後まで見た。読んだとは言わないのは途中あまり計算をしなかったせいもある。
だが、ある程度この本から線形代数の話の筋はわかった。普通、高校で線形代数の目的とするのは「行列の階数(ランク)」である。そこは一つの山場かもしれない(注)。昔、行列のことを学んだとき、行列のランクとはなんだか持って回ったような定義でわからなかった。
その後、大学に勤めていたころ、学生が使っていた線形代数のテクストから行列のランクが眼に見えるように書かれてあることを知ったとき、大学の数学教育もわずかだろうが、やはり進んでいることを知った。
ランクを求めるために必要な行列の変形法は「行列の基本変形」と言われており、私たちの時代には数学の時間には学ばなかったが、最近では大学の線形代数の時間に学ぶところがほとんどのようである。
この『「正比例」の数学 』ではこのことを取り扱ってはいないが、この書で取り扱わなかったこととして、行列のランクについて一言だが触れており、行列の中で独立な行(または列)の数として説明がある。
これはn元1次方程式の独立な数といっていいと、ちゃんと本質的なことが述べられてある。もっともこの書では連立方程式の一般論は述べられてはいないが。
そして、線形代数の次の目標は「固有値、固有ベクトル」である。これは物理でも応用があるので、私なども関心のある分野である。
最後は、半単純な行列の一般化としてのジョルダン標準形が線形代数の学習目標である。
こういうふうに話の筋ないしは学習の目標が設定されているところがこの本の気持ちがよいところである。
細かなところまではわかっていないが、それはまた別の機会に詳しく学ぼうという気が起こる。
何のために線形代数を学ぶかを述べた本として、「ブログとね日記」の利根川さんが、推奨しているのは竹内淳さんの『高校数学でわかる線形代数』(講談社ブルーバックス)と大村さんの本である。
こちらの方は本のタイトルは失念した。詳しくは「ブログとね日記」をご参照ください。
ちょっと最後まで曲がりなりにも目を通して感激したので、ブログをあわてて書いた。
(注)現在ではあまり線形代数を高校で学ばないのかもしれない。その辺は高校の授業に詳しくないのでお許しください。
(2018.5.14付記)ちょっとこの『「正比例」の数学』で気になったのは行列の積の定義が天下りだったことだった。ここはきちんと線形変換を続けてするということから行列の積を導入してほしかった。
行列の和は行列の対応する要素の和であるということは、まあ、あまり変な感じがしないが、行列の積はどうしてこういう積の定義になるのだろうと思う人が必ずいると思う。私などもそういうことが気になる方である。
ついでにいうと、ベクトル解析に出てくるスカラー積とべクトル積の定義がどこから来たのかは、あまり気になったことはなかった。これらは四元数の積の一部として定義がされている。
(2019.5.10付記)もっともベクトル積の第一成分とか第二成分とかにその成分の印としての1とか2とかがでて来ないのは不思議に思ったりした。
それをやはりおかしいなどと思った人がLevi-Civitaの記号を思いついたのではないかと勝手に推量している。