町田茂さんといえば、京都大学理学部の物理学の教授だった。
町田さんには、ちょっとしたかかわりがある。町田さんが勤めた大学は3つだと思うが、彼が一番初めに勤めたH大学での町田さんの教え子が私の先生たちであった。
ということで、出身大学の研究室の同窓会の開催のときにはいつもご案内を差し上げていた。同窓会に来られたことはなかったが、そのときにいつも丁重なご返事をいただき、彼の近況報告をできた。
あまり私の先生方からは町田さんについて聞いたことはない。一番はじめに町田さんにあったのは素粒子・原子核・宇宙線三者の 若手の夏の学校だったと思う。
武谷三男の核力についての研究方針である、核子と核子の距離が遠いところでの力がそこでは弱いから、摂動の計算が近似としてよいという説明をされたのがなかなか見事だと思った。
大体、その当時は強い相互作用では結合定数が1よりもぐっと大きく、摂動論が使えないというのが定評であった。
現在では、強い相互作用はクォークとクォークの距離が小さいところでは、力はあまり働かず(asymptotic freedom)摂動論が使えることになった。これがいわゆるQCD (Quantum Chromo-Dynamics) である。
逆に、クォークをハドロンから引き出そうとすると、無限大の力が働いてクォークをハドロンの外に引き出すことができない。いわゆるクォークの閉じ込め (quark confinement) が起こっている。
ということで、いかに摂動論が使えるところ探すかが、大事になる。しかし、QCDができる、はるか以前のことだから、その適用範囲でうまく摂動論を使うという考えに感心したのであろう。