話すドイツ語を大学で学ぼうと思ったら、南山大学か上智大学の外国語学部で学ぶのがよいとはもう何年も前に、ある知人から聞いた。
これは話すドイツ語という観点からなので、文学としてのドイツ語とか、語学としてのドイツ語という意味ではない。最近ではNHKのドイツ語講座の先生も南山大学所属の先生とか、上智大学所属の先生がなさっておられるので、この定評にしたがったものであろう。それから独協大学の所属の講師も多い。
これらの大学はだから、たぶん話すドイツ語を大切にしているにちがいない。これは単にドイツ語だけなのか、それとも他の言語でもそうなのかは知らない。
ドイツ語で言語のことをdie Spracheという。話すという語はsprechenである。この辺がフランス語ならla langueであろうから、ちょっとちがう。langue de chatというお菓子があるが、あれはlangue、すなわち、「猫の舌」を意味する。
英語でも母語のことをmother tongue(直訳すると母の舌)というから、それはフランス語のlangueと発想は同じである。私はあまり外国語に詳しくはないが、それでも言語というのは第一義的に、話す言葉だというのは若いころから教えられた感じを強くもっている。
ちなみに「母国語」という語の代わり「母語」を使うのは言語学者の田中克彦さんの用法にしたがっている。言葉は国とは関係がないからである。
たとえば、日本生まれの、在日の人には日本語は母語ではあっても母国語ではなかろう。