『もうろくの春』(SURE)は哲学者の鶴見俊輔さんの詩集である。
もう何年前になるか忘れたが、ある団体の学習会を京都で催すことになり、その学習会の講師に鶴見俊輔さんを呼びたいと思ってお願いしたら、少ない講演料にもかかわらず来てくださった。
これも私が物理学者の武谷三男の研究者であるというきっかけであった。そのときにはじめて鶴見邸を訪れたのだが、いろいろ話ははずみ、『もうろくの春』をいただいた。
この鶴見邸を訪問する前に鶴見さんの岩波新書『北米体験再考』の読後感想文をどこかに書いたことがあるので、そのコピーを送っておいた。その文章の感想とかは聞けなかったが、初対面の割には緊張はしなかったから、鶴見さんの厚遇を受けたといえよう。
ちょうど鶴見邸は物理学者の町田茂(京都大学名誉教授)さんのお宅と背中合わせになっていた。自分のところには武谷さんは来たことはあるが、たぶん町田さん宅にはいかなかったのではないかと鶴見さんは言われていた。
昨日述べた『鶴見俊輔伝』にこの詩集の話が出ていたので、この詩集のことを思い出した。小冊子ではあるが、私には貴重なものである。
(2021.6.18注) どこかで鶴見さんは自分の葬式のときに参列者に喪主の太郎さんにこの詩集『もうろくの春』を配ってもらい、挨拶をしてもらうつもりだとか書いていた。本当にそうなったかどうかは知らない。一時期ではあるが、武谷三男との関係で親しくしてもらった。