物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

C. N. Yangの憂愁

2020-07-10 09:28:42 | 物理学
C. N. Yangは時代を創造するような物理学者である。まだ若いときにノーベル物理学賞をT. D. Leeと受賞した。パリティが弱い相互作用においては非保存だということを発見したためであった。

その後がその前かはちょっとよくは知らないが、いまではNon-Abelian gauge 理論として知られている、論文をMillsと二人で書いた。

先日亡くなったDysonとほとんど同じくらいの年であるが、たぶんまだ95歳か96歳で生きておられるだろう。

アメリカに生活していたためにアメリカ国籍をとったが、その当時両親は中国におられてそのころはアメリカと中国との国交がなく、なかなか帰国することができなかったという。

そのうちに中国とアメリカの国交が1971年だったかに回復して帰国することができるようになった。そして1973年にYangの父が亡くなるときには病床にいることができたとか。

もっともこれは昨夜読んだDysonのCollected Papersの話しの受け売りである。DysonはYangのStony Brookからのretirementのときの晩餐会でこの話をしている。それによると国交がない時代は中国出身の科学者にはつらい時代であった。

アメリカ国籍をとるというのはある意味で母国を見捨てるという感覚をぬぐえなかったらしい。

Yangの父親は数学者であり、若いときに学位をアメリカでとった方だったらしい。

1965年だったか当時大学院生だったときに、私の在学していたH大学にYangとKemmerとが二人一緒に来られたことがあった。KemmerもDysonとは関係の深い学者である。

場の量子論をDysonはこのKemmerから学んだ。そして、アメリカにイギリスから渡ったときにアメリカではまだあまり場の量子論を知っている学者はいなかったという。アメリカは実用主義の国であり、何の役に立つかわからない場の量子論を真剣に学ぶ人たちはいなかったらしい。

もう70年近く前の話しであるが、隔世の感がある。