物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

『「大発見」の思考法』

2022-07-20 12:52:16 | 物理学
『「大発見」の思考法』(文春新書)を昨日読んだ。これはiPS細胞で有名になった山中伸弥さんと益川俊敏英氏の対話を記録した新書である。

副題に「iPS細胞vs. 素粒子」とある。山中さんのノーベル賞受賞が何年だったか覚えていないが、そのノーベル賞受賞よりは前の対談であるが、山中さんのノーベル賞受賞も予想されていたころなのだろう。

それぞれの研究の様子が語られていておもしろい。山中さんの研究に至る前の実験のこととかも書かれていて、もちろん実験研究にとりかかる前には何らかの予想があり、それを実証するために研究をはじめるところは私自身は実験的研究をしたことがないが、理論的な研究でも同じであると経験的に知っている。

そして、実験や研究の結果が予想した推測の検証に終わることがなく、新しい現象や効果をみつけることに終わることも、わずかの体験であるけれども知っていることである。

予想した結果に研究が終わらないことは、益川さんのいう「自然は豊富であり、われわれは自然という書物から謙虚に学ぶ必要があるという」ことでもあろう。

この書は昨日紹介した益川さんの本よりも後に出版された本であり、この本もなかなか興味深い。狭い意味の物理関係書ではないが、あえて、物理学の範疇に加えたい。

(追記)進化論とか進化学とかについてもちょっとした言及があり、山中、益川両氏の進化論の知識の程度も垣間見ることができるという意味でも興味深かった。これは私が昨年から伊藤康彦さんの『武谷三男の生物学思想』(風媒社)を科学史の研究対象としているからである。

雑読だが、最近読んだ、長谷川真理子さんの『進化とはなんだろか』(岩波ジュニア新書)に書かれている程度の進化の知識さえも、このお二人はお持ちでないようである。もっともこの二人の専門は進化生物学ではないので、その知識が浅くてもとやかくいうことはない。