物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

体の公理とベクトル空間の公理

2022-08-01 17:44:55 | 数学
体は数の演算のしたがう法則を抽象化したものであり、べクトル空間の公理は平面上のべクトルとか空間内のベクトルのしたがう法則を抽出したという。

ベクトルとしてn個の数の組を集めた数ベクトルがあるが、この数ベクトルの特殊な場合として、成分が1個しかない1次元ベクトルを考えると、これは普通の実数である。

そうすると、この場合には1次元のベクトルは普通の実数と同じなので、ベクトル空間として普通の実数を考えることができる。

ということでこの場合には実数における体の公理とベクトル空間の公理が一致するであろう。

また、複素数とか四元数もベクトルの公理を満たすらしいので、これらもベクトル空間とみなすことができるだろう。そういうことをぜひ小著『四元数の発見』にも書いておくべきだったと今にして思う。

少なくともポントリャーギンはそういうことを知っていて、彼の『数概念の拡張』(森北出版)の四元数の章をベクトル空間の話からはじめたのであろう。それもただのベクトル空間ではなくて、四元数は計量ベクトル空間をなすという、認識がはっきりあった。


『テキスト線形代数』

2022-08-01 11:21:44 | 数学
『テキスト線形代数』(共立出版)という本を読んでいる。

なかなか読んでいて気持ちのいい線形代数の本である。この本のまえがきに小寺平治先生が

「理念は高く 論理は明快 計算は単純

をモットーに、私は、この本を一生懸命にかきました」

と書かれているが、この言葉はお飾りではなさそうだ。

私みたいな探索好きな者から見れば、他にもすこし気になるところはあるけれど、線形代数を学ぶ人の気持ちになって本が書かれている感じがする。

(付記)線形代数の歴史を書いた本がないかと国会図書館のOPACで検索したが、そういうタイトルの本は出版されていなかった。

まったくこれに類したテーマを扱った本がないとは思わないが、『線形代数の歴史』というタイトルであからさまに取り扱った本はないらしい。

今朝ちらっと見た、岩波書店の現代数学シリーズの中の『行列と行列式』(上)の学習の方針だったかのところに、線形代数の歴史をある程度詳しく書いてあったが、それでも十分ではない。

大学に勤めていたころ私の研究室に配属になった学生から教えられた線形代数のテクストが『教養の線形代数』(培風館)である。この本も読みやすいいい本である。多くの大学でテクストとして採用されているのも頷ける。