研究者はおよそ貧乏である。私が元研究者の部類に入るかどうかはわからないが、貧乏なことは事実である。
これはもう60年以上昔のことだが、高校生のころだったか、高校の卒業直後だったかに「あなたは金儲けには向いてない」と同級生だった女性に面と向かって言われたことがある。頭のいい女性で、兄さんは医者であり、そのお父さんも医者だった。
「いや、金もうけなどしようと思ったことはありません」とは言ったのだが、それでもたじたじとなった。
それにしても、なかなかづけづけ言う女性だなと思った。普通はそういうことはたとえ思っても口に出して言うものではなかろうと思う。
それくらいお金には縁のない気質だと思われていたのだろう。それはもちろんそのことはいまだって変わりはしない。
お金儲けにはならない「数学・物理通信」などというサーキュラ-を発行している。寄与は小さいとしても広い意味の文化には役立っていると思っている。
日本の科学技術の低下が言われて久しい。またその回復の見込みもあまりない時代ではある。しかし、日本の潜在能力としてはうまく組織すればそういう科学技術の再生できる要素を本当は日本は持っているという気がする。
ただ、その組織だった手立てはいままでのところ、まったく打たれてはいないし、どうしたらその手立てが打たれるのかの考察もされてはいないだろう。だから、現在は落ちるところまで落ちるしかないのかもしれない。
きわめて悲観的だが、しかたがないだろうか。