「武谷三男の生物学思想」(風媒社)という本を手に入れて、昨夜から読んでいる。
武谷のルイセンコ遺伝学を支持する、またはルイセンコ遺伝学よりの言説を批判した書籍である。
なかなか詳しく調べて書いてあるので、大抵はこの書での著者の主張は正しいのであろう。ただ、ルイセンコ遺伝学が間違っていたということが明らかになった段階でも武谷がルイセンコ遺伝学を支持していたというのは理解が正しくないであろうと考えている。
もっともルイセンコ遺伝学が間違っていたということを武谷が正直に認めてそのことをどこかにはっきりと書くべきであったのだが、それをしなかったためにその後の武谷の問題意識までもまた間違っていたようにとられていると感じている。
もっともその問題意識も現在では議論の対象になるのはいうまでもないが。
この書の著者伊藤康彦さんの主張の大部分が誤解だという気はない。やはり、武谷は自分の過ちを率直に認めるのが難しかったのであろう。
だから、武谷無謬説を私はとらない。間違っていたこともあるだろう。それにしても私にはまた重たい仕事が出てきたと考えている。