「獲得形質の遺伝」があるなどという遺伝学を学んだことのある人はもう相当のお年にちがいない。
私が高校1年で生物学を教わったのは1955年であり、まだそのころはメンデルの遺伝学とルイセンコの遺伝学とはどちらが正しいかの決着がついてはいなかった。そのあと数年でメンデルの遺伝学に軍配があがった(注)。
だが、その常識がまた一部でひっくり返ろうとしていると、生物学者の福岡伸一さんの今日の朝日新聞のコラムに書かれていた。
だからといって、獲得形質の遺伝学が正しいとかいうのは時期尚早であろう。要するに遺伝環境(直接的にはDNAとかRNA)に外界から、影響を与える可能性のあるような場合ならば、いわゆる獲得形質の遺伝も起こる可能性もあるが、そうでないような場合には、たとえば、母親または父親がいかにピアノ演奏の名手でもそのことが直接に遺伝するわけではない。
そういう考えの分類が、できてきたということであろう。
(注)もっともそういう歴史を知ったのは意外に最近のことである。とはいっても20年以上まえのことだが。それに生物学を学んだのは、正確には64年も前のことだ。